NEWS NO.39(2026年度)
環境共生学類で学べる昆虫に関する2つの研究室紹介
昆虫は世界に約100万種が知られ、日本にはそのうちおよそ3万種が生息しています。よく目につくチョウやクワガタムシだけでなく、目に見えないサイズの昆虫も地中や樹上、熱帯から極地まで至る所に生息しており、その姿や生き方は実に多様です。身近で奥深い昆虫の世界を、酪農学園大学で学んでみませんか。

本学環境共生学類には「昆虫生態学研究室」と「昆虫生理生態学研究室」の2つの昆虫に関わる研究室があります。それぞれの研究室ではどのような昆虫について学べるのか紹介します。昆虫生態学研究室松林圭講師と昆虫生理生態学研究室の松本圭司講師のお二人にそれぞれインタビューを行いました。
――研究内容(研究対象)と担当授業・実習を教えてください
松林 圭 講師(以下、松林先生)
「私は多様性分野を広く研究していますが、特にその中でも多様性創出機構、つまり地理変異や種分化を専門にしています。昆虫生態学研究室では昆虫だけでなく様々な陸上無脊椎動物を対象として、種や集団の違いがどのようにして生じるのかを、行動や形態、生態、遺伝子の比較を通して調べています。主な担当授業は動物形態機能学(2027年度からは「進化学」)で、動物の多様な形態がどのように進化してきたかについて解説しています。それ以外は実習が多くて、野生動物観察同定実習、自然環境学実習、実践野生動物学実習、健土健民入門実習などを他の先生と分担して教えています。これらの実習は基本的に野外に出て昆虫や植物について実地で学ぶスタイルです。」

松本 圭司 講師(以下、松本先生)

「私は、昆虫生理学を専門としています。特に、幼若ホルモンと呼ばれる昆虫の成長や繁殖を調節するホルモンや、季節の変化に応じた休眠の調節、体内時計による活動リズムなどに興味を持っています。研究室ではカメムシ類を中心に昆虫や節足動物を対象に、彼らがどのように環境を認識し、それに適応しているのかを調べています。主な担当授業は、基盤教育科目の「生物学」と「生物学実験」、そして今年度から担当する「生物分類学」です。生物学では専門教育の土台となるような生物学の基礎を幅広く学びます。また、実験では動植物の細胞等の顕微鏡観察を通して、生物を観察し記録する方法や科学的な考え方を身につけます。」
――環境共生というと野生動物(クマ・シカ)や地球環境(気候・水質・土壌)などをイメージしますが、昆虫はどのように環境共生に関わるでしょうか
松林先生
「環境というのは、まず土や水などの無生物が基盤にあって、そこに植物が生育し、さらにそれを餌とする草食動物を中心に多様な動物が生息している、というイメージだと思います。昆虫を始めとした無脊椎動物はそれらの間を埋めている存在ですね。すごいのは世界のあらゆる地域で無数に存在する全ての環境をこのような無脊椎動物が埋めているという点です。植物や動物に害を及ぼして寿命を短くし、分解して土壌への循環を早めるもの、逆に共生してともに子孫や分布を広げるものなど、これらの無脊椎動物が仲立ちとなって地球の自然環境は成り立っています。」

松本先生
「野生動物と聞くと、クマやシカなどの野生哺乳類や、鳥類などの脊椎動物を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、私たちにとって最も身近な野生動物は昆虫です。身の回りの自然環境には必ずと言ってよいほど昆虫が存在しています。また、昆虫は環境の変化に敏感な生き物でもあります。季節や気温の変化に応じて活動時期や繁殖時期を変化させるため、昆虫を調べることで生物と環境との関わりを知ることができます。さらに、昆虫は地球上で知られている動物種の半数以上を占める、最も繁栄した動物グループです。さまざまな環境に適応していることから、昆虫は環境共生を考える上で欠かせない存在だと思っています。」

――どのようなことを学びたい学生 (卒論テーマなど) が研究室に多いでしょうか
松林先生
「基本的には“昆虫で面白いことがしたい”という動機で研究室を選ぶ学生が多いですね。本学の特長として野外で調査や観察をしたいという希望が大半なので、その点はなるべく考慮するようにしています。あとは子供のころからクワガタなど特定のグループが特に好きだったという学生もいるので、そういう場合には希望するグループで何か学術的に意義のある面白い研究ができないか一緒に考えて進めています。毎年度、害虫防除など役に立つ研究をしたいという学生もいて、そこは本学らしいと感じますね。」

松本先生
「もちろん昆虫好きが多いですが、季節適応や生理学に興味をもって研究室を選ぶ学生もいます。また、害虫の生態や防除に関心をもつ学生が来ることもあり、その点は昆虫生態学研究室と共通しているかもしれません。また、意外かもしれませんが、昆虫はあまり得意ではないという学生が来ることもあります。本学類はフィールドワークが好きな学生が多いと思うのですが、私の研究室では野外調査中心というよりも、室内での観察や飼育、行動解析、実験を行うテーマも多いため、フィールドワークが得意ではないという学生でも取り組みやすいと思います。」

――今後の抱負や展望などについてお聞かせください。
松林先生
「まず多様性創出機構に関して、北海道内でのいくつかの種分化研究を学生と一緒に進めたいと思っています。標高の違いや餌の違いで種が分化する真っ最中という珍しいケースが道内でいくつか見つかっています。これらは進化学的にも非常にホットな分野なので、研究室全体として取り組んでいるテーマです。それと、大学の研究林を最先端の野外研究ができるように整備したうえで、一般の方々が見学できるようにしたいですね。本学はキャンパスのすぐ裏手に野幌原生林と隣接した研究林があるので、ここに実験区画を設けたり散策路を通すことで、亜寒帯の平地にある原生林という全国的にも貴重な環境を研究と教育に生かしていければと考えています。」

松本先生
「幼若ホルモンをはじめとする昆虫ホルモンの研究をさらに発展させていきたいと考えています。また、昆虫が季節や環境の変化にどのように適応しているのかや、本州から北海道へ分布を広げた昆虫がどのように新しい環境へ適応しているのかといったテーマにも興味があります。そのほか、学生と一緒に昆虫の面白い現象や行動の謎を解き明かしていきたいと思っています。なぜこの行動をするのか、体の中で何が起こっているのかといった疑問を大切にしながら、行動の観察だけでなく、その背景にある体内の仕組みにも迫る研究を進めていきたいですね。昆虫は苦手な人も多い生き物ですが、知ることでその見方は大きく変わります。研究や教育を通して、その面白さ・魅力を伝えていければと思っています。」




<研究室に所属する学生インタビュー>
昆虫生態学研究室4年 三樹 光さん(帯広大谷高校出身)

子供の頃から生き物が好きで、高校3年生の夏に両親から酪農学園大学に昆虫の先生が来たと聞いて進学先を決めました。その後、大学1年生のときに昆虫生態学研究室に見学に来て、配属を希望しました。趣味は野鳥の撮影です。大学のすぐ裏に広い森があってエゾフクロウやコマドリ、シマエナガを含め、100種以上の鳥が観察できます。
サークルでは鳥、魚、両生類、爬虫類、昆虫、植物まで幅広く活動している野生動物生態研究会(通称:野研)に所属しています。各分野にセミプロの先輩がいて、フィールドで詳しく解説をしてもらえるので非常に勉強になります。卒論では昆虫の標高適応を研究しており、毎週羊蹄山に登っています。卒業後は仕事で斜里町に居住する予定なので、シャチなどの大型野生動物の写真を撮るのが目標です。
昆虫生理生態学研究室3年 熊谷 佑也さん(北海道大麻高校出身)

私は昔から生き物や自然が好きで、小学生の頃には酪農学園大学が開催している体験型イベントにも参加したことがあり、それが本学への進学を考える際の大きなきっかけになりました。研究室選びでは、大学の授業や上級生からの話、先生との面談を参考にしました。気になる研究室があれば、その先生の授業を受けてみるのも参考になると思います。
現在の研究室では、昆虫を捕獲しに行ったり、先生や上級生から研究について学んだりしています。先日は江別市内の越後沼でコオイムシを探しました。3年生の間に、上級生の卒業研究や先生の研究について理解を深め、卒業研究に向けて準備していきたいと考えています。
【関連】
◆環境共生学類
https://www.rakuno.ac.jp/academics/department/symbiotic.html
◆環境共生学類 松林 圭 講師(昆虫生態学研究室)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/26945.html
◆環境共生学類 松本圭司 講師(昆虫生理生態学研究室)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/26946.html
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