遠井 朗子

環境共生学類

遠井 朗子 とおい あきこ

教授

研究室番号
中央館 812
取得学位 法学博士
研究室・ユニット名 環境法
研究キーワード 国際環境法 条約の国内実施 生物多様性

環境条約の国内実施:グローバルガバナンスと法

研究の概要・特徴

環境条約の国内実施とは「締約国が自国において立法その他の措置をとることにより、環境条約を作動させること」と定義され、いかなる措置をどの程度とるかは、締約国の裁量に委ねられている。一方、環境条約は成立時に枠組み規定を定め、締約国会議等の条約実施機関の検討を経て、規制内容を具体化することが通例である。そのため、締結時に条文との逐語的な整合性を考慮して国内担保法を確定した後も、効果的な実施の確保という観点から、実施法制を随時見直すことが求められる。さらに、近年は条約とグローバルな政策領域との連携が進展し、国内実施においても義務の履行を越えて、複合的なガバナンスの実装を求められる場合がある。
 例えば、「絶滅が危惧される野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)は稀少な野生動植物の国際取引を規制するため、1973年、国連の下で採択され、野生生物の消費的利用に否定的な保存主義の影響の下、カリスマ種の取引禁止が進められた。しかし、1990年代以降の「持続可能な利用」の主流化に伴って、人工繁殖された個体を含む「野生生物」の合法的取引が増加し、水際規制に留まらず、適切な管理を確保するための様々な保全措置が求められている。さらに、野生生物の国際取引を取り巻く国際情勢の複雑化に伴って、違法取引に対する法執行の強化(犯罪化)、需要削減、動物福祉の考慮を含む統合的な施策の実施を求められる傾向が強まった。
 このように、環境条約の国内実施は国際的な公共政策と国内法政策の経路として機能し、脱炭素、生物多様性の主流化、サーキュラー・エコノミー等、官民が連携してルール・メイキングを行い、新たな政策課題への取り組みが進展している背景には、多元的な意思決定プロセスが存在すること、及びその特有のロジックを明らかにし、併せて社会の公正な移行に必要となる法政策について、検討を行っている。

産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

地球温暖化対策法の2021年改正により、国民、事業者、NGO、政府、地方公共団体は密接な連携の下に脱炭素化社会を目指すことが条文に明記され、我が国における民間事業者が活発なESG投資を呼び込むために、積極的に情報開示を行うための基盤整備が定められた(オープンデータ化等)。ところで、ESG投資において、開示を求められる非財務情報とは気候変動への取り組みだけではない。ダボス会議では近年、生物多様性関連のグローバルリスクが深刻に受け止められるようになり、OECDも気候変動と生物多様性を共に取り組むべき重要課題と位置付け、2020年6月のG20環境大臣会合の共同コミュニケにおいてもこの点を確認している。今後は生物多様性についても開示情報に含められ、サプライチェーン全体を通した取り組みがESG投資で評価される動きがさらに進むと予想される。SDGへの取り組みを継続する上では、国際的な合意事項や議論の動向についても、是非、関心をもって注視して頂きたい。