NEWS NO.113(2025年度)
獣医学類5年 伊藤 聖都さんが日本顕微鏡学会北海道支部長賞を受賞
2025年11月29日(土)に、北海道大学工学部 フロンティア応用科学研究棟において開催された「令和7年度 公益社団法人日本顕微鏡学会北海道支部学術講演会」において、本学 獣医学類5年 伊藤 聖都さんが(獣医解剖学ユニット)が日本顕微鏡学会北海道支部長賞を受賞しました。

【受賞演題】
「断面研磨SEM法を用いた非脱灰の歯の観察方法の検討」
【研究概要】
従来の組織学的観察において、骨や歯のような硬組織は、主成分である無機質を除去する「脱灰」処理を経て薄切されます。しかし、歯のエナメル質はほとんどが無機質であるために、脱灰によって消失してしまいエナメル質を保存した状態で歯の断面構造を詳細に評価することは困難でした。
本研究では、この課題を解決するため、硬組織を脱灰せずに丸ごと樹脂に包埋し、断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する「断面研磨 SEM法」の確立を目指しました。非脱灰のイヌの歯に本法を適用した結果、エナメル質を保存した観察だけでなく、ゾウゲ質、セメント質、歯槽骨、歯根膜といった歯周組織の全ての詳細な構造を断面観察することに成功しました。
特に、エナメル質が保存された状態で観察できるようになったことで、エナメル質の表面に付着する歯石をミクロレベルで捉えることが可能となり、歯石とエナメル質の付着様態を詳細に解明できることにつながります。この「断面研磨SEM法」は、歯や骨などの硬組織研究における画期的な技術であると確信しています。
【受賞コメント】
獣医学群獣医学類5年 伊藤聖都さん(湘南白百合学園中学・高等学校(神奈川県)出身)
「この度は、優秀な評価をいただき、大変嬉しく思います。本研究は、従来の脱灰処理では消失してしまうエナメル質を、非脱灰のまま観察する手法の検討を行いました。歯石とエナメル質の関係性をより鮮明に可視化できたことは、今後の臨床現場に還元しうる成果として大きな意義があると考えています。今回の受賞は、粘り強くご指導いただいた先生方のおかげです。今後も精進してまいります。」
【担当教員からのコメント】
獣医解剖学ユニット
渡邉 敬文 教授
「これまでの常識を覆す新しい技術は獣医学の発展に新風をもたらすものと確信しています。その第一歩となる今回の受賞に心より拍手を送ります。」
髙橋 直紀 講師
「伊藤さんは断面研磨SEM法を動物組織に応用した世界初の挑戦を評価されての受賞となりました。マニュアルの無い手探りの研究ですが、丁寧に作業を積み重ねる伊藤さんの努力が受賞に結び付いたことに称賛の言葉を贈ります。」
小林 良祐 助教
「歯の構造を丸ごと観察しよう」という全く新しい挑戦に真っ向から向かい合い、この度の受賞を果たした伊藤さんを心から誇らしく思います。これからのさらなる飛躍を、とても楽しみにしています。」



【関連】
◆2022.11.29 大学院獣医学研究科の星野信隆さんが日本顕微鏡学会北海道支部長賞を受賞
https://www.rakuno.ac.jp/25209.html
◆2019.12.16 令和元年日本顕微鏡学会北海道支部学術講演会」にて 小原千佳さんと大矢樹さんが北海道支部長賞をダブル受賞
https://www.rakuno.ac.jp/7392.html
◆2018.11.28 平成30年日本顕微鏡学会北海道支部学術講演会にて本学学生がダブル受賞
https://www.rakuno.ac.jp/4919.html
◆獣医学類 渡邉敬文 教授(獣医解剖学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/9449.html
◆獣医学類 髙橋直紀 講師(獣医解剖学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/26963.html
◆獣医学類 小林良祐 助教(獣医解剖学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/33383.html
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