NEWS No.1 (2026年度)
【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第5回共同研究成果発表会」を開催
本学農食環境学群と附属とわの森三愛高等学校との高大一体教育における連携強化を目的とした共同研究成果発表会が、2026年2月24日(火)に開催され、当日は約120名(高校生・大学生・教職員等/オンライン視聴参加17名を含む)が参加しました。
今年度は5件の研究が採択され、生徒たちが様々な角度や観点で取り組んだ研究の成果が発表されましたので、その内容を報告いたします。
司会進行は小糸健太郎農食環境学群長です。

初めに、高大連携事業担当副学長である樋口豪紀副学長より開会の挨拶があり、成果発表会は幕を開けました。

今日は、高大が連携し、科学の面白さや探究の喜びを分かち合ってきた成果を披露する大切な日です。ここまで色々な苦労があったと思いますが、仲間や先生達との対話を繰り返しながら、一歩ずつ積み上げてきた皆さんの頑張りは、本当に素晴らしいものです。
皆さんの多様な研究は、「農・食・環境・生命」のつながりを大切にする学園の精神とも響き合っています。今日の発表が、皆さんの未来を照らす自信や、次の一歩への刺激になることを願っています。ご指導くださった先生方にも、改めて深く感謝申し上げます。
研究概要と発表の様子は次のとおりです(発表順)。
【1】(RGU)循環農学類×(TOWA)普通科特進GROW-UPコース
●循環農学類:薦田優香教授(植物病理学研究室)
附属高校普通科特進GROW-UPコース長:星野信隆教諭
普通科特進GROW-UPコース1年:加賀谷小妃・久保木基・西村恵茉・沼田彩花
2年:佐藤鈴音・有北知充
研究課題:圃場に生息する土壌線虫と土壌pHとの関係について
研究目的:これまでの研究により、 Caenorhabditis elegans が酸性溶液に誘引される可能性が示唆されている。本研究では、線虫の生活環境である土壌においても、酸性条件下で線虫個体数が増加するかどうかを明らかにすることを目的とした。そのため、圃場から採取した土壌を用いて線虫個体数および土壌pHを測定し、両者の関係性を検討した。
研究概要: 酪農学園フィールド教育センター作物生産ステーションにおいて、栽培作物7種類について、調査圃場9箇所で調査を行い、各圃場3反復の合計27検体を採取し、それぞれの土壌中から線虫を分離した。分離した線虫について、非植物寄生性線虫と植物寄生線虫の個体数を計測するとともに、各検体のpHを測定し、線虫の個体数と土壌pHの関係を調べた。

研究結果:土壌線虫の個体数分布と土壌pH との間に明確な相関関係は認められず、線虫分布にはpH以外の環境要因が関与している可能性が示唆された。また、高校圃場と大学圃場は道路によって隔てられており、高校圃場の土壌からは寄生性線虫は検出されなかった。このことから、圃場間の分断が寄生性線虫の移動を抑制している可能性が考えられるが、人為的な持ち込みの可能性も否定できないため、管理および作業時の取扱いには留意が必要である。さらに、調査を行った圃場の中には、線虫忌避物質を分泌するアスパラガスを栽培している場所もあったことからか、本研究においても寄生性線虫は確認されなかった。一方で非寄生性線虫は検出されたことから、忌避物質の作用の選択性については今後の検討課題である。
【2】(RGU)循環農学類×(TOWA)アグリクリエイト科機農コース
●循環農学類:菊佳男教授(畜産衛生学研究室)
附属高校アグリクリエイト科機農コース(附属高校農場長):伊藤有輝教諭
アグリクリエイト科機農コース1年1組26名(発表者:河合萌夏・菅野純夢)
発表課題:選択的乾乳期治療による抗菌薬使用量低減の可能性
研究目的:乾乳前の乳房の健康状態を指標とした選択的乾乳期治療(SDCT)の有効性を検証し、抗菌薬使用量の削減効果と乳頭内部シール剤の有用性・安全性を臨床的に評価することを目的とした。あわせて、生徒たちが本研究を通じて薬剤耐性(AMR)問題への理解を深め、科学的根拠に基づく酪農経営を考察する力を養うことを目指した。
研究概要:畜産衛生学研究室と附属とわの森三愛高校機農コースが連携し、乳房の健康状態を指標とした選択的乾乳期治療(SDCT)に関する研究を実施した。乾乳時に、乳頭内部シール剤のみを用いる方法と従来の乾乳用軟膏を用いる方法を分房単位で無作為に比較した。乾乳前後には体細胞数測定や細菌検査、PLテスト等を行い、臨床型乳房炎の発生状況やシール剤の状態について評価した。あわせて、講義と実習を組み合わせた「理論と臨床を統合した教育」を実践した。

研究結果:SDCTの導入により、乾乳期における抗菌薬の使用量を大幅に削減できた。分娩後の体細胞数推移や乳房炎発生状況については両群で差は認められず、本手法の有効性と安全性が確認された。また、乳頭内部シール剤の状態にも問題は認められず、資材の信頼性が示された。さらに、生徒たちは本研究を通じてAMR対策の重要性や基準作りへの理解を深め、学問への関心と将来への意欲を高めた。
【3】(RGU)食と健康学類×(TOWA)普通科フードクリエイトコース
●食と健康学類:阿部茂教授(農産資源科学研究室)
附属高校普通科フードクリエイトコース長:山下美登里教諭
普通科フードクリエイトコース2年:佐藤えれな・門戸穏空・澁谷結羽・江口日葵
酪農学園大学:藤井葵・吉田唯・名取悠人
発表課題:バニラビーンズの安定生産、品質向上に関する研究
研究目的:附属とわの森三愛高校で栽培を開始したバニラビーンズについて、高大連携による有機的な取り組みを通じて、安定生産・品質向上に向けた試験研究を行う。
研究概要:包括連携協定を締結している石屋製菓株式会社との取り組みの一環として、バニラビーンズプロジェクトが始動しており、附属とわの森三愛高校の圃場で、北海道の高校としては初となるバニラビーンズ栽培が開始された。バニラビーンズは収穫後、複数の工程を経て完成品となるが、その工程の多くが経験に依存している部分が多く、品質の安定化が難しいとされている。本研究では、生産されたバニラを用いて製造条件の検討を行い、高品質なバニラビーンズの製造条件を確立することを目指す。

研究結果:附属とわの森三愛高校では、2025年5月からバニラについて学び、「株式会社北海道150年ファーム」より栽培ノウハウに関する指導を受けてバニラ栽培を開始し、高校内のビニールハウスに11鉢を導入した。メリポナ蜂による天然受粉では受粉率が約1%であったのに対し、手作業による受粉では30%以上まで向上した。9月には酪農学園大学において、生バニラビーンズのキュアリング(加工処理)を実施した。専門家による試作品と海外産との比較・評価では、バニリン量は多いものの、海外産の方が高い評価となった。この理由については、海外産は天然の様々な要因によって風味が複雑になるが、試作品は乾燥機を用いたことで複雑な反応が起こらず、単調な香りになったと推察した。また、大学においてGC-MS分析を行ったところ、試作品はバニリン量が多い一方で、刺激臭が強く、重厚な香気成分が少ない傾向にあることがわかった。なお、熟成温度は65℃付近が適当と判断した。乾燥試験では水分減少のデータが得られたが、水分透過性包装による明確な効果は認められなかった。
【4】(RGU)食と健康学類×(TOWA)アグリクリエイト科機農コース
●食と健康学類:大谷克城教授(臨床栄養学研究室)
附属高校アグリクリエイト科機農コース長:尾﨑仁教諭
アグリクリエイト科機農コース2年(農業クラブ経営班):梅原一晟・栗本唯仁・佐藤悠斗
発表課題: 農作物内の抗酸化物質に関する研究(2024年度からの継続研究)
研究目的: 抗酸化力の高いベリー類に加熱や発酵などの加工を施した際に、抗酸化力がどのように変化するかを明らかにする。
研究概要:アロニア・ハスカップ・ラズベリーを用い、素材に付着した植物性乳酸菌によるザワークラウト発酵と、米麹を用いた甘酒発酵を実施した。発酵期間中に経時的にサンプリングを行い、pHおよび糖度を測定するとともに、フリーズドライ後に溶媒抽出を行い、総ポリフェノール濃度を測定することにより抗酸化力の推移を検討した。また、甘酒発酵では3つの温度条件で実施することとし、加工方法や発酵条件が抗酸化力に与える影響を比較検討した。

研究結果:ザワークラウト発酵では糖度の上昇が確認された。また、甘酒発酵では総ポリフェノール濃度の大きな低下は見られなかった。アロニアではわずかな減少が見られたものの高い値を維持し、ハスカップとラズベリーでも総ポリフェノール濃度はほぼ保持された。これらの結果から、ベリー類の抗酸化力は発酵や加熱によって大きく損なわれず、加工後も抗酸化力を保ちやすく、酸味の強い品種であっても発酵加工により利用価値向上が期待できることが示された。
【5】(RGU)環境共生学類×(TOWA)普通科総合進学コース
●環境共生学類:松林圭講師(昆虫生態学研究室)
附属高校普通科トップアスリート健康コース:吉川明花教諭
普通科総合進学コース1年(生物同好会):山田湊太・石森鼓太郎・松崎颯太・平川貴爽・滝吉蓮・小山智己・佐藤汰祐
発表課題: 石狩地方において外来水生動物が現地在来種に与える影響評価
研究目的: 北海道石狩地方において水生動物の分布調査を行い、外来の水生動物が現地在来水生生物に与える影響を明らかにする。
研究概要:外来生物とは、本来の生息地域外から持ち込まれた生物を指し、移入先で現地生態系にさまざまな影響を与えることが知られている。石狩地方では、この50年ほどの間に、ブラウントラウト、アメリカナマズ、コクチモーリー、ライギョ、グッピーなどの外来魚が持ち込まれて定着しており、アメリカザリガニや貝類についても複数種の定着が報告されている。これらの外来生物は地域の生物多様性に大きな影響を及ぼすと考えられるが、北海道においてはその具体的な調査が十分に行われてこなかった。本研究では、石狩川水系を中心に水生生物の掬い取り調査および釣り調査を実施し、生息する生物種のリストを作成することで、外来生物が確認される場所と確認されない場所の多様性の比較を行い、どの在来種がどのような影響を受けているかを検証する。

研究結果:北海道でも特に人口が集中する石狩地方において、河川の上流から下流域に生息する外来水生生物のリストおよび分布図を作成した。これらの外来生物については、すでにある程度札幌市で目撃例が報告されていたものの、体系的な調査はこれまでほとんど行われていなかった。本研究により2025年度時点の分布状況を記録したことで、今後の外来水生生物および在来生物の変遷を追跡するための一つの基礎資料を得ることができた。これらの成果は、外来生物が在来生物にどのような影響を与えるかを解明するうえで、保全生態学上の大きな課題につながる成果である。
各グループからの発表終了後に、附属とわの森三愛高等学校 石川和哉校長より、本日の感想を含めたご挨拶をいただきました。

本日の発表会で示された研究課題は、土壌の線虫に関する土の栄養管理から牛の健康、バニラビーンズの栽培、さらには人間の健康や外来生物による生態系への影響まで、極めて多岐にわたるものでした。これら全てに共通する「生きる」というテーマは、本学園が教育の柱として大切にしている精神そのものです。大学と附属高校が連携し、研究を「横軸」でつなぐ機会を得られたことは、教育機関として非常に大きな意義があると感じています。研究の過程は決して平坦ではなく、成果が出るまでには今後10年、20年という月日を要するものもあるでしょう。しかし、その「探究の種」を絶やさず、先輩から同僚、そして後輩へと学びを継承していくことこそが重要です。また、本日の質疑応答において、大学の先生方から色々と質問を受けました。そこで答えに窮したとしても、それは決して恥ずべきことではありません。答えられない経験こそが、自分には無かった新しい視点や気づきを得るための「成長の種」となります。こうした対話のサイクルこそが学びの本質であり、今回の経験を糧に、皆さんがさらに大きく飛躍することを確信しています。そういった意味では、次年度以降は、もっと鋭い質問をいただいても良いと感じています。
最後になりますが、このような貴重な学びの場を提供していただいた皆様に、高校長として心より感謝申し上げます。今後とも、この素晴らしい共同研究の歩みが末永く続くことを願っております。
最後に、酪農学園大学 岩野英知学長より、閉会のご挨拶をいただき、2025年度 第5回共同研究成果発表会は閉会となりました。

本日の発表会では、大勢の前で緊張しながらも堂々と成果を披露する皆さんの姿が非常に印象的でした。私も今この場に立ち、皆さんを前にして、その緊張感を感じているところです。特にバニラビーンズの研究で見られたように、高校生の瑞々しい着眼点と大学生や教員、また、専門家による科学的な分析データが組み合わさることで、研究は一気に深みを増していきます。ここで皆さんにお伝えしたいのは、研究は決して一人で完結するものではないということです。自分が全てを知らなくても、「これが知りたい」という熱意を持ち、誰かと協力して進めていくプロセスこそが、最も貴重な学びとなります。大学進学後の卒業論文や研究発表、その先の社会においては、教科書通りの正解がある問いばかりではありません。自ら現場の課題を見つけ出し、周囲と手を取り合って解決策を模索する力こそが、皆さんの人生を切り拓く武器となります。今回の共同研究を通じて得た経験は、社会に出てからも必ず役に立つ大きな財産となります。この成果に自信を持ち、学びを止めることなく次なるステップへと繋げてください。
今後は「サイエンスファーム」など、また別の場所でさらに新しい結果や考察を披露してくれる機会に立ち会えることを楽しみにしています。本日は素晴らしい発表をありがとうございました。
最後に、発表を終えた生徒たちの素敵な表情をご覧ください!



以上
【参考】
◇2025.04.15【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第4回共同研究成果発表会」を開催
https://www.rakuno.ac.jp/37229.html
◇2024.03.23【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第3回共同研究成果発表会」を開催
https://www.rakuno.ac.jp/32265.html
◇2023.03.16農食環境学群×附属とわの森三愛高校 「第2回高大共同研究成果発表会」を開催
https://www.rakuno.ac.jp/26601.html
◇2022.03.23本学農食環境学群と附属とわの森三愛高校との共同研究成果発表会を開催
https://www.rakuno.ac.jp/20825.html
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