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2018年度 学位記授与式における学長式辞

2018年度酪農学園大学、酪農学園大学大学院学位記授与式が学校法人酪農学園谷山理事長をはじめ関係諸団体および本学名誉教授の皆様のご臨席を賜り、ここに開催できる事に対し心より感謝申し上げます。
日本各地より今日この時をいろいろな思いを抱き、迎えられたご家族の皆様に対し、今日まで本学の教育を信頼し、ご支援を賜りました事、教職員を代表し心よりお礼申しあげます。

皆さま、卒業、修了おめでとうございます。本学の「建学の精神」である三愛主義がしっかりと皆さんの心に刻み込まれたと信じます。「神を愛し、人を愛し、土を愛する」、この意味を自分なりに理解されたと思います。
さて、近年我々は多くの自然災害に見舞われました。今なお復興途中である事は言うまでもありません。日本のどこにでも起こりうることとはいえ、やはり驚くような出来事であったことは事実です。災害そのものによる直接的な被害も去ることながら、それに起因した被害も生じました。
本学で歌い継がれ、今日も歌う大学の愛唱歌「酪農讃歌」のコーラス部分は、「窮乏の底に沈める国起こせ」という言葉ではじまります。作詞は1954年ノーベル平和賞の最終候補者、賀川豊彦です。賀川豊彦はキリスト者で戦後の混乱の中、貧困や労働問題に取り組んだ社会活動家でもあります。愛唱歌の作詞を創設者黒澤酉蔵に依頼された当時の日本はまだ敗戦から立ち直っていない時期でした。だからこそ賀川は「窮乏の底に沈める国起こせ」という言葉を使ったのでしょう。
しかし、窮乏というものは、簡単に起きうる事を我々は再度知りました。人間を含め生き物は、スイッチをただ単に入れたり切ったりするような単純なものではありません。だからこそ、私たちはそれに備えた生き方をするべきです。経験から何かを学ぶべきです。

皆さんはこの大学に来て多くの時間を過ごし、経験から何を得たか、考えてみてください。経験、特に失敗から得る事はその後の人生の中で尊いものになります。それでなければ失敗した意味がなく、不安も一層広がります。これから社会に出る皆さんの「不安」とは何でしょうか。
近年、10年後、20年後に残る仕事・消える仕事、というテーマが注目されています。
将来的にAIに仕事を奪われるのではないか、という「不安」かもしれません。今後AIの技術が大幅に取り入れられることは確実で、それにより社会構造が大きく変化する事も明らかです。
これから社会で活躍する皆さんは、その変化を直接経験することになります。どのような社会が待っているか「不安」ではないでしょうか。
我々人間に必要な事はいつも変わりません。水・食料・エネルギーの供給は最低限必要です。そして、AIには代替できない人間にしかできないこともあります。それは高度なコミュニケーションと抽象的な思考です。
その事は『AI VS. 教科書が読めない子どもたち』で新井紀子さんが「読解力」と呼んでいます。彼女は「AIは東大に入れるか」というキャッチフレーズで有名になったプロジェクトリーダーです。このプロジェクトの本当の目的はAIには何が出来ないかを明らかにすることでした。
結論は「意味を理解する」その事が出来ない事です。だから読解力といっても、高度なものでは無く、新聞や教科書の記述のような当然理解していると思われている事を「理解する力」を指します。新井さんは「多く若者は言葉、記述に込められた意味を理解せず、ただ単に暗記に頼っている可能性が大である」とも評しています。
当然そのような人々はAIに仕事を奪われてしまう可能性が高いわけになります。この「読解力」は若いころに完成すると思われてましたが、今では成長してからでも向上できるものと言われています。皆さんは、これから新しい仕事に向き合い、一生懸命それを学ぶ(理解する)ことになるでしょう。それと並行して、自分の「読解力」を高めるべく努力を日々続けてください。

この「読解力」を皆さんは既に大学で身に着けています。本学では「基盤教育」という学問を低学年に配置していました。例えば高度に抽象的な科目の一つである「キリスト教学」は、その時点では何の為になるか十分に理解出来なかったかもしれませんが、まさに「読解力」、次元の異なる「理解力」を高める為に配置していたのです。宗教や倫理といった思想は、何が正しいのかを一生問い続ける脳の体力も必要な学問でした。反面、本学は「実学教育」も標榜し、現場で「すぐに役立つ力」も養っております。「すぐに役立つ力」と「将来役立つ力」両方を扱うのが高等教育機関である大学の役割、その存在理由になります。皆さんはそれを身に着けたからこそ学位記を今手にするわけです。目の前にある課題をこなすことだけではなく長期的に自分の「読解力」を高める努力を続けてください。それでこそ、本学が用意した教育に投資した時間と負担が真に結実します。
これから皆さんには今までになかったことがいろいろと起こるでしょう。しかし、それを恐れず、自信を持って果敢(かかん)に挑んでください。いかにAI技術が発展しようとも、なお有用な人材であり続けてください。

さて、「奴雁の目」という言葉があります。これは福沢諭吉が提唱したものです。
雁は鳥の名前です。他のすべての雁が餌を食べようと夢中になって下を向いている中、一羽の雁だけが上空に目を凝らして敵が襲ってこないかどうかを見張っている。この見張りをしている雁のことを奴雁といいます。
集団とは別の視点で物事を見る事を「奴雁の目」といいます。人々が一つの方向を向いている時こそ違う方向を向いて考える事がリーダーとして大切だということです。
戦略がないままにはじめの一歩を踏み出すことは大変危険です。戦略を立てることに時間を使う人こそ、成功する人です。それが「奴雁の目」です。
この言葉を忘れずに一羽の雁となって羽ばたいて世に出ていって下さい。一つ一つの行動には必ず意味があり、それを常に考え生活して下さい。

本学は卒業後も皆さんを応援し続けます。新たに学ぶ必要を感じたら、再度教育を受けに戻ってきてください。また、人生に迷ったときも話しに来てください。酪農学園大学という共同体は、皆さん卒業生をも含むものです。皆さんは卒業生として大学を誇りとし共同体の一員として社会貢献をしてください。
我々も皆さんの誇りとなるべく、より一層の高見を目指します。共に目標に向かって三愛精神を支えとし、進んでいきましょう。

最後にご家族の皆様、お預かりしていたお子様を今日、皆さんの基にお返しします。
それぞれに今日まで辛い事、苦しい事を乗り越え成長しました。今日はその努力を褒めてあげてください。そして卒業生の皆さんは感謝の気持ちをご家族の皆様に表してください。
創立者黒澤先生は、機を知るは農の始まりにして終わりなり、と言い残しました。
私は機を知るは人生の初めにして終わりなりと信じます。機を見定めることが皆さんの成長の証でもあります。今日がその日です。

以上、節目の年の学位記授与式での祝辞と致します。

2019年3月20日
酪農学園大学
学長 竹花一成




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