NEWS No.85(2026年度)
作物圃場から拓く高付加価値農業—1株1果・立体栽培で挑む高級メロンづくり
フィールド教育研究センター(FEDREC)作物生産ステーションでは、限られた圃場面積を有効に活かした「差別化と高付加価値化」への挑戦が行われています。
今回は、北海道内でも珍しい「1株1果・立体栽培」による高級マスクメロン(アールス系)の栽培に取り組んだ作物圃場担当の山口技師にお話を伺いました。

――今回の「1株1果・立体栽培」に取り組まれたきっかけや狙いについて教えてください
山口氏 これまでは1株から3~4個を収穫する一般的な地はわせ栽培を行っていました。2年前までは教職課程の学生と栽培していましたが、昨年は野菜サークルの学生たちとお試しで立体栽培に挑戦してみたところ、「これなら本格的にできる」という手応えを得ました。
本学の作物圃場は面積が限られています。そのため、通常の量産型農家さんと同じやり方ではなく、小規模でも価値の高い作物で差別化を図ろうと考えたのが始まりです。1株に約30枚つく葉からの養分を、通常のように分散させずたった1つの果実に集中させることで、より濃厚でおいしいメロンが育ちます。

――栽培された品種の特徴や、北海道での取り組みの珍しさはどこにありますか
山口氏 今回栽培したのは、静岡県の高級ブランド「クラウンメロン」として知られるアールス系のマスクメロンです。北海道ではアンデスメロンなどが主流ですが、アールス系は香りが素晴らしく、果肉が柔らかで味が非常に濃厚、そして表面の美しいネット(網目)が華やかに浮き出るのが特徴です。道内では非常に珍しい取り組みですが、本学の作物圃場だからこそ挑戦できる高付加価値化のモデルとして選定しました。

――技術的に苦労された点や、栽培におけるポイントについてお聞かせください
山口氏 メロンを実らせる理想的な高さ(節)の位置に受粉させる作業には大変苦労しました。また、水管理が極めて繊細です。水をあげすぎると綺麗なネットが出なかったり、逆にひび割れたりします。ネットはまず縦のラインが入り、その後に横のラインが出るのですが、縦ラインの時期は水を多めにあげ、横ラインの時期は極力水を切るといった緻密なコントロールが求められます。
種まきから収穫まで約120日かかりますが、今年は適度な寒暖差と恵まれた天候にも助けられました。ネズミや病気の影響で100株中、無事に結実・収穫できるのは50個ほどの見込みですが、手塩にかけて育てた満足のいく出来栄えとなりました。
――安心・安全面や環境配慮への取り組み、そして学内での活用はいかがでしょうか
山口氏 今回のメロン栽培では、学園内で作られた堆肥をメインに使用し、農薬も最小限に抑えて育てており、収穫したメロンは学内限定で販売を予定しています。現在、同じハウス1棟でミニトマトやスイカ(でんすけ)なども栽培していますが、やはり自分たちが作った作物が学内で喜ばれることは大きな励みになります。
――今回の成功を踏まえ、今後の展望や学生への想いをお聞かせください。
山口氏 来年もこの取り組みを本格的に継続していきます。一緒に汗を流した野菜サークルの学生たちも大きな手応えを感じて喜んでくれており、彼らが卒業後に就農した際、この高付加価値化の知見をぜひ役立ててほしいと願っています。
これまで作物圃場自体の直接的な収益化が課題でしたが、良いものを作って販売し、得た収入を次の生産資材や教育研究環境へ還元していく「良いサイクル」を確立したいと考えています。
限られた圃場面積となりますので、教育研究用圃場を優先して確保しなければならないため、生産用圃場をなかなか確保できないというもどかしさもありますが、基本を大切にしながら、学生たちが誇りを持てるようなフィールドづくりと自立した農場経営に今後も挑んでいきます。

【関連】
◆酪農学園フィールド教育研究センター
https://www.rakuno.ac.jp/outline/initiatives/farm.html
前の記事
本学獣医学研究科・獣医学類の食品衛生学ユニットの学生が北海道獣医師会で「奨励賞」、細菌学会北海道支部会で「優秀賞」を受賞
2026.09.07