本学学生2名および教員の計3名が学術集会優秀発表賞を受賞
Date:2025.12.08
NEWS NO.99(2025年度)本学学生2名および教員の計3名が学術集会優秀発表賞を受賞
2025年9月3日(水)から5日(金)にかけて宮崎市のシーガイア・コンベンションセンターで開催された第168回日本獣医学会学術集会において、 本学獣医学類5年生の五十嵐隆章さんが疫学分科会にて、本学獣医学類6年生の阿部茜さんが獣医繁殖学分科会にて、本学獣医学類の小林良祐助教が獣医解剖分科会にて、それぞれ「学術集会優秀発表賞」を受賞しました。
学術集会優秀発表賞受賞者一覧
<疫学分科会> 獣医学群獣医学類5年 五十嵐 隆章さん(獣医疫学ユニット)
<獣医繁殖学分科会> 獣医学群獣医学類6年 阿部 茜さん(動物生殖学ユニット)
<獣医解剖分科会> 獣医学群獣医学類 小林 良祐 助教(獣医解剖学ユニット)
研究概要および受賞コメント
【疫学分科会学術集会優秀発表賞】獣医学群獣医学類5年 五十嵐 隆章さん(獣医疫学ユニット)
発表題名:「牛の蹄病に対する治療効果の定量的検証」
発表概要:牛の蹄病は跛行につながり、酪農生産性に負の影響を与える。蹄底潰瘍は蹄病の主な原因の一つであり、獣医師による治療は牛の行動を改善すると考えられているが、治療効果に関する知見は限られている。そこで本研究では治療前後の行動時間を比較することで蹄病の治療効果を検証することを目的とした。
治療効果を正しく評価するため、気温・湿度や分娩の影響を排除した採食時間を治療前後で比較した結果、すべての観察期間で約30分以上の有意な増加が認められた。
この採食時間の増加は、痛みにより制限されていた行動が、治療によって改善されたことを示唆している。すなわち、獣医師による蹄底潰瘍の治療は、痛みの軽減を介して採食行動を本来の状態へ回復させる効果をもつと考えられる。
受賞者のコメント:このたびは、このような賞を頂くことができ、大変光栄に存じます。
これまで多くの学会で発表の機会をいただき、そこで得た経験が今回の発表にも大きく生きました。ご指導くださった先生方、そして研究を支えてくださった多くの皆様に、改めて心より感謝申し上げます。今後も、より良い研究成果を生み出せるよう、精進してまいります。

【獣医繁殖学分科会学術集会優秀発表賞】獣医学群獣医学類6年 阿部 茜さん(動物生殖学ユニット)
発表題名:「牛子宮内膜外側を構成する筋層区分に関する解釈の検討」
発表概要:これまで、牛子宮壁構成層は生体での超音波横断画像所見、屠体での肉眼所見、および組織学的所見において異なる構成層区分が報告されていました。特に、子宮内膜外側の構成層は様々な解釈が混在し、認識の不一致が生じていました。そこで2024年度の研究において、牛の子宮内膜外側には内輪走筋層、血管に富む筋層、外縦走筋層の3つの筋層が存在することを示し、2025年度の本研究では、牛発情周期中のそれら3つの筋層における性ステロイドホルモン受容体の発現が有意に異なることを明らかにしました。発情周期中のステージに応じて子宮筋収縮により果たされる精子や胚の移送、異物排出などの役割には、牛子宮壁を構成する3つの筋層それぞれが別々に関与し機能を発揮している可能性が考えられます。
受賞者のコメント:この度は、このような輝かしい賞に選出いただき、大変光栄に思います。本研究では屠体生殖器を用い、日頃の臨床的なユニット活動とは異なる視点から繁殖学を探求することができ、知識・経験ともに大きく成長できたと感じています。また、本研究を通じて多くの個性豊かな生殖器に出会いました。特に、発情期の生殖器は黄体期とは比較できないほど子宮内膜の浮腫が見られ、同じ“発情期”でありながら、超音波診断装置で見る生体での発情鑑定実施時の白黒平面画像とは全く異なるものでした。その時の強い興奮と高揚感を覚えたことは今でも忘れられません。常に心躍らせながら研究に取り組むことができたのは、終始熱心にご指導くださり、恵まれた研究環境を整えてくださった杉浦先生、目標となる姿を示してくださった先輩方、そして互いに切磋琢磨しながらユニット活動に励んだ仲間たちのおかげです。素敵な経験をさせていただいたすべての方に感謝申し上げるとともに、今回の受賞を励みに、今後も成長し続けられるよう精進してまいります。
【獣医解剖分科会学術集会優秀発表賞】獣医学群獣医学類 小林 良祐 助教(獣医解剖学ユニット)
発表題名:「マウス胚着床を可能にする時期特異的エンハンサー制御の探索」
発表概要:受精卵が子宮に着床するメカニズムは、生命誕生の根幹をなす重要な生命現象です。この過程の不全は、ウシなどの家畜における受胎率の低下や、ヒトの不妊の大きな原因となっています。着床が成功するには、子宮内膜が受精卵を受け入れるために形と機能を劇的に変化させる必要がありますが、その詳細な仕組みは未解明でした。
本研究では、遺伝子の働きをONにする“遠隔スイッチ”である「エンハンサー」に着目しています。マウスの子宮内膜細胞を用いて、着床準備の前後でエンハンサーの活性がどう変化するかを網羅的に解析しました。
その結果、着床準備が本格化する時期に、エンハンサーの活性パターンが大規模に書き換わることを発見しました。特に、細胞の形を柔軟に変化させる「アクチン骨格」を制御する遺伝子群のエンハンサーが活性化しており、これが子宮内膜の劇的な形態変化を引き起こす鍵ではないかと考えています。
この発見は、これまで謎に包まれていた着床メカニズムの根幹を解明する大きな一歩です。本研究で得られた知見は、将来的にはウシの繁殖障害の原因究明や受胎率向上技術、さらにはヒトの不妊治療法の開発へと繋がるものと期待されます。
受賞者のコメント:この度は名誉ある賞をいただき身に余る光栄です。この成果は、共同研究者の皆様をはじめ、本学の学生や教職員の皆様など、ご支援くださった多くの方々のお力添えの賜物と、深く感謝しております。本研究はモデル動物を用いて行った基礎研究ですが、将来的にはその成果が家畜受胎率向上といった応用につながるよう、その端緒を拓くべく、今後も一層研究に邁進していく所存です。

【関連記事】
◆公益社団法人日本獣医学会 日本獣医学会学術集会優秀発表賞受賞者
https://www.jsvetsci.jp/society/prize05_168.php
◆獣医学類 蒔田 浩平 教授(獣医疫学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9430.html
◆獣医学類 杉浦 智親 助教(動物生殖学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9459.html
◆獣医学類 小林 良祐 助教(獣医解剖学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/33383.html
