石井 智美

食と健康学類

石井 智美 いしい さとみ

教授

研究室番号
C7-201
取得学位 博士(農学)
修士(文学)
研究室・ユニット名 臨床栄養管理学
研究キーワード 発酵乳製品 栄養学 食文化

ヒトは何を食べてきたか。発酵乳の利用。内陸アジアの食文化

研究の概要・特徴

筆者はヒトが何をどのように食べてきたのかを軸に微生物的見地と、栄養学的見地から遊牧の食を検討してきた。ユーラシア大陸では草食の野生動物が家畜化され、動物性食品として肉だけではなく、その乳も利用されるに至った。乳は家畜の生命を絶たずに継続して得ることが出来、子畜がそれのみである程度まで育つ栄養を含む。地球上で自己の種以外の乳を利用してきたのはヒトだけであり、乳糖不耐であるゆえに微生物で乳を発酵させて利用するに至った内陸アジアの乳利用について、学際的な見地から検証してきた。その中でモンゴル遊牧民がその生活形態から野菜や果物の摂取の少ない食でどのように健康を維持してきたのかに関心を持った。
民族飲料である馬乳酒は保存可能なチーズなどの製造に適さないウマの生乳を、複数の酵母と乳酸菌によって発酵させたドブロク状の低アルコール度の飲料で、今日まで遊牧民の間で大切に伝えられてきた。
モンゴル遊牧民において今日も成人男子の夏季の馬乳酒飲用量は平均5 L、多いヒトで10 L にも及ぶ。その飲用には「肺に良い」「内臓に良い」などの健康効果が伝承されてきた。馬乳酒のエネルギー量は1Lで約400kcalで、ウマの生乳由来のビタミンCが8~11㎎/100 ㎖ と多く含まれ、野菜や果物の摂取の少ない遊牧民の貴重なビタミンC摂取源であることを明らかにした。ビタミンCは摂取しても体内には留まらないとされるが、モンゴル遊牧民は好中球の中にビタミンCを貯めている可能性があることを筆者らの研究で示唆した。紀元前の頃より遊牧民は免疫賦活作用等の効果を持つ馬乳酒を飲用し、健康を維持してきた。このように遊牧世界では各種の発酵乳製品が、多くの微生物を経験的に選択し製造されてきたことに注目し、畜種による乳の特性、乳加工方法を検討し、食における利用、栄養面への効果、その食習慣、食文化に関する検討を行ってきた。

馬乳酒から分離・同定した乳酸菌、酵母 馬乳酒から分離・同定した乳酸菌、酵母
馬乳酒飲用量と血中ビタミンC量は相関 馬乳酒飲用量と血中ビタミンC量は相関
ウシの1枚皮を手縫いした馬乳酒発酵容器 ウシの1枚皮を手縫いした馬乳酒発酵容器
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 かつては食べることに関わる研究は、料理が伴うことから家政系、女性の学問とされてきた。しかし、学生時代中尾佐助氏の著書「料理の起源」に出会い、食を科学的に考えると言う視点から料理を見る視点を知った。20数年にわたり遊牧生活における発酵乳製品について馬乳酒を中心に微生物学的見地からの成分、製造方法の研究、その食生活の調査・研究を行ってきた。そのほか内陸アジア各国、中国、ブータンでも発酵、食に関わる調査・研究を行ってきた。国内では香辛料と言えば南方産のものが多いが、北方産の香辛料としてキハダの実、道産食材として布袋魚(ごっこ)、エゾシカ肉などの成分、特性の研究をはじめヒトの嗜好性に関する研究をコメ、乳で行ってきた。ヒトの腸内への健康効果が期待出来れ乳酸桿菌株の特許を取得している。これらの知識を用いた新しい発酵乳製品の開発、栄養面から高齢者を支える新規食品の開発協力が可能である。