今井  敬

循環農学類

今井  敬 いまい けい

教授

研究室番号
C6-306
取得学位 博士(農学)
研究室・ユニット名 動物生殖工学
研究キーワード ウシ 体外受精 OPU

受胎性の高い体外受精胚の選別方法

研究の概要・特徴

 ウシ体外受精胚は育種改良の促進、黒毛和種の増頭、体内胚の採取できないドナーからの胚生産および体内胚よりも効率の良い胚生産技術として近年注目されている。しかしながら、一般的に体外受精胚を体内胚と比較すると受胎率が低い、流産率が高いおよび過大子の発生率が高いなど、課題が多いのも事実である。
 近年、ウシを体外受精胚の初期卵割の様式を個別培養シャーレとタイムラプスシネマトグラフィーを用いて観察し、受胎性の高い胚の選別方法が考案されている。これらの研究では高価なタイムラプスシネマとグラフィーが必要とされる。一方、初期胚の卵割時間は用いる卵子や精子の種類によって異なっており、例えば性選別精液を用いると第1卵割時間が遅れることが報告されており、卵子の成熟培養時間によっても違ってくる。そこで新たに第1卵割時間に2回、卵割休止期に1回の初期卵割における割球数を観察することにより、体外受精胚の初期卵割の正常性が受胎性と関連しているかについて検討した。胚の形態評価による受胎率では有意差は認めなかったが、選抜胚と棄却胚では受胎率に有意差(p<0.05)が認められ、選抜された体外受精胚は73.9%と高い受胎率を示した。また、棄却胚において1つの指標で棄却された胚は42.9%、2つの指標で棄却された胚は25.0%となり、指標による評価も順当であった(画像①)。
 これらのことより、体外受精胚の初期卵割における3回の顕微鏡観察による選別は受胎性の高い胚の選別が可能であることが確認された(画像②)。今後はこの選別法と経腟採卵ー体外受精(OPU-IVP)による体外受精胚の生産技術を組み合わせることにより、ウシ体外受精技術がより有効な胚生産技術となり、ウシの育種改良および黒毛和種の増産が加速されると考えられる。 

産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 体外受精胚はと畜場の卵巣を利用することにより、安価に大量なウシ胚を作製可能とする。牛の繁殖において夏季の受胎率低下の問題は、地球温暖化の問題と相まって今後さらに重大な問題となると考えている。その原因としては夏季の高温が特に高温耐性の低い時期である卵子および初期胚などの発生を阻害することが主要因とされている。この夏季の繁殖率低下を回避するためには秋から春にかけて作製した体外受精胚を夏場に移植することが最も有効と考えられている。これらの時期に大量に作製し凍結保存した体外受精胚を夏季に移植することにより、夏季の受胎を確保できれば、牛乳消費量が上がる春から夏にかけての分娩牛が増え、牛乳消費量の上がる初夏から夏に泌乳最盛期を迎える牛が増えることになる。
 一方、OPU-IVPによる胚生産技術との組合わせでは本来は胚を採取できない生後6か月齢位から胚生産が可能となり、ゲノム評価と組み合わせることにより、より一層の育種改良の加速化が期待できる。