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「人と動物が共生できる世界」を目指して
「人と動物が共生できる世界」を目指して
農食環境学群 環境共生学類 2年 家入 萌さん

自然に恵まれた環境で育って
今回取材を受けてくれたのは、どこか控えめでありながら、しっかりとした意志を持ち、清らかな佇まいの家入萌(いえいり もえ)さん、19歳。家入さんは南富良野町の出身で、高校生までを富良野市で過ごした。ご存じの通り、富良野は自然に恵まれた環境で、彼女も小さな頃からキツネやエゾシカ、様々な野鳥を見て、自然に親しみながら育ったということだ。父親も自然に関心があり、一緒に黒岳や旭岳を登った。
そんな中で、家入さんが環境の変化を感じたのは、中学3年生の冬。人里には来ないはずの「クマゲラ(キツツキ科クマゲラ属に分類される鳥類)」が家の近くに現れたのだ。その頃から少しずつ「環境問題」や「人と動物の共生」について考えるようになっていった。
酪農学園大学の授業が楽しい!
北海道で「環境」に関する勉強がしたいと調べて選択したのが酪農学園大学だった。現在環境共生学類2年生。履修している授業は、生物の進化に関する事等、基礎的な授業の他、実習がある。特に今面白いと感じているのは、毎週金曜日の実習。印象に残っているものとして熊の生息調査の話をしてくれた。「ヘア・トラップ」という熊の毛を採取する仕掛けを設置し調査する体験をし、熊の行動範囲について学んだ。採取した毛のDNAを検査することで個体識別ができるそう。2年生にして、このような専門的な研究に触れられることに驚いたが、家入さん自身もこの大学だからこそ行える実習が多いと感じているということ。また、洞爺湖でのエゾシカ実習についても「白鳥がたくさんいて!」と嬉しそうに話してくれた。彼女が話す言葉の端々や表情から〝自然を愛する気持ち〟が伝わってくる。
更に受講している授業についても、教授達が面白いので「授業が楽しい」と笑顔。彼女の意欲の高さも当然あると思うが、学生自身が「楽しい」と感じる授業を展開している 教授陣が揃っているのは、学生にとってなんと幸せな事だろう。


野生動物との共存支援サークルえれふぁんと
また、家入さんは大学の公認サークルである「野生動物との共存支援サークルえれふぁんと」にも所属している。このサークルでは、ケニアのビリカニ村で作られたシャツや小物を大学の学園祭である白樺祭で販売する活動を行っているが、元々この村は野生動物との共存生活の中で農業被害や生活用水の確保困難に悩んでいた。そこでアフリカでゾウの研究を行っていた日本人研究者が村の支援活動を始め、この研究者が主催する教育エコツアーに参加した学生が北海道でもできることはないかと立ち上げたサークルである。お金や物を寄付するという単発的な支援ではなく、長期にわたって継続できる自立支援を行うことが目的であり、今年からはアフリカ・アジアゾウに関わる野生動物や文化などの勉強もし、発信している。8月12日(ゾウの日)には子どもを対象とした催しを札幌の円山動物園で開催予定ということだ。
「環境問題」への取り組みについて
日本はヨーロッパなどの諸外国に比べて、環境問題への取り組みが遅れている上、政治や経済に対する不安を抱える人々が増える中、正直「環境問題どころではない」という人々が多いように感じられる。そんな中でも、家入さんのように、動物(他者)や未来の地球のことを考え「自分ごと」としてこの問題に向き合うための〝源〟となるものについて尋ねてみた。
すると、まずは家入さん自身のように「体験」して「感じる」ことだと言う。最初から「自然を守る」など、そういった話にはならない。自然に興味を持ち、好きになること、身をもって感じることがまず第一歩。先に紹介したサークル活動などを通して、これからの未来を担う子ども達に、小さな頃から環境の大切さを伝えていきたいと言う。そして更に、「多様な動物達が生存し、自然という環境があるからこそ人間は生きている。一つが崩れてしまったら、どんどんそのバランスを失ってしまう」と思っていると、ひとつひとつ言葉を噛み締めながら慎重に語った。 また、日本と環境問題への取り組みが活発な諸外国とを比較した場合、そもそも「意識」をどこに向けているかが違っているのかもしれないと言い、その取り組み方を知るために、海外にも興味があるとのことだ。
若き19歳からの学び
世界を見渡すと、明らかな地球の異変を誰もが感じる中でも、戦争は止むことなく、依然として自己(自国)の利益のみを追求する大人が溢れている。地球の危機が差し迫っているにも関わらず・・・。家入さんの話を聞き、私たちは仮初の豊かさの追求のために地球の「バランス」や「調和」ということから目を背け続けてきたように改めて感じた。森で暮らす動植物達が、多くを求めず、ただそこで美しく力強く共に生きているように、私たち人間も同じ地球に暮らす者として、その在り方を問う時がきている。
家入さんに、大学敷地内の「野幌原生林」を案内してもらい、少しの時間そこを二人で歩いた。木々の匂いや木漏れ日が心地よく清々しい。歩きながら、彼女はこんなエピソードを語った。「疲れたな〜と感じる時、友達と『今日疲れたね。森、歩こう』と言い合うんです」と。家入さんの発する言葉や佇まいからは何か達観した優しさや清らかさを感ぜずにはいられなかったが、この森を一緒に歩き、「あぁ、これは自然に抱かれている人が持つ美しさなのだ」と気がついた。
リードする人に
今後はやはり「環境に関する仕事」がしたいという家入さん。また、「誰かをリードできる存在になりたい」とも語った。家入さんの地球への愛や優しさを以て、多くの人々へ「地球の生態系の現状」、「調和」や「バランス」の大切さを伝えていって欲しい。そしてまた、人々がその意識を持って、多くの物を与えてくれる美しい地球が存続できるよう、導いてくれることを願う。
(月刊ISM2025年9・10月号掲載記事をもとに制作)
【参考】関連ページ
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年8月)
「経験と出会いに感謝!「人の心」がわかる農業高校教師を目指して奮闘中!」
農食環境学群 循環農学類 2年 村井 聡一郎さん
https://www.rakuno.ac.jp/42959.html
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年7月)
「競走馬の安楽死を知って獣医の道を選択した」
獣医学群 獣医学類 3年 宇髙 瑠爽さん
https://www.rakuno.ac.jp/43968.html
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年6月)
「食と健康で人を笑顔にしたい」
農食環境学群 食と健康学類 管理栄養士コース 3年 和美 帆香さん
https://www.rakuno.ac.jp/43977.html
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