2020年度 学位記授与式 学長式辞

Date:2021.03.18

 農食環境学群519名、獣医学群・学部200名、大学合計719名、酪農学研究科12名、獣医学研究科6名、大学院合計18名、合計737名の学位記を授与される皆さん、おめでとうございます。
 晴れて今日の日を迎えられたことに、酪農学園大学教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。今日まで4年あるいは6年の長い間、皆さんの学業と研究を支えてこられたご家族、関係者の皆様のご苦労に対し、敬意と感謝の意を表します。
 本日は、新型コロナウイルス感染防止のために、皆さんの座席の間を空けて着席していただき、ご家族、関係者のご臨席を控えていただき、時間を短縮して行うことといたしました。
 昨年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の中において、学位記授与式を断念せざるを得ない状況にありました。今年度は慎重な論議を重ねて準備を行い、通常とは違う学位記授与式となりましたが、本日、学位記授与式を挙行できました。卒業生の皆様、ご家族、関係者の皆様のご理解とご協力に、心より感謝申し上げます。今日この日が特別な良き日として、皆様の想い出として、長く記憶に残ることを期待しております。
 さて、振り返りますと、皆さんが本学で過ごした4年あるいは6年の間には、いくつかの大きな出来事がありました。2018年9月6日には胆振東部を震源とする大きな地震が発生し、多くの方が甚大な被害を受けました。また、各地において、集中豪雨の被害を受けました。3月11日には、東日本大震災から10年が経過しました。被災地では、完全な復興には至っておらず、ご苦労されている方が多くおられます。一日も早い復興を心より願っております。
 さらに、昨年2月から新型コロナウイルス感染症が急拡大し、いわゆるパンデミック状態になりました。世界中が、いまだにコロナ禍の大きな試練の中にあります。この事態に対して本学は、直ちに大学危機対策本部を設置し、教職員一丸となって、皆さんの安全を守りながら、授業や実習を行うための感染防止対策について検討しました。遠隔授業の体制を緊急に整え、慎重を期して、一部の授業や実習を対面で実施しました。皆さんにとっては、このキャンパスに来られないことや、友人と過ごす時間がなくなり、慣れない遠隔授業、自宅での一人での勉強、不自由な環境での卒業論文、修士・博士論文研究など、学生生活が大きく変化し、想像を超えた苦労があったことと思います。
 この数年は自然の力をあらためて思い知らされ、これだけ進んだ科学技術に満たされた生活もいっぺんに停止する怖さも覚えました。新型コロナウイルス感染症が短期間のうちに世界中に拡大し、命を失う人が日に日に増え、医療現場の疲弊していく現実に、得体のしれない恐怖と不安を募らせてきました。
 しかし、このような未曽有の試練の中にあっても、人はさまざまな知恵を使い、生活様式を変え、ワクチンを開発し、ウイルスと対峙しています。まだ、新型コロナウイルス感染の終息は見通せない状況にありますが、徐々に収束に向かい始めています。
 私たちは、コロナ禍の中にあって、冷静に考えなければならない課題に気づいたのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症の拡大は、経済に大きな打撃を与えています。食料の生産や供給にも大きな影響を与えています。グローバル化した現在は、食料の世界的流通は、私たちの生活にとって必要不可欠な経済活動となっています。しかし、自国優先や食料の囲い込みなど、世界平和に不協和音が響き、その心配な状況に警鐘が鳴らされていることを、私たちは知らなければならないと思います。
 多くの方がご覧になったと思いますが、先日NHKで放送された「緊急対談、パンデミックが変える世界~海外の知性が語る世界」の番組の中で、フランスの経済学者で思想家のジャック・アタリ氏は、次のように話していました。
 パンデミックの中で、連帯のルールが破られ、利己主義が横行し、経済的な孤立に陥る危険性が高くなっている。バランスの取れた国際的な秩序が必要である。パンデミックという深刻な危機に直面している今こそ『他者のために生きる』という人間の本質に立ち返らなければならない。協力は競争より価値があり、人類は一つであることを理解しなければならない。利他主義という理想への転換こそが人類が生存するカギである。利他主義は最善の合理的な利己主義に他ならない。」と述べています。
 本学の創設者 黒澤酉蔵先生は、皆さんも良く知っているとおり、足尾銅山の鉱毒被害に苦しむ人々の救済に一生を捧げた田中正造翁に師事しました。やがて北海道に渡り、冷害に苦しみ疲弊する農家を救うために「酪農」を薦め、酪農の発展には、農家に教育を授けることが重要であるとの信念に基づいて、1933年に北海道酪農義塾を開校し、酪農の発展に生涯を捧げました。
 黒澤酉蔵先生の弱者に寄り添う“利他的”な心は、「三愛主義」「健土健民」の建学の精神・理念として、酪農学園大学に脈々と引き継がれています。 
 今年、卒業式のメッセージやインターネットで多く紹介されている聖書の言葉があります。酪農学園大学附属とわの森三愛高等学校の2020年度の聖句にもなっている言葉です。私も、皆さんに紹介したいと思っていました。ローマの信徒への手紙5章3~4節の「私たちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。」という言葉です。
 今、世界は新型コロナウイルス感染症という大きな試練の中にあり、多くの人が苦難を覚えています。皆さんは、これから社会に出て、希望ある充実した日もあれば、仕事や人との関わりの中で、苦難を覚える時もあると思います。
 今日「誰一人取り残さない」持続可能な世界をめざす開発目標、SDGsが世界的に提唱されています。本学は、創設以来SDGsに通じる建学の精神・理念により食料生産に関する教育と研究を行ってきました。皆さんは、その酪農学園大学の教育を体得されたと思います。
 今、さまざまな試練の中にある社会にあっては、酪農学園大学で学んだ皆さんを必要としています。
 結びに、皆さんが心身ともに健康で、それぞれの目標に向かって活躍され、また、このキャンパスに戻り、私たちにいろいろなことを教えてくれる日が来ることを期待いたします。
 本日は誠におめでとうございます。
 

2021年3月18日
酪農学園大学
学長 堂地 修