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蒔田准教授が国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部初の国際シンポで招待講演

2016.02.25ニュース

NEWS NO.193(2015年度)

蒔田准教授が国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部初の国際シンポで招待講演

 2月15日~17日に、ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部にて、FAOでは初めてとなるバイオテクノロジーに関する国際シンポジウム「持続可能なフードシステムと栄養への農業バイオテクノロジーの役割(The Role of Agricultural Biotechnologies in Sustainable Food Systems and Nutrition)」が開かれ、本学OIE食の安全センター長の蒔田浩平准教授(獣医学類 獣医疫学ユニット)が招待され講演をしました。

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FAO事務総長José Granziano da Silvaによる開会の挨拶    国連会議場で講演する蒔田准教授

【講演要約】

「持続可能な食品衛生向上ツールとしての伝統的牛乳発酵」

 世界では、毎年約150万人が下痢症で亡くなっており、動物由来食品が、特に発展途上国で重要な原因となっています。本研究は、新たに開発した参加型リスク評価が、発展途上国の非正規市場で供給される食品に適用できることを証明するとともに、エチオピア国デブレゼイトの都市および都市周辺地域における、牛乳と自家製ヨーグルトの消費によるブドウ球菌性食中毒のリスクを評価することを目的に実施されました。

 参加型調査とインタビューで非正規流通網の構造を理解し、170農場と5カ所の牛乳収集センターでの質問票調査と牛乳の微生物学的試験により、流通網の定量化と黄色ブドウ球菌への暴露評価を行いました。黄色ブドウ球菌は1ml中106.5個の濃度まで増殖すると、少量で下痢嘔吐などの中毒症状を起こすエンテロトキシンを産生します。エチオピアでは、伝統的に生の牛乳を乳酸菌発酵させてヨーグルトを作っていますが、エチオピアの公表論文をもとに、黄色ブドウ球菌の増殖が止まるpH4.9以下に到達する時間を推定し、黄色ブドウ球菌がエンテロトキシンを産生出来るまでの増殖が先か、それとも発酵による菌の増殖停止が先かを競争させる数理モデルを作出し、市場での汚染状況と、家庭での煮沸の有無、消費までの時間の全てをモデル化してリスクを評価しました。

 牛乳収集センターにおける黄色ブドウ球菌の有病率(72%)は、農場におけるバルク乳のサンプル(43.5%)よりも有意に高い割合でした。ブドウ球菌性食中毒の年間発生率は1000人中20.0人(90%信頼区間13.9 – 26.9)と推定されましたが、乳発酵の効果をモデルから除くと発生率は315.8人(90%信頼区間224.3 – 422.9)であり、何と93.7%が伝統的な発酵技術によって病気を免れていることが明らかとなりました。

 すなわち、電気が届かない、または不安定な発展途上地域においては、動力や高価な機材を必要とする真新しい技術を導入するよりは、乳発酵のような伝統的な調理方法の有効性を見直し、バイオテクノロジーを用いるとすれば、伝統的に用いられている菌株の中から優良な株を発見、継代して農家や消費者に提供するようなことがリスクの低減に繋がり、持続可能な食品衛生向上対策となることが示唆されました。

【蒔田准教授のメッセージ】

「今回のシンポジウムへの参加は、日本と世界の持続可能な食糧生産に貢献する酪農学園大学としても、貴重な機会であったと思います。これからも継続して、地域のため、またグローバルな場で真摯に活動を続けて参りたいと思います」

・ シンポジウムのスケジュールと講演要旨はPDFファイルを参照 (蒔田准教授の抄録は61~62ページに掲載)

・ 動画が見られます⇒http://www.fao.org/webcast/home/en/item/4037/icode/(蒔田准教授のスライド02:20:00、講演後のディスカッション02:53:00)

 2.2b.1 Traditional milk fermentation as a potential tool for sustainable improve-ment of food safety

(和訳:セッション2.2は生産後の付加価値と食品安全「Post production value addition and Food safety」がテーマ)

■ 3日間に渡るシンポジウムの重要なメッセージについてはPDFファイルを参照

【メッセージの日本語要約】

・今回FAOは、参加国における持続可能なフードシステムと栄養の維持にとって障壁となる気候変動などの問題に対応するために、農業生態学的、またバイオテクノロジーによる解決策を模索する参加国、国際機関、研究機関、大学、農業協同組合、市民団体、民間企業の代表による意見交換の場を設けた。

・本シンポジウムでは、特に発展途上国においてバイオテクノロジーが家族経営農場、他の生産者と消費者に恩恵を与えた事例を参考に意見交換が行われた。

・本シンポジウムは、FAOが初めてオンラインで、オランダ、アメリカ、コロンビア、インドネシア、レバノン、ガーナ、イタリアの大学を結び、学生代表が積極的に世界の著名な専門家に質問し、また相互に意見交換する試みがなされた。

・ほとんどの参加国ではGMO(遺伝子組み換え食品)に関して否定的な見方が多いが、遺伝子操作でもハイテク化が進んでいる(※この部分がキーメッセージに抜けているので蒔田准教授が補足説明)。バイオテクノロジーは遺伝子組み換えの同義語ではなく、発酵・生物肥料・人工授精・ワクチン開発・診断・生物学的殺虫剤・育種への分子マーカーの応用など、GMOによらないものも存在する。

・これらの農業バイオテクノロジー技術については、それぞれの国で政府、研究機関、農家が便益とリスクを慎重に評価して適用の是非を検討すべきである。

■ 今回の全てのセッションは、シンポジウムのウェブサイトから動画が見られます⇒http://www.fao.org/about/meetings/agribiotechs-symposium/en/



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