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2026.07.08
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農環境情報学類セミナー「農と環境のつながりを考える」(第2回)を開催しました

ニュース

NEWS No.56(2026年度)
農環境情報学類セミナー「農と環境のつながりを考える」(第2回)を開催しました

この度、本学類では、農と環境のつながりを広く社会へ発信し共に考える取り組みとして、紀伊國屋書店様のご協力を賜り、市民向けセミナー「農と環境のつながりを考える」を企画いたしました。その第2回となる【食と農の「いま」と「これから」】が、2026年7月4日(土)、紀伊國屋書店札幌本店 1階インナーガーデンにて開催されました。

セミナーの様子

2026年4月に新設された農環境情報学類は、農業や環境分野において、ドローンをはじめとする情報技術や社会調査手法を駆使して情報を収集・分析し、地域を幅広い視点で捉えて課題を「可視化」し、解決に向けた取り組みを推進する人材の育成を目指しています。

当日は市民の皆さまや本学関係者が来場。街中のオープンスペースという開放的かつ地域に開かれた雰囲気の中、米価の価格上昇の背景や今後の動向、そしてドローンやAIを用いたスマート農業における取り組みについて活発な発信が行われました。




【講演①】「令和の米騒動」とコメの「これから」

講師:農環境情報学類 学類長 教授 相原晴伴

相原晴伴教授

相原教授はまず、2024年から発生した米価高騰、いわゆる「令和の米騒動」のメカニズムについて言及しました。当時流通していた2023年産米の価格が急騰した最大の理由は、生産量が需要量を下回ったというシンプルな構図にあると指摘。その根底には、政府が減反政策において生産見通しを絞りすぎたという背景があるとの見解を示しています。さらに、価格急騰によって生じた、新米が出る前の在庫不足感や猛暑による品質低下への懸念から生じた消費者の不安感が買いだめを引き起こし、その後も市場のパニックに拍車をかけたのではないかと分析しています。

また、流通経路も価格上昇に拍車をかけた一因であると相原教授は説明します。米の流通には事前の契約が必要な農協ルートと、それ以外の商系業者による流通ルートがありますが、いざ米が不足し始めると、高い価格を出せば仕入れが可能な商系ルートに卸売業者が殺到し、激しい仕入れ競争が発生したと解説。同時に、農協や商系業者が生産者から米を集荷する段階でも競争が起きたことで、結果として米価が大きく引き上げられることになったとみています。

現在の減反政策については、2018年に名目上廃止され、現在は各都道府県に強制力のない「生産量の目安」が示されるのみとなっている現状に触れました。
2024年産米においては秋田県や新潟県がこの目安を大幅に超えて生産していたため、皮肉にも一層の米不足が防がれた側面があるとしながらも、現在の目安制度は事実上役割を果たしておらず、秋の収穫まで生産量が読めない「博打」のような状態になっていると危惧を示しています。こうした不安定な状況を是正するため、将来的には政府が適切に需給をコントロールすべきだとの私見を述べています。

また米価の変動と農家の経営リスクについても深い懸念が示されました。相原教授の指摘によると、米価が低迷した2021年には農家が自身の給料を十分に賄えないほどの赤字に陥った一方で、2024年の価格高騰により、ようやく機械の更新などが可能になる水準の所得が確保されたのが実態であるといいます。
しかし、続く2025年産米も目安を超過したことで、現在は一転して供給過剰の傾向にあり、今後は米価が再び下落する可能性が高いと予測。価格が元の水準に戻ってしまえば農家の収入が減り、担い手不足がさらに加速する難しい状況にあると訴えました。

最後に相原教授は、これからの米づくりに向けた提言として、急激な減反廃止は大暴落を招くため現実的ではないとし、ギリギリではなくゆとりを持った生産体制を敷いた上で、余剰分は政府が買い入れるなどのセーフティネットが必要であると論じました。高すぎる米価は消費者の米離れを招く一方、低すぎる米価では農家が生活できないため、双方が納得できる適正価格の形成が重要であると強調。同時に、農家側の努力としてスマート農業などを導入し、生産コストそのものを引き下げていくことが今後の鍵になるのではないかと結びました。



【講演②】数える、見つける、地図にする ~ドローンとAIのフィールド活用のこれから~

講師:農環境情報学類 准教授 小川健太

小川健太准教授

セミナーの後半では小川准教授が登壇し、生産現場の課題解決や環境保全に直結するドローンおよびAI(画像解析)技術の最新の研究事例について詳しく解説を行いました。

小川准教授はまず、スマート農業におけるドローンの活用について、農作物の品質向上や収穫の最適化に大きく貢献できる可能性を言及しました。
例えば、お米におけるタンパク含有率は低いと味がおいしくなると言われますが、ドローンで農地を撮影することでその写真データからタンパク質含有率を把握することができます。そしてデータを次年度の「おいしいお米づくり」に向けた施肥計画などに活かせる仕組みを紹介。また、小麦の生育状況データから最適な収穫のタイミングや場所を判別する取り組みや、飼料用トウモロコシや牧草の栽培において高さを含む3次元データを取得することで、秋の収穫量を事前に精度高く推定できる事例などを説明しています。

さらにAIによる画像解析を組み合わせた技術として、牧草地に生える雑草「ギシギシ」の防除対策を挙げました。ドローンによるマッピングで雑草の多い場所を特定し、必要な部分にだけ農薬をピンポイントで散布することで実際に雑草を減少させ、環境負荷やコストを抑えた効率的な防除を実現した実績を報告しています。また、小川准教授が現在特に力を入れている研究として、近年の猛暑で増加している馬鈴薯(ジャガイモ)の病害対策を紹介しました。ウイルスに感染したジャガイモは人体への害はないものの、サイズが小さくなり農家の死活問題となるため、岩見沢市の農場を対象に非常に緻密なドローン撮影を行い、AIを用いて病害が疑われる株を早期にマーキングする取り組みについて話し、それぞれの生産現場のリアルな課題に寄り添った研究の重要性を訴えました。

こうしたドローン技術は、人間が立ち入りにくい場所での環境モニタリングや野生動物の調査、そして「数えること」の自動化にも大いに応用できると小川准教授は指摘します。その代表例として、美唄市の宮島沼に飛来する数万羽のマガン(水鳥)の調査を挙げました。これまで鳥の専門家が双眼鏡で行っていたカウント作業の人材不足が課題となっていた背景に触れつつ、マガンは夜間にしか沼に集まらず暗所での撮影が困難という壁があったものの、カメラの撮影方法を工夫し、AIを用いた点状の個体カウント技術によって観測に成功したプロセスを明かしました。

この実績を機に多方面から相談が寄せられるようになったとし、えりも岬におけるアザラシの個体数調査への応用事例も紹介しました。アザラシは準絶滅危惧種として保護すべき対象である一方、深刻な漁業被害ももたらしているため、ドローンで正確な個数をカウントすることは保護と漁業の両立を図るための重要なデータになるとその意義を述べています。

このほかにも、サーモグラフィーを用いた夜間の野生動物の検知や、防災分野への応用として日高町で実施した発煙筒の実証実験を紹介。ドローンを用いて煙の上がった位置を迅速に見つけることで山火事の初期モニタリングにも活用できるとの展望を示し、一次産業のみならず地域社会の安心・安全を支える技術としてドローンとAIの可能性を締めくくりました。

【質疑応答】
講演終了後の質問タイムでは、会場の参加者から講演内容に関する多数の質問をいただきました。それぞれの質問において先生方と質問者との間で活発なやりとりが行われ、無事セミナーが終了致しました。


【関連】
◆農環境情報学類
https://www.rakuno.ac.jp/academics/department/agri-info.html
◆農環境情報学類 相原 晴伴 教授(農畜産物市場論研究室)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/41536.html
◆農環境情報学類 小川 健太 准教授(空間情報応用研究室)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/41553.html
◆紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/
◆第1回の様子 農環境情報学類セミナー「農と環境のつながりを考える」(第1回)を開催しました
https://www.rakuno.ac.jp/47483.html



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