小林 良祐

獣医学類

小林 良祐 こばやし りょうすけ

助教

研究室番号
A4-104

教員・研究室

取得学位 博士(農学)
研究室・ユニット名 獣医解剖学
研究テーマ 哺乳類の胚着床を制御するエピジェネティクスとその進化的起源の解明
学びのキーワード 胚着床形態進化エピジェネティクスエンハンサーゲノム編集モデル動物
教育・研究への取り組み 動物の複雑かつ精巧な「形態」がどのように作り上げられるか、また生物史の中では形態進化がどのように起きてきたかを明らかにすることを目指しています。ゲノム編集技術を駆使し、生命の設計図であるゲノムやエピゲノムを積極的に書き換えることにより、動物の形態進化に潜む数々の「なぜ?」を検証します。特に妊娠の最初に起きる胚着床で、母体の子宮が胚(受精卵)を受け入れるための形態変化の進化的基盤に着目しています。
受験生へのメッセージ 獣医学は“動物を通じて人類の幸せに貢献する”学問であり、それを実践することこそが獣医師の使命だと考えています。「動物が好き」で酪農学園大学を志す方も多いと思いますが、「好き」なことを仕事にして、それが”世界の幸せ”につながるのであれば、とても素敵なことだと思いませんか?みなさんが持っているそれぞれの魅力を最大限に発揮すべく、自然豊かなキャンパスで共に考え共に悩み、共に挑戦しましょう!

研究シーズ

研究キーワード 子宮 エピジェネティクス ゲノム編集
子宮内膜の機能を支えるエピジェネティック制御の解明
研究の概要・特徴

妊娠は、ヒトや家畜を含む哺乳動物に特有の生殖様式であり、その過程において、子宮は、胚着床から胎子の成長、そして分娩に至るまで、極めて重要な役割を担う組織です。これらの機能を発揮するために、子宮の内側層である子宮内膜は、生殖周期や妊娠前後でダイナミックな形態的および機能的な変化を遂げます。一方で、子宮内膜の恒常性が破綻したり機能が逸脱したりすると不妊症や子宮がんといった子宮関連疾患の原因となります。
大規模シーケンス技術の向上により、子宮内膜の機能に関わる遺伝子発現が明らかになりつつありますが、遺伝子発現の基盤であるエピジェネティック制御(DNA/RNA、およびヒストンタンパクの化学修飾を介した遺伝子発現調節機構)については、まだ多くの未解明な部分が残されています。
私は、子宮内膜機能におけるエピジェネティック制御の重要性を解明するため、遺伝子ノックアウトによってエピジェネティック制御を人為的に阻害したモデルマウスを用いた研究を展開しています。これらのモデルマウスは、最新のゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9システムを用いて独自に作製したものです。実際に、子宮内膜でRNAやヒストンのメチル化を阻害したマウスでは、着床不全や子宮がんの悪性化が確認されており、エピジェネティック制御が子宮内膜の機能や恒常性に必須の役割を果たしていることを生体レベルで証明しています。

図1:エピジェネティック制御の概略 図1:エピジェネティック制御の概略
図2:エピジェネティック制御が破綻したマウス子宮ではがんが悪性化した(右) 図2:エピジェネティック制御が破綻したマウス子宮ではがんが悪性化した(右)
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

我々の研究は、子宮内膜におけるエピジェネティック制御が子宮の機能や恒常性に果たす重要な役割を解明することを目的としています。この知見は、家畜の繁殖管理や健康維持においても大きな可能性を秘めています。特に、乳牛をはじめとした繁殖用家畜の不妊や繁殖障害の原因解明において、エピジェネティック制御を標的とした新たなアプローチを提供し得るものです。また、着床不全や子宮疾患の予防策を確立することによって、繁殖成績の向上や疾患リスクの低減が期待され、畜産業界における生産効率の向上に寄与したいと考えています。