NEWS NO.146(2025年度)
フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る③ ~酪農のあり方が変わる~ 先進設備のメリット
前回は、搾乳ロボットをはじめとする先進設備の概要を紹介しました。今回は、それによってどのようなメリットが生まれるのかを具体的にお話しします。
まず一番大きいのは、酪農家の作業負担が大きく減ることです。これまで、搾乳は朝晩2回、100頭規模の酪農家であれば、1回あたり1〜2時間が標準的で、準備や後片付けも含めると1日で3〜4時間を搾乳に費やすのは珍しくありません。それが、搾乳ロボットを導入すれば24時間体制で牛が自ら入って搾られますから、搾乳の作業が不要となって搾乳のために拘束される時間が大幅に減ります。体力的にも時間的にも余裕ができることは間違いありません。空いた時間には、草地管理や繁殖管理、飼料管理、経営の質を高める他の業務に振り向けることができるようになります。これは人手不足が続く現場にとっても、非常に大きい変化といえるでしょう。

次に、牛の健康管理の質が格段に向上するといえます。ロボットは搾乳したミルクから乳質、ホルモン値などを収集しているとともに、赤外線カメラからは体型データなどを収集しており、病気の早期発見につながります。たとえば、ミルクの成分で体細胞数が増えれば炎症のサインですし、また牛の運動量なども把握できるので運動量が減っていれば足や体調の不調を疑うといったことができるようになります。そして何より、これらのデータはスマホやモニターでいつでも確認できるので、問題が大きくなる前に対応できるため、獣医師の費用も軽減できます。人もそうですが、体調不良、病気の前兆をいちはやく発見、対応できたほうが、体にも負担が軽く快方に向かうのが早いことはいうまでもありません。
それともう一点。搾乳ロボットに入ると、後ろ足のひづめのところに水が噴射されて、ひづめをきれいにしてくれるんです。牛は、ひづめの病気が結構多いんですけれども、ひづめの病気の予防にもなりますので、そういう意味でもこのシステムは非常に有効だと思います。
また、「発情」の確認もできるようになり人工授精のタイミングを見極めやすくなることで授精コストの削減にもつながります。妊娠期に入ると数値の上がる「黄体ホルモン」の数値も取得できますので、人工授精後に「妊娠してるね」ってわかるようになります。これまでは経験豊富な酪農家の経験値に頼っていた部分が再現性のあるデータとして見える化され、誰もが活用できるデータとなっていきます。
これらは、教育の面でも非常に重要になってきます。学生は実習の中で感じたこと、判断したこと、考察したことなどがデータで裏付けられることで「自分の観察が正しかった」と自信を持ち、学びの納得性が高まり、知識やノウハウの習得に大きく貢献してくれると考えています。ベテランの教えを、事実として数値で補強できるので、経験と科学の両面から酪農を理解することができるのです。まさに学びの質が向上すると言えます。

さらに、牛を育てるという視点では、自動哺乳システムの導入も大きなメリットを生み出します。子牛それぞれの飲んだ量が詳細にデータ化されてわかりますので子牛の健康状態の把握も容易にできるようになります。飲んだ量が少なければ、すぐに体調不良を疑うことですぐにケアできるようになりますので、それこそ、これまで見落としがちだった小さな異変にも気づいてあげることができます。
この設備は、人はもちろん牛の負担も減らしながら「健やかな牛を育てる」ための仕組みといえ、結果的に経営が安定するという大きなメリットを生み出します。
このように、先進の技術は単なる効率化ではなく、人材育成・経営改善・動物福祉を同時に高める力を持っています。次回は、このプロジェクトが「人にも、牛にも、地球にもやさしい」持続可能な農場へとつながっていく話をしたいと思います。
【参考】関連記事
◆2026.02.06 フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る② ~酪農のあり方が変わる~ 先進設備の導入
https://www.rakuno.ac.jp/43286.html
◆2026.01.30 フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る① ~酪農から楽農へ~ プロジェクトへの思い
https://www.rakuno.ac.jp/43279.html
◆2026.01.14 新牛舎新築工事の進捗状況について(Vol.1)
https://www.rakuno.ac.jp/43075.html
◆[プレスリリース]酪農学園大学が最先端のロボット牛舎を新築 ―学生が未来型酪農を実践的に学べる教育環境を整備―
https://www.rakuno.ac.jp/archives/39600.html
◆酪農学園大学 農環境情報学類 特設サイト
https://shingakunet.com/school/SC000559/rakuno/special/
◆酪農学園大学YouTubeチャンネル「農環境情報学類」Movieプレイリスト
https://www.youtube.com/watch?v=96_fBG3bp9A&list=PLTeyee6_6Hhwgz3tSCknZ-idSyHkESVNU
【参考】関連リンク
◆フィールド教育研究センター
https://www.rakuno.ac.jp/outline/initiatives/farm.html
◆農場・Renewプロジェクト ― 酪農を『楽農』の時代へ―
https://www.rakuno.ac.jp/43009.html
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