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野生動物生態研究会 〜野幌の身近な自然に目を向けて〜
野生動物生態研究会 〜野幌の身近な自然に目を向けて〜
野生動物生態研究会 (代表) 嘉島 治久さん、(4年) 疋田 智さん
今号から、特集として酪農学園大学の特色ある「部活動」の紹介も行っていく。第一弾は「野生動物生態研究会」に所属する嘉島治久さん(代表・環境共生学類3年生)、疋田智さん(環境共生学類4年生)に話を伺った。

「野生動物生態研究会」の発足と活動内容
「野生動物生態研究会」は、1977年、様々な動植物が生息し、都市近郊にしては珍しい自然が多くある野幌森林公園の観測を目的とし発足した。現在は58名の部員が所属し、①観察会(主に野幌森林公園に生息する動植物や昆虫などを観察する)②遠征(美唄市の宮島沼や、大雪山旭岳、道北のサロベツなど、道内各地幅広い地域の自然公園などを巡り、観測を行う。過去には沖縄で観測を行ったこともあるとのこと。)③勉強会(各々が行った観測について、部内でフィードバックをし、知識を共有する)の3つの活動を主に行っている。
〜身近な自然に目を向けて〜 観測から得るもの
観測の目的や対象は人によってそれぞれだが、代表の嘉島さんは元々食べられる野菜や雑草に興味があったそうで、大学に入学し、より植物に興味を持ち始め、それがきっかけで入部したそう。部での活動の中で、目を凝らして小さな雑草の観測を行ったり、進化の過程で「理由」があって特色ある形へと変化してきた植物などを観察したりするうちに、自身の生活の中でも、周りを見る目や、モノの考え方に変化があったと語る。物事を広く俯瞰し捉え、起こっている事象の理由を掘り下げながら、様々な選択肢を持ち、考えるようになったという。
また、現在4年生の疋田さんは、大学生活の最後に何か打ち込めるものをと思い、今年入部した。これまで一人で観察することが多かったが、今は他の人と一緒に観察し、教えたりガイドしたりする面白さを感じていると話す。この辺りの草花や昆虫についてはほぼ熟知しているという疋田さんと、雑草に詳しい嘉島さんに筆者もガイドをしてもらった。知識が豊富な彼らに説明を受けながら足を進めると、普段見慣れているような草むらの観察も一気に楽しく感じた。ただの草むらと思っていたものも無数の命。一つ一つエピソードがある。
貴重な環境の中に存在する「酪農学園大学」
酪農学園大学には敷地内に大きな「森」があり、他大学と比べても、こういった大学は稀ではないだろうか。時々絶滅危惧種と言われる鳥が飛来したりすることもあるそうだ。この土地の性質を生かし、OECM(国立公園などの保護地域ではないものの、生物多様性の保全に資する地域)への登録を目指し、部では今年から「バイオブリッツ」(生き物を調査し記録する活動)というプロジェクトが発足した。現在大学校内の隅々まで調査を行っている。要はこの場所が、生き物の生息地として優秀であり、守っていく価値がある場所として認められるよう、調査を先んじて行っているということだ。この活動に熱が入っていると語る疋田さんは、部員をはじめ学生たちにとって、自分達が住む身近な地域の調査を通して、その楽しさを知るきっかけになればという。

「モニタリングサイト1000」に関する活動
「モニタリングサイト1000」とは、環境省が日本の多様な生態系の劣化をいち早くとらえ、適切にそれらの保全へつなげることを目的として2003年から始めた事業である。全国に1000以上の調査サイトを設置し、モニタリングを継続している。これに関連し、酪農学園大学では、主に野幌森林公園に生息する野鳥のモニタリング依頼を受け、野生動物生態研究会でこの観測を行っている。単独で研究をしても発見できないことが、広い地域で観測を行い、情報を共有することで、新たな事実が判明することがある。こういったことに貢献できるというのはなんとも嬉しいと2人は話す。
活動を通して願うこと
2人に今後の目標や願望について聞いてみた。
・嘉島さん 植物はその辺によくあるものであるため、鳥や哺乳類などの動物に比べ、あまり興味を持ってくれる人がいない。少しでも興味を持ってくれる人を増やしていきたい。そういうことを目的とした対外的な活動についても今後考えてみたいと語った。
・疋田さん 見たり感じたりして生き物と触れ合いながら、理解を深められるような環境教育的な活動を展開できればと考えている。この大学では校舎のすぐ裏地の森で鳥や虫、植物を観測できる。ライト層でも参加しやすい部の活動を通して、少しでも多くの学生に、まずは生き物を調べて観察する力をつけて欲しいと願っているとのこと。
先にも述べたが、当たり前にあり過ぎて、気にも止めなかった「雑草」や「昆虫」が、彼らと一緒に観察をしてみると、急に煌めきだし、筆者自身も雑草や昆虫と同じ「自然」の一部であるということを感じた。今後は是非、学内だけではなく、多くの人々に向け彼らの思いを伝えながら、活動の幅を広げていって欲しいと願わずにはいられない取材となった。
学内の森の動植物たち
ここからは彼らと一緒に観察したものを一部紹介したい。
・タチカタバミ(ハート形の葉が特徴。黄色い花をつける)

・スベリヒユ(食べられる草でヨーロッパなどでは赤い茎の部分をサラダにして食べる

・ゲンノショウコ(健胃、整腸作用がある薬草)

・ノラニンジン(これを人間が品種改良して、現在の食用の人参ができたそう)

・学内の「成池」。カワセミが巣を作っているのを発見。造成された池ではあるが、頑張って見つけて、ここに来てくれた事が嬉しく感激したと疋田さんが語ってくれた

(月刊ISM2025年11月号掲載記事をもとに制作)
【参考】関連ページ
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年9・10月)
「人と動物が共生できる世界」を目指して
農食環境学群 環境共生学類 2年 家入 萌さん
https://www.rakuno.ac.jp/42987.html
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年8月)
「経験と出会いに感謝!「人の心」がわかる農業高校教師を目指して奮闘中!」
農食環境学群 循環農学類 2年 村井 聡一郎さん
https://www.rakuno.ac.jp/42959.html
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年7月)
「競走馬の安楽死を知って獣医の道を選択した」
獣医学群 獣医学類 3年 宇髙 瑠爽さん
https://www.rakuno.ac.jp/43968.html
◆Featured People ― 学び、挑む、学生たち ―(2025年6月)
「食と健康で人を笑顔にしたい」
農食環境学群 食と健康学類 管理栄養士コース 3年 和美 帆香さん
https://www.rakuno.ac.jp/43977.html
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