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日本血液製剤機構(JB)との産学連携講座 報告会を開催

2016.02.29ニュース

NEWS NO.195(2015年度)

(一社)日本血液製剤機構(JB)との産学連携講座 報告会を開催

 本学と一般社団法人日本血液製剤機構(JB(2012年9月以前は株式会社ベネシス))とは、2010年に連携協定を締結し、産学による「連携講座・病原体リスク管理学講座」を立ち上げ、2013年度~2015年度の2期目は、新興・再興感染症の原因病原体に対する検出手法、不活化・除去手法、評価手法などの共同研究を行うとともに、その成果を公表し、大学教育にも還元する取り組みを行ってきました。

 このたび、第2期の終了に際し連携講座の研究総括報告と、今後の展望について意見交換するため、2月24日(水)に本学において、総括報告会が開催され、約25名が出席しました。

 

P1010005 ■ 開会あいさつ(竹花一成学長)

 JPと協定を締結しているのは、獣医系16大学の中では本学だけで、一緒に研究して情報発信できるのは非常にありがたいことです。教育の場において、最先端の研究をやっていることを学生に知ってもらうことで、学生には良い刺激となっています。本日の報告会が盛会となることを祈っています。

 

 

 

柚木氏 ■ 連携講座の趣意説明(JB 柚木幹弘氏)

 2005年から酪農学園大学とE型肝炎ウイルス(HEV)を用いた共同研究を開始し、2010年からは大学に連携講座を設置しました。近年、SARS、鳥インフルエンザ、デング熱などの感染症が世界的に流行し、対策が難しくなっています。これらの感染症には異業種が連携して対応に当たることが重要で、たとえばHEV対策には、畜産、食品衛生、公衆衛生、医療・医薬の分野が連携して取り組むのが効果的です。

 連携講座では、酪農学園大学(獣医学・畜産)とJB(医学・薬学)の専門領域を融合させることで、医療品・食品産業への応用や安全性教育、成果の社会還元が図られ、医療安全や安心社会に向けた付加価値が高まることをめざしてきました。この取り組みを通じて、国内外の研究者と国際的なネットワークを構築することができました。連携講座の成果は血液製剤領域のみならず、国内外の様々な領域で評価を得ることができました。今後、バイオ産業では、動物由来原料の安全対策が重要となり、産学官連携の体制を構築して、この分野で国際競争力を高めることが期待されていますが、貴学とJPとの連携がモデルになっていくと思います。

 

上平氏 ■ Prionに関する活動報告(JB 上平崇氏)

 プリオン病(BSE、変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD))は、人獣共通感染症です。血液製剤の原料となる血漿に、vCJDなどの原因となる異常型プリオン蛋白が混入する可能性が過去に論じられました。医薬品の安全性を高めるためには、製造工程で伝達性プリオン蛋白を除去することが重要です。評価方法は一般的にヒツジのスクレイピー263Kに感染したハムスターの脳由来の材料が使用されますが、孔径15nm(ナノメーター)のウイルス除去膜では完全には除去できないケースも存在することが明らかとなりました。この問題を改善する手段としてウイルス除去フィルターと静電的吸着フィルターを組み合わせることを提案しました。より現実のリスクに近いvCJD感染マウス由来材料を用いて検討しました。vCJDを用いた工程評価研究は世界で唯一この連携講座で行っています。これまでの263KとvCJDを用いた検討で両者の結果に大きな違いはありませんでした。263Kとプリオンの性状は異なるため、更なる研究が必要です。

森氏
 (本学獣医学研究科 森ゆうこ氏)

 バイオ医薬品におけるプリオンリスクを研究するため、vCJD感染マウスの脳乳剤と異常型プリオン発現細胞株(アメリカ赤十字より株を譲渡)を接種材料としたバイオアッセイ(BA)評価系(臨床評価および組織評価)を構築しました。BA法はウェスタンブロット法より、高感度にプリオンリスクを評価することが可能でした。培養細胞由来プリオン接種マウスも従来の脳乳剤接種マウスと同様、脳で異常型プリオンの蓄積が確認され、医薬品製造工程評価に適用可能な状況となりました。本研究は、研究協力者によりサルでの実験も進行中、また、厚生労働省科学研究費の事業にも採択されるなど、幅広く展開されました。今後も、残された課題を解決すべく、最新の知見に基づく評価研究と安全性評価の継続が重要と考えています。

 

 

柚木氏 ■ HEVに関する活動報告(柚木幹弘氏)

 2003年ころE型肝炎の動物から人への感染事例が報告されましたが、当時は何もわからない状態でした。2005年から酪農学園大学とE型肝炎ウイルス(HEV)に関する共同研究を開始しました。協力農場のブタ糞便サンプルをPCR法で分析し、日本で検出される代表的な遺伝子型のウイルスを分離できました。動物実験より危険部位は肝臓と腸管であること、農場周辺のドブネズミも感染していることが分かりました。また、60度で加熱してもタンパクがあると不活化され難く、pH2.5以下の低pH処理をしても不活化されませんが、孔径19nmのろ過膜が除去に有効であることなどを明らかにしました。

 この研究成果は論文や学会発表のみならず、欧州医薬品庁のリフレクションペーパー(特に新しい分野で経験が限られている領域やトピックスに関する技術の現状を整理し、開発者との間で共有化を図る目的で作成される文書)で引用され、厚生労働省の判断にも活用されるなど、注目されています。

 

P1010052 ■ Influenzaに関する活動報告(萩原克郎教授)

 2009年にH1N1亜型による新型インフルエンザが大流行(パンデミック2009H1N1)したことから、インフルエンザの研究を行いました。マウスを使った実験では、グロブリン製剤がタミフルと同等に有用であること、適正用量があること、ストレスにより効果が下がること、免疫不全マウスには期待される効果がないことが明らかとなりました。また、1000人を超える献血者の血漿から抽出されたIgG(免疫グロブリンG)が含まれるグロブリンの投与により生存率が高まること、早めの投与が重要なことを確認しました。

 この連携講座を核とした産学官国際ネットワークにより、研究を迅速に進めることができました。

 ■ 教育・啓蒙(萩原克郎教授)

公開セミナーを2010年から6回開催し(本学で1回、慶應義塾大学で5回)、24名の専門家が講演しました。学内教育セミナーは2010年から年2回、140名の学生を対象に行いました。柚木先生には、特任教授としてウイルスの不活化や感染症と社会問題の授業を行っていただきました。また、関係機関と情報交換を行うOne World One Health 勉強会を毎年開催しました。また、モンゴルやタイの研究者と学術交流も実施しました。

こうした活動は学生に刺激を与え、大学院進学者が増加しました。

P1010057 ■ 連携講座のあり方と今後の展望(田村豊研究科長)

 One Healthの考え方が世界の主流となっています。2014年にWHO総会において、薬剤耐性菌などへの対応においてOne Healthのアプローチを重視するという表明がなされ、G7においてもこれを進めることで合意されました。今年の伊勢志摩サミットでもデーマの1つとなります。自分が委員となっている内閣府食品安全委員会は、昨年、豚の肉や内臓の生食禁止を打ち出しましたが、リスク評価の際に連携講座の研究データが活用されました。

 共同研究をさらに充実させるために始めた連携講座は、人材育成や社会貢献の面でも大きな成果を挙げました。この活動が途切れるのは残念ですが、今後も連携して残った課題の解決を行っていければ幸いです。

P1010061 ■ 総評(石原智明副学長)

 獣医学類の教員は広い視野に立っていなかったのではないか、動物だけを見て、獣医の範囲はここまでと決めていたのではないかと反省しています。この連携講座により、医療や医薬、食品産業にも貢献できることを認識しました。連携講座はこれで一旦リセットとなりますが、近いうちに再スタートできればと思っています。

 本学は、ウイルスハンティングではトップクラスです。長所をよく理解して、どこでどう貢献していくか、よく考える必要があります。やるべきことをやって社会に貢献することが重要です。将来、獣医学類の教員は、獣医職だけではなく、医学や薬学の人も入って、いろいろな視野から見て研究していければと期待しています。

 

秋山理事長 ■ 閉会あいさつ(JB 秋山裕治理事長)

 連携講座ですばらしい成果が出せて、続けてよかったと思います。職員の人間性の幅も広がりました。酪農学園大学には大変お世話になり、お礼を申し上げます。視野を広げて仕事をするという点で、異なるキャリアや研究の総合は重要です。

 連携講座は一つの節目を迎えましたが、JBとしても、今後どういう方向をめざすのか、検討していきたいと思います。酪農学園大学の建学の精神「健土健民」の「健民」は人類の健康と解釈できます。人類の健康のために、貴学と産学連携で得られた成果を今後も社会に生かしていかなければならないと思っています。

 

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