加藤 桂子

獣医学類

加藤 桂子 かとう けいこ

助教

研究室番号
動物医療センター 212

教員・研究室

研究室・ユニット名 獣医麻酔学
研究テーマ 馬、犬、猫の麻酔・疼痛管理および犬猫の集中治療に関する研究
学びのキーワード 麻酔学伴侶動物医療生産動物医療
教育・研究への取り組み 動物の痛みを想像しどれだけその痛みをとることができるか。「縁の下の力持ち」として動物がよりよい治療をうけることができるためのサポートができるか。そこを常に考え研究を行っております。また教育におきましては、教科書を読むだけでなく学生の頭で考え、それを実際に行動に移してもらうことで、自分自身の経験として価値ある時間を過ごし学んでもらいます。
受験生へのメッセージ 麻酔学は「頭」の学問です。派手な技術はありませんが、生理学、薬理学はもちろんのこと内科学や外科学など幅広い知識が必要になります。どの学問にも横断的に携わり、実際に手を動かしてじかに経験として学ぶことが出来る研究室です。小動物だけでなく様々な動物とも関わる機会もありとても貴重な時間を過ごすことが出来ると思いますので、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

研究シーズ

研究キーワード alfaxalone ORi ピモベンダン
ピモベンダン/ORi/尿中酸素分圧
研究の概要・特徴

ORi™(oxygen reserve index: 酸素化予備能指標)は、低酸素状態を評価するパルスオキシメータ(saturation of percutaneous oxygen: SpO2 )と異なり、動脈血酸素分圧(PaO2)がおおよそ100~200mmHgの中程度高酸素状態の領域を測定する新しい酸素化の指標である。
酸素療法を受けている症例において、ORi™はSpO2よりも早期に酸素化能の悪化を察知し、低酸素状態を未然に回避できる可能性がある。しかしながら、ORi™とPaO2の関係には個人差があり、測定値よりはトレンド変化が重要であると考えられている。この理由として、ORi™は吸収分光法より算出されるため、測定部の組織性状および血流等の要因による影響を受けるためと推測されている。
本研究では皮膚領域の研究に用いられる実験用豚を用いて、測定部の体温、灌流指標(perfusion index: PI)、および赤血球容積率(packed cell volume: PCV)をダイナミックに変化させ、ORi™の測定値に及ぼす影響因子について検討する。

また周術期の経口薬の投与は麻酔管理を行ううえで重要な確認事項の一つである。その中でも「ピモベンダン」は心臓の酸素消費量をあげずに心収縮力を高めるお薬で、弁膜疾患における治療の大きな役割を担っている。しかし、実際ピモベンダンの経口投与が循環動態にどれぐらい影響を及ぼすかの検討はされていない。そのため本研究ではピモベンダンの経口投与が循環動態に及ぼす影響を検討し手術当日の投与の是非を明らかにすることを目的に行う。

尿中酸素分圧(PuO2)は昔よりその存在意義の研究が進められてきたが、近年腎機能のバイオマーカーとして再度注目を浴びている。現在「急性腎障害:AKI」の診断はクレアチニン、BUNおよび尿量での評価が一般的だが、これらのマーカーは迅速性がなくAKIになってはじめて上昇してくるものである。そこでPuO2は非侵襲的に腎臓の低酸素状態を確認することができるため、臨床現場で特に麻酔はAKIのリスクファクターの一つであるため、動物において有効であるかの是非の検討を目的に行う。

産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

ORiは酸素化の新たな指標として今後発展していくモニターであると感じています。
特に、従来から使用されているSpO2よりもより尖鋭に酸素化を評価することが可能ですので、人と同様に挿管および抜管時の指標やベッドサイドでのモニター、また重症度の早期発見にもつながりますので麻酔管理だけではなく、今後発展していくであろう獣医療においての集中治療においても力を発揮してくれるのではないかと思います。
またもう一つのテーマであるピモベンダンの経口投与における循環動態への影響も臨床的な意義が大きいものだと考えております。
特に犬猫の寿命が延びており心疾患動物への麻酔管理の機会も増えていますので、今後の周術期管理の一助になるのではないかと思います。
同じく尿中酸素分圧(PuO2)もあらたな腎臓のバイオマーカーとなりえるのではないかと思っています。