地域環境学科特別講演会開催

NEWS & TOPICS  NO62(2008年度)
 地域環境学科特別講演会開催
 環境システム学部地域環境学科が7月25日(金)、学生ホールにおいて、「自然保護を考える」をテーマに学科特別講演会を開催しました。講師として自然保護協会参与で植物学者でもある小野木三郎氏をお招きしました。会場に集まった学生や教職員ら約30名は、小野木氏のユーモアと熱意あふれる講演に聞き入りました。
小野木氏講演概要
 大学生のとき、リゾート開発計画により地元の御岳山で大規模な伐採が行われた。そのとき「これでいいのだろうか?」と感じたのが、自然保護活動に取り組むようになった最初のきっかけだと思う。
 回文で「美しい国は憎いし苦痛」。最近の日本はこの言葉のようになってしまっている。植生を無視した、ラベンダーやチューリップの単純で画一的かつ人工的な花壇、国立公園の遊歩道にサルビアやマリーゴールドを植えたり、農道にコスモスを植えたり、果たしてこれが美しいのか。天然のニホンアジサイ、スミレ、タンポポの素朴な美しさの方が素晴らしい。なぜ、わざわざお金をかけて造り物にしてしまうのか。身の回りの自然環境に気が付かなければ自然保護は始まらない。御岳山は多くの動植物が生息して「北半球の縮図」だったのに、今、原生林は中腹より上にしか残されていない。国民が目を向けなければいけないのは、悲劇的で救いようのない日本の林業問題である。
 自然の世界には、ただで面白いものがたくさんある。小さなころから自然とふれあい、さまざまな体験をしてほしい。自然の世界はつながっている。「生態系」というものはそこにはない。野外に出て経験を積むことによって、実感として感じ取るものである。いろいろなことを見たり体験したりして、食うか食われるかという食物連鎖が見えてくる。地元岐阜で開催している「ふるさとを歩こう会」で、参加者にイチョウやクリのイガの絵を描かせてみる。実際外に出て探してみると、絵と同じ形のものは見つからない。皆先入観を持って物事を見ているということ。私たちは当たり前のことさえよく知らずにいる。

 地球が誕生してから現在に至るまでの45億年を一年のカレンダーに表すと、人類が誕生したのは12月31日の20時過ぎ。これほど遅れて最後に生まれた人間が、地球を好き勝手に荒らしていいのか。
 最近「生物多様性」という言葉がよく使われるが、生物の数が多くいれば良いのではない。そこに「おのずから存在している」ということが大事。その上で生態系の多様性がある。
 宇宙船地球号は一隻しかない。今のままだと沈没してしまう。自然の摂理に従ってつつましくconservation(保全)しないといけない。沈没するときは特等室の人間も、船底のミミズもともに沈んでしまうのだから。宇宙船地球号のどこに穴があいているか、外に出歩くことによって見つけられる。穴を見つけたらふさぐという行動に移らないといけない。自然に親しみ、自然を知って、自然を守るというところまでいきたい。私たちは生きているのではなく、生かされているのだ。

講師プロフィール
 小野木三郎さん 自称“楽老自遊人”でアルキニスト。

 1939年、岐阜県生まれ。高校時代から植物を求めて山歩きを始める。岐阜大学学芸学部卒業後、岐阜県内小中学校理科教諭、岐阜県博物館学芸員、高山短期大学講師兼飛騨自然博物館学芸員を経て、現在へ。(財)日本自然保護協会主催の「自然観察指導員講習会」講師として全国各地を巡り、指導員養成のほか、飛騨高山ふるさとを歩こう会の代表、各務原市シデコブシを守る会会長、乗鞍と飛騨の自然を守る会副会長などを務め、野外活動を通して自然保護活動に情熱を傾け続ける。主な著書としては『北アルプス山楽山歩』『ぼくと私の博物誌』(教育出版文化協会)、『いちにの山歩』(地人書館)、『山の花学』(東京新聞出版局)、『飛騨の自然讃歌』『森は学校』(岐阜新聞社)、『花かおる乗鞍岳』(ほおずき書籍)がある。 以上『大白川ブナ原生林』(岐阜新聞社)より

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