2022年度 入学式 学長式辞

Date:2022.04.05

農食環境学群420名、獣医学群203名、大学合計623名、酪農学研究科14名、獣医学研究科10名、大学院合計24名、合計647名の皆さん、そして編入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。 酪農学園大学教職員を代表して、皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます。新入生の皆さんは、新型コロナウイルス感染症拡大の中での、高校生活、受験準備、そして入学試験を経験され、大変ご苦労されたのではないかと思います。皆さんを今日まで支えてこられたご家族も同様であったことと思います。新入生の皆さん、ご家族、関係者の皆様のご努力に敬意を表します。 本日は、新型コロナウイルス感染防止のために、座席の間を空けて着席していただきました。また。ご家族、関係者のご臨席を控えていただき、時間を短縮して行うことといたしました。今年度も慎重な論議を重ねて準備を行い、通常とは違う入学式となりましたことを、お詫び申し上げますとともに、新入生の皆様、ご家族、関係者の皆様のご理解とご協力に、心より感謝申し上げます。 酪農学園大学は、135万平方メートル、東京ドーム28個分の広さのメインキャンパス内に、校舎、牛舎、牧草地、作物実習・研究圃場、動物医療センターなどがあります。このキャンパスは、道立自然公園・野幌森林公園と接しています。また、車で約15分の元野幌地区には肉牛農場、豚・羊・鶏の中小家畜施設があります。 本学は、札幌市郊外にありながら、家畜、作物、食、健康、環境、獣医学を、単に体験的ではなく、実務的に学ぶことができる、恵まれた環境にあります。この恵まれた環境の中で、優秀な教職員が揃い、充実した教育・研究プログラムと学生サービスが揃っていますので、新入生の皆さんは安心して学ぶことができます。本学の恵まれた環境を十分に活用し、教職員を良き相談相手として、実りある学生生活を過ごしていただきたいと思います。 さて、酪農学園大学の歴史について、少し紹介したいと思います。本学の創設者は黒澤酉蔵先生です。黒澤酉蔵先生は茨城県で生まれ、わが国最初の公害と言われる、足尾銅山の鉱毒被害に苦しむ人々の救済に、一生を捧げた田中正造翁に国土の大切さを学びました。その後、北海道に渡り酪農を始め、冷害やバターの価格の暴落に苦しむ農民の救済に奔走し、酪農の振興に心血を注ぎ、酪農を基盤とした寒地型農業の確立に尽力します。 さらに黒澤酉蔵先生は、戦争で荒れ果てた国土を農業によって復興させたデンマークにも、国土の大切や農民教育の大切さを学びます。そして、ニコライ・グルンドヴィの「神を愛し、人を愛し、祖国を愛し」という三愛主義に出会います。 今年2月、ロシアがウクライナイに侵攻しました。その後の惨劇については、皆さんもニュースでご存じの事と思います。連日、砲撃に逃げ惑う市民、防空壕で過ごす子供たちを見ると、胸が締めつけられる想いがします。砲撃によって壊れた街並みや大地を見ると、復興にどれだけの時間と労力を必要とするのか想像すると、気が遠のく思いがします。一時でも早く停戦し、傷ついた人々の心が癒され、安寧な日々が戻ることを願わずにはおられません。 ウクライナ侵攻により世界が分断され、平和が危機的な状況におかれています。黒澤酉蔵先生を始めとする先達たちが残した、デンマークをルーツとする酪農学園大学の建学の精神・理念である「三愛主義」「健土健民」の考えは、今まさに世界が必要としています。「三愛主義」とは、「神を愛し、人を愛し、土を愛する」ということです。「神を愛し」とは善き人になろうと努力すること、「人を愛し」とは互いの違いを受け入れて生かしあうこと、「土を愛す」とは大地を健康に育てることを意味しています。「健土健民」とは、「健やかな土地から生み出される健やかな食物によって健やかな生命が育まれる」ということです。この考え方は、単に農業に止まらず、人類の営みすべてに当てはまり、今日、誰一人取り残さない持続可能な開発目標(SDGs)に通じる考え方です。 このウクライナ侵攻を契機に、世界の食料供給にも影響が出始めています。加えて、気候変動による自然災害の多発、コロナ禍における物流の停滞、食料の囲い込みなど、課題が山積する今日、安定的な食料生産の重要性がますます増してきています。日本においても食料の自給率向上が、一層重要な課題になることは確実です。このような時、「農・食・環境・生命」について学ぶ酪農学園大学の社会的役割はとても大きいものがあります。とりわけ食料生産と環境との共生に関わる分野においては、その役割は極めて大きいと思います。私たち酪農学園大学は、その役割をあらためて自認し、社会的使命に真摯に向き合わなければなりません。そして、本日、入学された皆さんにも、その一翼を担っていただけることを大いに期待しています。 大学は様々な事を経験し学ぶ所です。多くの人が、大学は専門的な知識や技術を学ぶ所と考えると思います。酪農学園大学は「単に知識を身に付けるだけではなく、知識と実践は一体である」という「知行合一(ちこうごういつ)」の有能な農業人ならびに社会の人材の養成も目的としています。社会においては、幅広い教養、考える力、人を想う心、物事を判断する力も求められます。人工知能や情報通信技術の急速な進展とグローバル化する現代においては、人と人の関わりが豊であることがもっとも大切です。新入生の皆さんにも、ぜひ、この知行合一の実践者になって頂きたいと願っております。 さて、皆さん、ご家族の方々は、新型コロナウイルス感染症のことを心配されていると思います。本学は行政機関の指導を遵守して、専門知識に基づいた感染対策を実行しています。今年は、原則として対面方式による授業を実施します。授業によっては、遠隔授業で行う場合や、対面授業と遠隔授業を併用したハイフレックス型授業も行います。校舎等の建物の入り口には、体温を自動で測定できるサーモカメラ、各所にアルコール等の消毒薬を設置しています。教室には飛沫防止板を設置していますので、安心して大学生活を送っていただけるように感染防止対策を整えています。皆さんには、担当部署から発信される注意事項を確認していただき、感染の危険性のある行動を慎み、健康管理に努めるなど、皆さん自身も感染防止に努めていただくようお願いいたします。 最後になりましたが、ご家族、関係者の皆様、私たちは建学の精神・理念にしたがって、新入生の皆さんが4年或いは6年後に、必ず社会に必要とされる有為な人材になるように、教職員一丸となって努力してまいります。どうか、ご支援いただきますようお願い申し上げます。 ご入学おめでとうございます。

堂地修学長

 

 

2022年4月5日 酪農学園大学 学長 堂地 修