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2026.09.03
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デントコーン生産における現場の技術と知見 ―フィールド教育研究センターを支える技師3名のインタビュー

ニュース

NEWS No.82(2026年度)
デントコーン生産における現場の技術と知見 ―フィールド教育研究センターを支える技師3名のインタビュー

今年度、素晴らしい生育と高い収量が期待されている酪農学園大学農場のデントコーン(飼料用トウモロコシ)。
今年の出来栄えや技術的工夫、そして大学農場としての未来像について、長年圃場を熟知する本学技師の川岸氏、今年度よりアドバイザーとして加わった爲国氏、そして今年度から再び圃場を担当する清野氏にお話を伺いました。

技師の川岸氏(左)、爲国氏(中)、清野氏(右)


――今年の出来栄えに関しまして、率直なご意見・ご感想をお聞かせください

川岸氏 作業は例年通り5月の連休明けから始め、全体の流れを変えることはありませんでした。昨年は春先の長雨や夏の猛暑・少雨といった厳しい気候に苦しめられましたが、今年は北海道本来の気候に戻りました。作物の成長に合わせて適度な降雨と穏やかな気温に恵まれたことが、大きな要因だと感じています。栽培方法等については工夫を加えたところもありますが、大きく変えたわけではなく、北海道本来の気候に助けられた側面が大きいと思っています。

川岸氏


清野氏 天候に恵まれて播種(種まき)をスムーズに行えたことに加え、追加で肥料を与える「追肥」のタイミングが非常にうまく噛み合いました。遅すぎても早すぎてもいけない追肥をベストな時期に行えたのは、まさに天候の後押しがあったからこそです。

清野氏


爲国氏 私は今年からこちらに赴任したため、昨年の経緯などがわからない状態でのスタートでした。周囲から話を聞きながら手探りで進めていましたが、やはり昨年の収量が非常に少なかったこともあり、「昨年の不作を繰り返してはならない」という現場の強い危機意識と協力体制が結集した結果だと見ています。私も本学の卒業生ですので、建学の精神である「健土健民」――土が健全であってこそ良い作物が育ち、人も豊かになるという教えが、気候の良さと相まって良い方向へ向かったと感じています。

爲国氏


――新しい施肥の工夫などを今年取り入れる中で、これまでと今年との違いを教えてください

川岸氏 今年はタイミング良く作業を進めることができました。農場では毎年、秋のデントコーン・牧草収穫が終わった後に各圃場の土壌分析を行い、翌年の施肥設計を行っています。ただ、昨年まで在籍していた草地・飼料生産学の教員が退職し、今年は不在であったため、施肥設計が上手くいくかという不安はありました。草地・飼料生産学の教員が10月1日に着任予定ですので、今後は相談しながら進めていく予定ですが、すぐに対応するのは難しいですし、世界情勢的に化学肥料が手に入りにくくなるのではないかという懸念もあり、心配なことは多々あります。


――今年は肥料の量を多くしたのでしょうか

川岸氏 いいえ、肥料を増やしたわけではありません。土壌を分析し、窒素・リン酸・カリウムのバランスを考慮した施肥設計を行っています。特に牛糞尿由来の消化液はカリウムが高いため、畑へ過剰に蓄積すると悪影響を及ぼします。そのため、ただ消化液を散布するのではなく、カリウムの蓄積を防ぎつつ不足しがちな窒素などを補う調整が不可欠です。

消化液の成分は毎年同じというわけではないことから、その都度成分を見ながら調整しています。最近は窒素分が不足傾向にあるため、播種の際に窒素を含む肥料を追加しています。施肥において大事なのは、成分をしっかりと把握し、過不足のないよう調整することです。

また、今年は長年使用してきた粗飼料生産用の機械(ディスクハロー等)を更新し、新しい機械を導入できたことも大きかったと思います。新しい機械を導入すれば、それを学生に見せることができます。学生により良い環境を提供するためにも、今後も段階的な機械更新を考えています。

圃場に育つデントコーン


――栽培においてのポイントはございますでしょうか

爲国氏 今年は、雨が欲しい絶好のタイミングで降ってくれました。本当にタイミングが良かった年です。しかし、毎年このような好条件が続くとは限らないため、備えなければいけません。土自体をよりタフなものに改良していく必要があり、そのためにも土の成分バランスをしっかりと整えていくことが重要になります。


――作業をスムーズに進めるために心がけていること、今回学びになったことを教えてください

清野氏 数年ぶりの播種作業ということもあり、プレッシャーがありましたが、今年の春先から一番強く意識したのは「奇を衒(てら)わない」ことを徹底するということでした。色々なアイデアはありましたが、自分自身を振り返り、やはり基本に立ち返ることが最も大切だと実感しました。

今年は播種作業をすべて私が担当したのですが、本格的に関わるのは6年ぶりだったため、最初は緊張で機械の油圧レバーを握る手が震えるほどでした。それでも、基礎に立ち返って昔教わった通りの手順を一つひとつこなしていくことで、だんだんと自分のペースを取り戻すことができました。


――今回の成果を踏まえて、今後の意気込みを教えてください

川岸氏 生産量を追求しつつ、学生が実習や卒業研究等で積極的に活用できるフィールドを構築していきたいです。教職員と学生が一緒になって話し合い、試行錯誤できる場を作ることこそが、大学農場の本来の役割だと考えています。学生自身が「ここで何かをやりたい!」と思えるようなフィールドづくりを、日々の生産活動と並行して進めていきます。

清野氏 これからの時代、技術革新(シンギュラリティ)に人も備えていく必要があります。今回は新たな試みとして、生成AIを農場の管理に取り入れてみました。AIに土壌条件などを入力して収量予測を行ってみたところ、7月時点で「現物で約5.5トン」という予測値が算出され、実際の収穫量もこの数値に近くなるだろうと見ています。基本をしっかりと守りつつ、こうした新しい技術を取り入れていく先にこそ、現場の進化があると考えています。

爲国氏 今年は「5トン収穫する」という明確な目標を持って臨みました。AIからもそれを後押しする予測が出たので、目標を上回れるのではないかと期待しています。酪農の基本は、自分たちの畑で作った粗飼料を牛におなか一杯食べさせ、良質なミルクを搾ることです。それをいかに実現していくかが我々の課題です。新牛舎も完成しますので、学生が牛を見て「ここの牛は本当に健康だな」と感じてもらえるようなエサづくりに励みたいです。そのためには、皆で手と手を取り合って進んでいかなければならないと思います。


【関連】
◆
酪農学園フィールド教育研究センター
https://www.rakuno.ac.jp/outline/initiatives/farm.html


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