新しい牛舎で働く農場技師の役割 データに基づく誰でもみれる牛群管理の実現へ ― SHIBOれ! ― (FEDREC 酪農ステーション代表技師 稲森 剛)
NEWS No.77(2026年度)
新しい牛舎で働く農場技師の役割 データに基づく誰でもみれる牛群管理の実現へ ― SHIBOれ! ―
(FEDREC 酪農ステーション代表技師 稲森 剛)
本学では、教育・研究・地域連携のさらなる高度化を目指し、「農場Renewプロジェクト」として新牛舎の整備を進めております。新牛舎に最先端のロボット技術やICT機器を導入するなど、本プロジェクトではこれからの酪農に求められる新しい農場づくりに取り組んでいます。ここでは農場技師の視点から、新牛舎に期待される点と本学の取組みについてご紹介いたします。

現場の立場からは、自動化技術の導入によって効率的かつ質の高い飼養管理が実現できること、そして教育・研究の場としてより実践的に活用されることを大いに期待しています。農場では、搾乳や給餌、除糞などの牛舎管理作業の多くを農場スタッフが担っています。しかし新牛舎では、除糞などの単純作業に加え、搾乳や給餌、哺乳といった均一性が求められる作業も自動化されます。これにより、作業に拘束される時間が減少し、人には身体的・精神的な余裕が生まれます。また乳牛にとっても、毎日同じサイクルで管理される安定した飼養環境の実現につながると考えています。

さらに、自動搾乳ロボットや各種センサーによって、牛の行動や健康状態に関するさまざまなデータをリアルタイムで取得できるようになります。これらのデータを活用することこそ、新牛舎の大きな価値の一つです。
現在の生産現場では、牛の状態把握や管理判断において、経験豊富なベテラン職員の知識や勘に頼る場面が少なくありません。熟練技術者の観察力や判断力は極めて重要ですが、その技術を次世代へ継承することは容易ではありません。
そこで、客観的なデータを「見える化」し、判断基準を標準化することで、経験年数に関わらず、新人からベテランまでが共通の指標に基づいて牛群管理を行える体制の構築を目指したいと考えています。

私はこれを「SHIBOれ!」と呼んでいます。
S:See(見る)
センサーやロボットから得られるデータを活用し、牛の状態を正確に把握する。
H:Hear(聞く)
データが示す牛からのサインに耳を傾け、健康や行動の変化を見逃さない。
I:Interpret(解釈する)
収集したデータを分析し、その意味を理解して管理判断につなげる。
B:Benchmark(比較・評価する)
過去データや目標値、牛群全体の状況と比較しながら客観的に評価する。
O:Optimize(最適化する)
得られた知見をもとに飼養管理を改善し、生産性とアニマルウェルフェアの向上を図る。
「SHIBOれ!」とは、牛を感覚だけで管理するのではなく、データに基づいて『見る・聞く・解釈する・また、現場で得られるデータを教育へ還元することも重要な役割です。学生が実際の牛群管理に触れながらデータ解析を学び、その結果を現場改善につなげる経験は、これからの酪農業界を支える人材育成に大きく貢献するでしょう。現場としても、日々蓄積されるデータを学生や教員と共有し、教育・研究活動に積極的に協力していきたいと考えています。
さらに新牛舎は、新たな技術や管理手法を検証する実証フィールドとしても大きな可能性を持っています。牛の健康管理、繁殖成績の向上、疾病の早期発見、アニマルウェルフェアの向上など、多くの課題に対してデータを活用した研究が進むことを期待しています。
農場技師は日々の乳生産を支える管理業務を担うとともに、教育・研究活動が円滑に行われるフィールドを提供し、その環境を維持・改善していく役割を担っています。

新牛舎は大学の施設にとどまらず、地域や酪農業界へ新しい酪農モデルを発信する拠点となる可能性を持っています。『データ』と『現場』、『分析』と『経験・技術』を融合させながら、誰もが同じ基準で牛を見て、判断し、管理できる農場づくりに取り組み、未来の酪農を支えるモデル農場の実現に貢献していきたいと考えています。

【関連】
◆酪農学園フィールド教育研究センター
https://www.rakuno.ac.jp/outline/initiatives/farm.html
◆新牛舎特設ページ 農場・Renewプロジェクト ― 酪農を『楽農』の時代へ―
https://www.rakuno.ac.jp/43009.html
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