NEWS NO.150(2025年度)
フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る④
~人に、牛に、地球にやさしく~農場全体がSDGs
ここまで、先進の設備を中心に導入のメリットを紹介してきましたが、私たちがめざすのは、今、注目されている「SDGs」の視点も含め、計画している農場全体が、この時代にふさわしいものであることです。「人にも、牛にも、地球にもやさしい」、そんな循環型のモデル農場をめざした計画となっています。
まず、環境という視点で、エネルギーの面で要になるのが、放牧地に設置する縦型ソーラーパネルです。一般的な太陽光パネルでは、斜めに配置するので面積をとってしまいますが、今回は縦型とすることで、牛の通行や採食を妨げにくく放牧面積を広く確保することが可能です。すべてとはいきませんが、農場で使用するエネルギーの大部分が、この太陽光パネルで賄えるという試算をしています。これも、大学だから挑戦できる試みといえ、学生たちが、将来、酪農家になることを考える際にも、エネルギーを自前でできるという知識を経験を通して理解してもらえればと考えています。

資源循環の視点で言いますと、「堆肥施設」と「バイオガスプラント」があります。実は、今、土壌が悲鳴を上げています。というのも、糞尿を土に戻すというのも限界があって、土壌が「もう堆肥はいらない」と言っている状況なんですね。そこで「たい肥施設」では、牛の糞尿を固体と液体に分離して固形分は堆肥化、液は浄化して放流可能な水準まで処理して川に流します。実際に分離してみると、ほぼ水分なんです。そうした上で、堆肥は圃場で活用し、やがて作物が飼料となります。
また、工程の中で出るバイオガスは「バイオガスプラント」で発電をすることで場内のエネルギーがここでも活用していきます。大学の農場というひとつの空間の中で「牛から出る糞尿~エネルギー化~土に還し~作物となる」という循環のモデルを体現し、見える化をしていきます。
場内に導入する消化液尿処理施設も、作業負担の軽減と衛生管理の両面で貢献してくれます。通路やそれぞれの区画を清潔に保つことは、蹄病や乳房炎の予防につながりますし抗菌剤の使用機会も抑えられ周辺への臭気対策にもなります。
また、都市近郊に立地する私たちにとって、近隣住民の理解と共感は不可欠であるという話もしましたが、この農場が「未来へのモデル」として多くの方に理解いただけるように、観覧してもらうことも想定して建築をすすめています。具体的には、見学デッキや通路を設置し動線を確保することで、農場に直接、足を踏み入れなくても農場を見渡せるようにしています。それを見た地元の方から「あそこの大学、すごい最先端の農場みたいだよ」ということが評判になるだけでも、これは素晴らしいことだと思っています。牛の頭数における設備の充実も日本の先端を行くものだと思いますので「開かれた農場」として全国の企業や官公庁、教育機関、酪農家の皆さんに観覧していただければと思います。

このように先進の設備を備えた新しい形の農場であることは、豊かな地球環境の保全を考える上でキーワードとなる「再エネ・循環・負荷低減」のいずれにも大きく貢献していくことがおわかりいただけると思います。また、「人」にとっては省力化による長時間労働からの開放といった働きやすさにつながり、いわゆる3K(キツイ・汚い・危険)といったイメージを刷新してくれるとともに、今、まさに学んでいる学生にとっては、先進の機器に触れながら、データで判断し、その手で確かめるという、教室で学んだことが実践、体験できる貴重な場となっていきます。そして「牛」にとっても、キレイで清潔に保たれた牛舎で過ごし、乳が張れば自らが搾乳に向かえるというストレスのない毎日となり、牛の健康、乳質の向上につながっていくことはまちがいありません。
次回は、この基盤を活かして、教育・研究・人材育成をどう飛躍させていくのかをお話しします。
【参考】関連記事
◆2026.02.27 フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る③ ~酪農のあり方が変わる~ 先進設備のメリット
https://www.rakuno.ac.jp/43293.html
◆2026.02.06 フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る② ~酪農のあり方が変わる~ 先進設備の導入
https://www.rakuno.ac.jp/43286.html
◆2026.01.29 フィールド教育研究センター長(兼 副学長)が語る① ~酪農から楽農へ~ プロジェクトへの思い
https://www.rakuno.ac.jp/43279.html
◆2026.01.14 新牛舎新築工事の進捗状況について(Vol.1)
https://www.rakuno.ac.jp/43075.html
◆[プレスリリース]酪農学園大学が最先端のロボット牛舎を新築 ―学生が未来型酪農を実践的に学べる教育環境を整備―
https://www.rakuno.ac.jp/archives/39600.html
◆酪農学園大学 農環境情報学類 特設サイト
https://shingakunet.com/school/SC000559/rakuno/special/
◆酪農学園大学YouTubeチャンネル「農環境情報学類」Movieプレイリスト
https://www.youtube.com/watch?v=96_fBG3bp9A&list=PLTeyee6_6Hhwgz3tSCknZ-idSyHkESVNU
【参考】関連リンク
◆フィールド教育研究センター
https://www.rakuno.ac.jp/outline/initiatives/farm.html
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