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猛禽類医学研究所代表・獣医師 齊藤慶輔氏が講演

2014.10.20ニュース

NEWS NO.81(2014年度)

猛禽類医学研究所代表・獣医師 齊藤慶輔氏が講演

 

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 10月4日(土)、本学大学院酪農学研究科および環境共生学類との共同での特別講義として、環境省釧路湿原野生生物保護センターを拠点とする猛禽類医学研究所の代表を務める獣医師、齊藤慶輔氏が、「野生の命と向き合う~希少猛禽類との共生を目指して~」と題して講演を行いました。

 齋藤氏は絶滅の危機に瀕した猛禽類の保護活動を行っており、傷ついた野鳥の治療と野生復帰に努めるとともに、傷病や死亡原因を徹底的に究明し、その予防と生息環境の改善に取り組んでいます。

 

P1090957●齊藤慶輔氏の講演

 「猛禽類医学研究所は、全国でも数少ない、野生動物の医療を専門に行っている動物病院です。私は釧路湿原野生生物保護センターに来て今年で20年目で、非常に長い間、野生動物の獣医師として保護活動を行ってきました。

 日本に生息する脊椎動物のおよそ4分の1が絶滅危惧種で、ほ乳類は20%を超え、は虫類や汽水・淡水魚類は36%を超えています。平成18年~19年には3,155種だった絶滅危惧種が、平成24年には3,574種まで増加しました。釧路湿原野生生物保護センターでは、シマフクロウやオオワシ、オジロワシという、北海道に生息する希少猛禽類の保護活動を行っています。シマフクロウの生息数は、現在、北海道で約140羽で、絶滅の危機に瀕しています。オオワシは世界中で約5,000羽しかおらず、オジロワシはヨーロッパで約6,000つがい、北海道では約140つがいが越冬しています。

 猛禽類は生態ピラミッドの頂点にある生物で、環境悪化の影響を非常に大きく受けます。言い換えれば、彼らが元気に生息しているということは、良い環境ができているという指標になります。猛禽類の保護は、生態系全体を守る環境保護に繋がります。

 

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WS000002 野鳥の傷病や死亡の原因には、人間が関与しています。彼らの生息環境が人間と重なることにより、交通事故や感電、鉛中毒といった事故が起こります。センターでは傷ついた野鳥のオペ(手術)はだいたい週に3~4回で、1日6回ということもありました。あきらめずにやれることは全てやり、野生に返そうと努力しています。傷が治ったらリハビリテーションを行い、運動能力を鍛えるだけではなく、しっかりと自分で餌を捕れるように、あえて餌を競わせるなどメンタルのリハビリにも取り組みます。それでも野生に返せるのはごく一部で、私たちの場合は40%です。

 当然、野生に返れない動物が出てきます。オオワシやオジロワシは30年くらい生きるので、彼らが生きる意義を見つけてやらなければなりません。私たちは、一つには彼らを血液ドナーとして、傷ついた野鳥の輸血に役立ってもらっています。もう一つは、人が野生動物と触れられる貴重なチャンスとして、レンジャーのセミナーで、応急処置や運び方などの訓練に使っています。

 センターには、先天性疾患のために発達が遅れ、巣立つことができなかった「チビちゃん」というシマフクロウがいます。彼はまさに天からの授かりものです。140羽しかいないシマフクロウに触れられる、人と野鳥の貴重な架け橋となっています。見て、触って、感じることでファンが増え、人々の間に保護の意識が増します。

 

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 あらゆる手を尽くしても、命を救えない動物はたくさんいます。彼らが傷つかないように、その原因を精査し、取り除かなければなりません。シマフクロウは道路に降りてきて餌を食べ、交通事故に遭います。そこで、道路に滑り止めとなるグルービング(道路の路面に溝を刻む工法)を施工し、音と振動で車が近づいて来るのを知らせるようにしました。

 感電事故については、鉄塔には感電する場所が決まっているのがわかりました。そこに野鳥を止まらせないように、障害物を設置してもらいました。感電事故が起きると停電してしまうので、電気の安定供給という目的で電力会社が協力してくれました。

 鉛中毒は、エゾシカ駆除に使用した鉛ライフル弾が原因です。エゾシカに当たりバラバラに砕け散って体内に残された銃弾を、ワシが肉とともに飲み込んで中毒になり、全身に障害が起こります。その対策としてエゾシカの放置死体の撤去作業を行いましたが、それには限界がありました。そこで、行政や狩猟団体に、飲み込んでも無毒な銅弾の推奨を呼びかけました。北海道では、平成16年から全ての大型獣の狩猟において、鉛弾の使用が禁止されましたが、それでも鉛中毒はなくなっていません。今年の10月1日からは、鉛弾の所持も禁止になりました。

 クリーンエネルギーとして風力発電の設置が進められるにつれ、風車への衝突事故も増えています。ブレードに着色をして視認しやすくしたり、フラッシュ光で警戒を促すなどの対策が世界中で試みられていますが、画期的な成果は得られていません。私たちは、ワシが認識できるブレードの回転スピード、コントラスト、輝度の解明実験を現在、行っています。

 

 傷ついた野生動物たちは、変わりゆく自然環境の姿を、さまざまな形で私たちに伝えてくれます。彼らからのメッセージをしっかりと受け止め、環境を改善していく『環境治療』に一人ひとりが参加することが、とても大切なのです」。

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 講演後は質疑応答が行われ、聴講していた学生から「銅弾が、ワシ以外の動物に影響を与えることはないのでしょうか」「将来、野生動物に関わる仕事に就きたいのですが、今のうちからどういう準備をしておいたらいいでしょうか」など、熱心な質問が寄せられました。その後も齋藤氏は教室に残って、時間の許す限り、個別に学生たちの質問に答えていました。

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