酪農学園大学学長と日本学校農業クラブ推薦入学学生との対談
Date:2025.12.08
NEWS NO.96(2025年度)
酪農学園大学学長と日本学校農業クラブ推薦入学学生との対談
酪農学園大学には、日本学校農業クラブ(農ク)の活動を評価する「日本学校農業クラブ活動特別推薦(農ク推薦)」があります。この制度を活用し、これまで多くの優秀な学生が入学しています。
今回、学長とこの制度を活用して入学した学生たちとの対談の場を設け、高校時代のことや現在取り組んでいることなどについて語り合いました。
対談出席者
<出席者(敬称略)>
・酪農学園大学 学長 岩野英知
・冨永太陽(愛媛県立野村高校出身)
・関和優奈(神奈川県立相原高校出身)
・小林暖虎(北海道壮瞥高校出身)
・宮脇 優(鹿児島県立市来農芸高校出身)
高校時代の農業クラブ活動について
学長:皆さん、お集まりいただきましてありがとうございます。最初に高校時代の農業クラブ(農ク)の活動も含めて、自己紹介からお願いします。

冨永 太陽さん
冨永:愛媛県の野村高校出身の冨永太陽です。3年生の時に農ク全国大会の家畜審査競技会で最優秀賞を受賞することができました。2年生の時にも県大会には出場して、1位の人と同点だったのですが大会の採点方法の規定により、惜しくも全国大会には出場できませんでした。3年生の時にはリベンジする強い気持ちで出場したので、無事に結果を残せて嬉しかったです。2年生の時には農業鑑定競技でも全国大会に出場してたので基礎的なことも勉強することができました。
学長:私は何度か農ク全国大会に参加したことがありますが、独特の雰囲気があり、ものすごい熱気を感じますよね。大会式典での表彰者発表では感動したこともあります。家畜の審査とはどのような競技なのでしょう。
冨永:経産と未経産の牛を4頭ずつ見て順位付けを行い、審査員が着けた順位とどのくらい一致しているかを競います。県大会よりも全国大会のほうが、より難易度が高かったと感じました。実家が酪農家なので、日常的に牛を見ていてどのような体格が良いかなど観察していたことが、よい結果につながったと思います。
学長:では、つづいて関和さんお願いします。
関和:神奈川県の相原高校出身の関和優奈です。高校では農業クラブの活動の一環として牛の世話に力を入れていました。高校で飼育している牛から搾った牛乳を使いチーズやアイスなどの乳製品加工を行ったり、牛の繁殖についても検討したりしてがんばりました。その活動の経験をまとめて2年生の時に乳製品を広める内容で意見発表をして、全国大会で最優秀賞をいただくことができました。また、3年生の時は牛の繁殖に力を入れた内容でも意見発表を行いました。
学長:関和さんのご実家は酪農を営んでいるのでしょうか。
関和:いえ、非農家です。もともとは愛玩動物に興味があり動物に関わりたいと考えて相原高校に入学しました。高校入学後、最初は馬に惹かれたのですが、牛を見て「うわ、かわいい~」「牛しかないな」と思って決めました。相原高校は神奈川県にあるということもあって、牛は乳牛と肉牛を合わせても20頭くらいしか飼育していませんが、朝早くから搾乳したり世話をしたりして、大変でしたがとても充実していて楽しかったです。繁殖については生徒の意見も取り入れてくれたりしたので、やりがいもありました。
学長:自分で判断して手を動かすということは、責任が伴い大変ではありますが、楽しさとやりがいにもつながりますよね。ありがとうございました。では、つぎに小林さんお願いします。
小林:北海道壮瞥高校出身の小林暖虎です。壮瞥高校は洞爺湖の近くにあり酪農学園大学卒業生の教員も多くいました。実家は農家ではありませんが、農業高校に入って技術競技大会を知って「なんだこれは、ちょっと勉強してみよう」と勉強を開始して、気が付くと1年生から3年生まで全国大会に出場することができました。農業クラブでの活動が得点となるため「アグリマイスター顕彰制度」にも興味が出てきて、プラチナを目指して活動をしていました。
学長:農クでの鑑定競技とはどのような競技会か教えてください。
小林:農クでは、農業鑑定競技に取り組みました。1年生・2年生では園芸、3年生では野菜で全国大会に出場し、いずれも優秀賞を受賞しました。病気の診断や種子の鑑定などの知識が必要となるため、品種だけではなく、理論なども広く理解することで判定や診断ができるようになりました。
学長:ありがとうございます。では、宮脇さんお願いします。
宮脇:鹿児島県の市来農芸高校の宮脇優です。自分はすごい負けず嫌いです(笑)。小林さんと一緒で農クでは農業鑑定競技会の畜産部門に参加しました。病気の種類や器具の用途などを解答します。県大会は1年生から3年生まで出場しました。2年生の時にあと1点で全国大会出場のところで涙を飲んだのですが、3年生はリベンジで全国大会に出場することができました。ただ、全国大会では上には上がいて、最優秀賞には届きませんでしたが、優秀賞は受賞することができました。そのほか、和牛甲子園にも力を入れていて、牛の管理やプロジェクト発表の練習などに力を入れました。高校3年生のときには0.2点差で全国一を逃してしまう結果となり、とても悔しい思いをしました。
学長:全国2位は素晴らしい成績であると思います。農ク全国大会にはいろいろな競技があり、それぞれのバックグラウンドも異なる中で、多様な経験をしていることはとても興味深く聞かせていただきました。
酪農学園大学のことを知ったきっかけ
学長:酪農学園大学のことをどのように知りましたか。どのように入学まで至ったのでしょうか。

関和 優奈さん
冨永:実家が酪農家ということもあり、知り合いに酪農学園大学卒業生がいたこともあって、早くから知っていました。北海道なのでよく知っていたということもあると思います。
関和:高校入学まで酪農に興味がなかったため、知りませんでした。入学後に、2学年上の憧れていた先輩が酪農学園大学に進学すると聞いて知りました。
小林:父親が酪農学園大学出身ということもあり、父の母校ということで知りました。
宮脇:高校入学まで知りませんでした。指導をしてもらった恩師である西野健一郎先生から、「受精卵移植の資格を取得したいなら、酪農学園大学はすごい先生がいるので行ったほうがよい」とアドバイスがあり、それで決めました。
学長:私も鹿児島県出身であり、市来農芸高校には昨年訪問させていただきました。鹿児島には多くの卒業生が活躍しています。私は獣医学類の教員でもありますが、全国の農業高校から獣医学類に進学する人もいますが、熱意が凄くて卒業後に活躍している人がとても多いと感じています。
酪農学園大学に入学して感じたこと
学長:さまざまな希望を胸に抱いて酪農学園大学に入学してくれたと思います。いま感じていることを率直に聞かせていただけますでしょうか。
冨永:1年生だから仕方がないかもしれませんが、農業高校出身だと、座学でも知っていることが多く、1年生からもっと実習があったほうが良いと感じています。経営で成功しているところは牛がきれいな酪農家さんが多いです。酪農学園大学の牛が特段汚いということではないですが、もう少しきれいにしてもよいと思います。
関和:1年生のころからいろいろな実習を多くやりたいと感じています。施設・設備は整っているので、3年生くらいから専門教育に入ってくると本格的に使用することが多くなると思います。いまはそれを楽しみにしています。
小林:キャンパスがとても広大であることが良いと思います。高校の敷地がそれほど大きくはなかったこともあり、これほど大きなキャンパスで学べることが楽しいです。大学への希望は、座学と実習についてです。他の農業系大学では、農業高校生向けの授業を履修しなければならないようで、農業高校生の座学をフォローしているようです。酪農学園大学もそのような授業があったらよいと思います。実習は、もっとやりたいです。健土健民入門実習がありますが、座学や見学の時間が多いので、もっと作業したいという気持ちが大きかったです。
学長:すでに高校で専門的な学びを深めてきている農業高校出身ならではのご意見ですね。ありがとうございます。
宮脇:酪農学園大学はとても施設が充実していることと、敷地が広いことが魅力であると感じています。大学で学んだことを地元に戻って実践したいという気持ちが強くなりました。改善してほしい点は、私立大学なので仕方がないのかもしれませんが、学費の面で負担が大きいことです。酪農学園大学に進学したいという人が周囲にもいたのですが、北海道から鹿児島は離れていることもあり、親に相談した時に費用面で断念した人もいました。鹿児島県立農業大学校へ進学する人もいて、3年次編入することもできるので酪農学園大学の良さを伝えています。
学長:学費という面ではそうかもしれませんが、実際に北海道に来てみて生活してみると、意外にも家賃が安いということもあると思います。これは関東や関西の大学と大きく差がつくところではないでしょうか。また、本学の農ク推薦も特待制度(免除)があるので活用してほしいですね。
農業・酪農を取り巻く環境について
学長:酪農家の戸数が1万件を下回ったとニュースになったことはご存じだと思います。人数で見ると2019年は約180万人であり、2024年は約110万人にまで一気に減っています。では、酪農に従事している人たちの平均年齢はわかりますか。
冨永:60歳くらいでしょうか。

岩野 英知 学長
学長:実は69歳を超えているんです。約110万人のうち60歳以上が約100万人といわれています。逆に40歳未満が約5万人といわれています。かなり危機的な状況に愕然としますよね。もっと農業系の大学として魅力を発信して、魅力がある産業にしなければならないと感じています。そうしたこともあり、いま農場再編に取り組んでいて、ロボット牛舎を新築することになっています。ロボット牛舎には自動搾乳機2台を導入して、体細胞などさまざまなデータがスマートフォンですぐにわかるようになります。このような最先端の技術を教育に落とし込みたいと考えています。酪農の「酪」を「楽」にしたいと考えています。自動除糞機や自動給餌機を導入して省力化も目指しています。実際に導入して人生を楽しみながら酪農を支えている農家さんがあります。また、植物工場なども企業とコラボレーションして大学でも導入したいと考えています。さらには、基盤的な農業をしっかりと守るには、国に対してもいろいろと要望していきたいと考えています。農業という今までの概念を超えて、新しい社会にマッチした農業へシフトしていくことも考えられると思います。大きな変化を伴いますが、このことはチャンスでもあると思います。皆さんには、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
本学の農業クラブ推薦制度について
学長:今回集まっていただいた皆さんは、本学の農業クラブ推薦制度を活用して入学しています。近推薦制度は特待制度(入学金と初年次前学期の授業料免除)があります。どのようにして当該制度を知ったか教えてください。
冨永:もともと酪農学園大学のことは知っていて志望校でした。担任の先生に相談していたところ、全国大会が決まった頃に担任の先生から教えてもらいました。
関和:農ク全国大会で結果が残せた後に、校長先生とお話しする機会があって志望校を聞かれたとき「ここは特待がある推薦制度があるからぜひ」と教えてもらい、母に伝えると大喜び(笑)。特待による授業料免除があったのでスムーズに志望校が決まりました。とてもありがたかったです。

小林 暖虎さん
小林:酪農学園大学に進学しようと思った時に、最初は指定校推薦を考えていました。受験方法を調べていくなかで農ク推薦があることを知り、さらに特待による授業料免除があることを知って、担任の先生に相談して挑戦することを決めました。
宮脇:私も最初は指定校推薦を考えていました。高校の先生から農ク推薦の制度を教えてもらってまずはチャレンジしてみようと思って出願しました。
学長:本学の農ク推薦が進学の後押しとなって、大学として嬉しく思います。もっと、本学の農ク推薦や特待制度(免除)のことを、多くの生徒さんに知っていただく機会を設けたいですね。
本学の農業クラブ推薦制度についていま、力を入れて取り組んでいること
学長:入学して半年ほどが経ちました。いまどのようなことに力を入れているか、勉強でもアルバイトでもサークルでも何でもよいので教えてください。
冨永:サークルは乳牛研究会に所属しています。サークルが企画する牧場見学に参加して、将来、酪農を経営するにあたって参考となることを視察して酪農家さんの話を聞いたりして学んでいます。アルバイトもしていますが、社会勉強としてあえて酪農とはぜんぜん異なる業種を選んでいます。
関和:教員を目指すために1年生から教職課程の授業を頑張っているのはもちろんですが、江別市内の牧場でアルバイトをしています。家畜人工授精師の資格も取得したいと考えているので、日常的に牛には関わることで、学び続けたいと考えています。
小林:サークルは吹奏楽団に入っています。初めてトランペットを担当することとなり日々練習を頑張っています。教員を目指しているので、教職課程の授業も頑張っています。
学長:大学に入学したらもちろん勉強も頑張ってほしいですが、サークルやアルバイトも一生懸命頑張ってほしいと思っています。特にサークルは学類も学年も異なる集団です。いろいろな人たちとの関りから学ぶことも多いと思います。

宮脇 優さん
宮脇:私は共進会が好きで、北海道安平町で開催された全日本ホルスタイン共進会に参加して、鹿児島から参加した農家さんのお手伝いをしました。自分から積極的にコミュニケーションをとることを意識して、そこでの出会いからどんどんと繋がりできました。知り合った農家さんのところには、夏休みに実家に帰った時に実習に行かせてもらおうと考えています。
学長:自ら行動を起こせば、何でもできてしまうところが大学なのだと思います。ただ、自分が動かないと活動の幅は広がらないと思います。そのことは、どんなことにも当てはまることだと思っています。同じ学類や学年であっても全国各地から集まっているのが本学の特徴です。大学での出会いは一生の宝物になると思います。そういった関係性や出会いを大切にしてほしいと思います。
これから酪農学園大学へ入学する後輩へのメッセージ
学長:今回参加していただいた皆さんの出身高校からは、本学に進学する生徒も多いと思います。最後に、これから入学してくる後輩たちへのメッセージをお願いします。
冨永:酪農とか農業とかは、座学だけでは学べないことが多いと思います。やはり、現場に出て、動物と触れ合うことが大切だと思います。動物が相手なので思ったとおりにいかないことが多いと思いますが、そのような中でも、焦らずに自分のペースで成長していってほしいと思います。
関和:私自身もここにいる皆さんは全員、農クを頑張ってきた人たちだと思います。農業高校の人たちはぜひ農業クラブに力を入れて頑張ってほしいと考えています。私の場合は、プロジェクト発表や意見発表になりますが、文章を書いたり発表したり、必要な力が身に付くことを実感したので、ぜひ頑張ってほしいです。そして、いろいろなことにチャレンジすることが大切なんだと思います。何事にもチャレンジしてほしいと思っています。
小林:私は、高校に入ってゼロから農業を学ぶことになりました。最初に農クに出会って農業鑑定競技に挑戦することとなったのですが、少しずついろいろな知識を蓄えることができました。後輩たちにもぜひいろんなことに挑戦してほしいと思います。ただし、挑戦するということはとても大変なことです。挑戦する前も後も体力を使うし、大変だと思います。だから、挑戦することは大切だけれど、少しずつ自分のペースで頑張ってほしいと思います。
宮脇:私は、やりたいと思ったことをとことん突き詰めて、極めるくらいやったほうが良いと思います。高校生活や大学のなかで、牛にちゃんと向き合えば応えてくれるということに気付きました。やりたいことは少しくらい反対されたとしても、相手を説得できるくらいに向かって行ったほうが良いと思います。やっぱり自分がやりたいことをやっているときはすごい楽しいのです。徹底的に向き合って自分のやりたいことを見つけて取り組むべきだと思います。大学生は休みも多いですが、その期間も上手に活用すれば農家さんで実習することもできますし、自身の成長につながると思います。そのことも踏まえて大学に進学することを考えてほしいと思います。
学長:皆さん、素晴らしいですね。大学をどう過ごすか、好きなことを楽しく取り組むことが大切だと思います。楽しいということは、継続という意味でも重要なファクターだと思います。高校での主要5科目の成績だけで人生は決まらないと考えています。人生はそのあとの方が長いです。皆さん個々の持つパワーは農クに取り組みながら、力を蓄えてきていると思います。それをもっとこれから伸ばしていき、人生を豊かに楽しめるように歩んでほしいと思います。
皆さん、今回の学長との対談にご出席いただきまして、本当にありがとうございました。これからはキャンパス内で会った際にはぜひ気軽に声をかけてください。これからの皆さんの活躍を期待しています。ありがとうございました。
冨永 太陽さん
農食環境学群 循環農学類1年 乳牛研究会
愛媛県立野村高等学校出身
農ク全国大会
・第75回 岩手大会 家畜審査競技会
最優秀賞(農林水産大臣賞)受賞
関和 優奈さん
農食環境学群 循環農学類1年
神奈川県立相原高等学校出身
農ク全国大会
・第74回 熊本大会 意見発表会 Ⅲ類 ヒューマンサービス
最優秀賞(文部科学大臣賞)受賞
小林 暖虎さん
農食環境学群 循環農学類1年 吹奏楽団
北海道壮瞥高等学校出身
農ク全国大会
・第75回 岩手大会 農業鑑定競技 野菜
優秀賞 受賞
・第74回 熊本大会 農業鑑定競技 園芸
優秀賞 受賞
宮脇 優さん
農食環境学群 循環農学類1年 乳牛研究会
鹿児島県立市来農芸高等学校出身
・第75回 岩手大会 農業鑑定競技 畜産
優秀賞 受賞
本学の日本学校農業クラブ活動特別推薦は、2027(令和9)年度入学者選抜より、試験の名称を「日本学校農業クラブ活動選抜」に変更し、「総合型選抜」として実施します。詳細は以下のリンクからご確認ください。
【関連】
◆日本学校農業クラブ活動選抜
https://nyushi.rakuno.ac.jp/guidance/entrance-exam-changes.html
◆日本学校農業クラブ活動選抜(2027年度入学者選抜解説動画)
https://www.youtube.com/watch?v=XZ6nqUqbccs

◆酪農学園大学 受験生サイト(入学試験要項等)
https://nyushi.rakuno.ac.jp/guidance/guidance-webentry.html




