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国際共同研究人材育成推進・支援事業 報告

2013.03.18ニュース

NEWS NO.118(2012年度)

国際共同研究人材育成推進・支援事業 報告

派遣国(受入機関):ケニア(国際家畜研究所:ILRI)

派遣プログラム:国際共同研究人材育成推進・支援事業

派遣者:茅野大志

はじめに

私は国際農林水産業研究センター(JIRCAS)が実施している「国際共同人材育成推進・支援事業」に本学の学生として初めて参加し、2012年12月から2013年2月までの約2ヶ月間、ケニアにある国際家畜研究所(International Livestock Research Institute:ILRI)に派遣されました。ILRIは貧困削減・持続可能な開発へ向け、特に畜産分野に着目した研究を実施している国際機関です。約2ヶ月間の派遣期間中、私は汗にまみれ、土埃にまみれながら主にフィールドワークを中心にしてケニア中を回りました。ILRIへの派遣を通して数え切れないほどの素晴らしい経験をすることができましたが、ここではその一端をご紹介したいと思います。

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研究の目的

研究課題は「乳製品バリューチェインにおけるカビ毒の評価と人の健康への潜在的リスクの評価」でした。アフラトキシン(AF)はAspergillus flavusAspergillus parasiticusによって生成される最もよく知られたカビ毒です。ケニアでは2004年に高濃度のAFに汚染されたトウモロコシが原因で125名もの死者が出る中毒事件が発生しましたが、その実態は依然として調査段階にあります。AFはヒトに肝臓障害および子どもの成長阻害を起こし、家畜に消化管障害などを起こし大きな経済的損失を与えます。本研究はケニアの酪農家に対して実施したアンケートおよび牛乳・飼料の汚染度調査、ボディコンディションスコア(BCS)を用いた牛の栄養度調査から、カビ毒汚染のリスク因子を明らかにし、AF汚染乳製品の摂取による健康リスク評価をすることを目的としています。

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派遣前の様子

私が派遣されたのは学部5年次でしたので、派遣直前まで普段通りに授業を受け、研究室での活動を行っていました。受入れ研究者(アイルランド人)とはメールで研究計画などについて打ち合わせをしていましたが、詳細な研究計画や日程まではやり取りが出来ず、現地でそのツケを払うことになりました。特に年始年末を挟む場合、国際機関では多くの研究者がクリスマス前から長期休暇に入ってしまうため、事前に双方の予定をしっかり把握しておくことが重要だと感じました。また研究課題に関連する文献を読んで知識を付けたり、ケニアのガイドブックやHPを眺めることで現地生活の想像と期待を膨らませていきました(もちろん理想と現実は異なるので、過度な妄想は禁物です)。

派遣現地の生活

ケニアは昼夜の寒暖差が激しく、常夏だろうと高をくくって長袖を1着しか持っていかなかった私は、到着早々体調を崩してしまいました。しかし昼間の気温は高くともカラッと乾燥した気候の為、湿度の高い日本に比べれば大変過ごしやすかったと感じます。私の場合、数キロ離れたゲストハウスに滞在し、ILRI専用のバスで通勤していました。ゲストハウスには同じように短期派遣された各国の研究者が滞在しており、彼らとも交流を深めることが出来ました。意外でしたが、物価は日本に比べそれほど大差ないように感じました。しかし野菜や果物は格段に安く、特にマンゴーなどのトロピカルフルーツは私の毎朝の燃料として重宝しました。路上にはキオスクや露店が点在し、あまり利用する機会はありませんでしたが、店の人と値段交渉をしつつ会話をするのが楽しみの一つでした。休日は同じ研究チームの人や現地で知り合った日本人らとナイロビの街を散策したり、ご飯を食べたり、買物をしたりと有意義に過ごすことができました。また国立公園に行く機会も得ることができ、TVでしか見たことのなかった地平線まで広がるサバンナと、悠然と歩いていた動物たちの姿はこの先も忘れることはないでしょう。異国の地で休日を一人部屋で過ごすことは精神的にも身体的にもお勧めはしません。ここだけの話、私は当初ホームシックのようなものに罹ってしまい、落ち気味だった気分を無理やりにでも外出することで上げることができました。せっかくの海外生活なのだからと、様々な場所へ繰り出し、様々な人と会話をして正解でした。

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現地での研究活動

滞在中私は、上に述べた研究課題を遂行するためにケニア国内の酪農家を訪れアンケートを行うとともに、飼育牛を観察し、飼料と牛乳をカビ毒(AF)評価のためのサンプルとして回収するというフィールドワークを中心に行いました。しかし具体的な研究内容については、すべて現地で受入れ研究者らと相談しながら決めていきました。前半の1ヶ月間はILRIのオフィスで研究計画書を書き直したり、アンケートを作成したりと、主に机に向かい作業をしていました。これは私の研究が既存のプロジェクトに便乗していたため、調査はメインの研究チームの日程に合わせなければならなかったからです。こうした情報も事前に確認できていればよかったのですが、なかなかうまい具合に進まず、初めは毎晩枕を濡らすほど不安な日々を過ごすことになりました。後半1ヶ月間はほとんどの時間をフィールドで過ごし、ケニア国内の9地域、合計81軒の農家を訪れ、調査を行いました。小さな車に乗り込み、3日程度で次の調査地に移動していく様子は旅芸人を想起させ、大変貴重な経験をすることができました。誤解を招く言い方かもしれませんが、首都のナイロビで生活をしているとここが本当にアフリカなのか分からなくなることがしばしばありました。しかし、フィールド調査で見た地域の多くは、私の持っていたアフリカに対するイメージのそれに近いものでした。一緒にフィールドを回った方の「このフィールド調査中に見る人々の暮らしが、ケニアにおける大部分の人々の生活水準なのです」という言葉が印象的でした。実験室では見ることのできない「ケニアの現実」をフィールドでは目の当たりにし、戸惑うことも多かったですが、それと同時に多くのものを得られたと思います。

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派遣経験の感想

ILRIでは様々な国の人と交流し、研究の話はもちろん、国際研究機関で働くということについても意見を聞くことができました。今まで漠然としか想像できなかった「国際機関」が少し身近に感じられるようになったことは大きな収穫です。しかし同時にその大変さや難しさも垣間見ることができました。また学生のうちに開発途上国に長期滞在するという経験は、必ず自分の将来に対してプラスに働いていくことと思います。フィールド調査で脳裏に焼き付いているのは、枯れた大地で放牧されている痩せた家畜や小さなトタンの家、そして薄汚れた服を着て裸足で駆けていく子どもたちの姿です。しかし訪問した農家では取れたてのマンゴーをご馳走してもらったり、村の子どもたちと徒競走をしたり、青年とお互いの国について語り合うこともありました。私はケニアで多くの心豊かな人々に出会うことができました。今はまだ多くのことを消化できずにいますが、2ヶ月間で得たものの一つは人間力だと思います。語学ができなくても物事を伝えるには他に手段があり(もちろんできるに越したことはありませんが)、同じ研究チームのメンバーとうまくやっていくことも大切なことです。壁にぶつかった時にそこで簡単に諦めてしまうのではなく、どんな結果であれ自分から「まずはやってみよう」という考えをこの派遣で学ぶことができたと感じています。

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終わりに

2ヶ月間も海外に、しかも研究が目的というこの短期派遣では言葉、コミュニケーションなど多くの問題にぶつかりました。しかし幸運にも、そのたびに誰かの協力があり研究を進めることができました。研究だけでなく私生活でもいろいろな人が気遣ってくれ、おかげで公私ともに大変充実した時間を過ごすことができました。私は今回の派遣を通して「いったい何人の人と握手をしたのだろう」としばしば考えます。少なく見積もっても200人以上の人々と握手をしました。それだけ多くの出会いがあったのかと思うと感慨深いものがあります。今後も研究は継続して行っていき、なんとか結果を出会った農家へフィードバックできればと考えています。私の拙い体験談が海外へ目を向けている皆様の参考になれば幸いです。最後になりましたがILRIに派遣された経験が今後の研究、そして人生に一筋の光を照らしてくれました。あくまで派遣はきっかけの一つに過ぎませんが、そのきっかけを与えて下さった JIRCAS、そして快く承諾して下さった本学をはじめとする関係各位に心より感謝申し上げます。

獣医学部 獣医疫学ユニット 茅野大志




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