2021年度 入学式 学長式辞

Date:2021.04.05

 本日、農食環境学群423名、獣医学群248名、大学合計671名、酪農学研究科17名、獣医学研究科8名、大学院25名、合計696名、皆さん、ご入学おめでとうございます。  晴れて今日の日を迎えられたことに、酪農学園大学教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。また、今日まで皆さんの学業を支えてこられたご家族、関係者の皆様のご苦労に対し、敬意と感謝の意を表します。  本日は、新型コロナウイルス感染防止のために、皆さんの座席の間を空けて着席していただきました。ご家族、関係者のご臨席を控えていただき、時間を短縮して行うことといたしました。昨年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の中において、入学式を断念せざるを得ない状況にありました。今年度は慎重な論議を重ねて準備を行い、通常とは違う入学式となりましたが、本日、挙行できました。卒業生の皆様、ご家族、関係者の皆様のご理解とご協力に、心より感謝申し上げます。  皆さんは、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、受験勉強や入学試験を経験され、大変ご苦労されたのではないかと拝察いたします。ご家族も同様であったことと思います。そのご苦労が実り、入学を果たし、これからの学生生活に夢を膨らませていることと思います。  酪農学園大学は、135万平方メートル、東京ドーム28個分の広さで、キャンパス内に校舎、乳牛舎、牧草地、作物実習・研究圃場、動物医療センターなどがあります。また、車で約15分の元野幌地区には肉牛農場、豚・羊・鶏の中小家畜施設があります。さらに、この健民館のすぐ隣ある、道立自然公園・野幌森林公園と接しています。 本学は、札幌市郊外にありながら、家畜、作物、食、健康、環境、獣医学を、単に体験的ではなく、実務的に学ぶことができる恵まれた環境にあります。この他に植苗農場、望来、福島、別海の演習林もあります。  この恵まれた環境の中で、優秀な教職員が揃い、充実した教育・研究プログラムと学生サービスを備えていますので、新入生の皆さんは安心して学ぶことができると思います。ぜひ、本学の恵まれた環境を十分に活用し、教職員を頼りにして、学んでいただきたいと思います。  大学は様々な事を学ぶ場所です。多くの人が大学は専門的な知識や技術を学ぶというイメージを持つと思います。しかし、社会においては、専門的な知識や技術に加えて、幅広い教養、考える力、人を想う心、物事を判断する力も求められます。人工知能や情報通信技術の急速な進展とグローバル化する現代においては、人と人の関わりが豊かであることがもっとも大切であると、私は思います。  酪農学園大学の創設者である黒澤酉蔵先生は、足尾銅山の鉱毒被害に苦しむ人々の救済に一生を捧げた田中正造翁の教えを受けました。黒澤酉蔵先生は北海道に渡り、牧夫見習いから始め、冷害に苦しみ疲弊する農家を救うため、酪農の振興による寒冷地農業の確立に尽力しました。 酪農の発展には、農家に教育を授けることが重要であるとの信念に基づいて、1933年、北海道酪農義塾を開校し、酪農の発展に生涯を捧げました。 また、本学2代目の理事長を務めた佐藤 貢先生も、冷害や安い乳価に苦しむ農家を救い、酪農の発展に心血を注ぎました。この二人の偉大な先生方の弱者に寄り添う利他的な心は、今の酪農学園大学でも脈々と生きています。  アメリカ・オハイオ州立大学の同窓生会館の庭に、社会に有為な貢献をした同大学の卒業生のレリーフがあります。その中に佐藤 貢先生の名前も掲げられており、先生の業績はアメリカでも高く評価されています。  酪農学園大学は、昨年度で開設60周年を迎えました。本学の建学の精神・理念は、「三愛主義」「健土健民」です。ホームページに掲載しているとおり、「三愛主義」は、「神を愛し、人を愛し、土を愛する」ということです。「神を愛し」とは善き人になろうと努力すること、「人を愛し」とは互いの違いを受け入れて生かしあうこと、「土を愛す」とは大地を健康に育てることを意味しています。この3つの愛が合わさって初めて、健やかな人と大地が生まれる、ということ意味しています。  「健土健民」とは、「健やかな土地から生み出される健やかな食物によって健やかな生命が育まれる」ということです。黒澤酉蔵先生は、「健土健民」の「健」の意味について、3つの意味があると説いています。「第一に「身体の健康」、第二に「心の健康」、第三に「経済」であると。「健土」を創り出すためには、土地の性質を究明し、足らざるを補い、偏ったものを正し、弱い面を強め、傷ついたところを癒して、本来の健康状態にする。これを担当し実践するのは、学者でも研究者でも、政治家でもなく、農民である。農民は大地の良き医者であり、名医であると言える。」と述べています。  この考え方は、単に農業にとどまらず、人類の営みすべてに当てはまります。今日、誰一人取り残さない持続可能な開発目標(SDGs)が世界的に提唱されています。SDGsは、本学の建学の精神・理念に通じる考え方です。酪農学園大学は資源循環により自然環境を守り、豊かな社会づくりに貢献するために、食生産に関する教育研究を通して、その実践を積み重ねてきています。  酪農学園大学は、創設以来守り続けた建学の精神・理念に基づいて、常に未来を見据えた教育研究を、広大で豊かな環境のなかで積み重ねて社会に発信し、SDGsに通ずる取り組みを大学創設以来実践してきています。  私は、先日行った学位記授与式において、卒業生へのエールとして「今、さまざまな試練の中にある社会にあっては、酪農学園大学で学んだ皆さんを必要としています。」という話をしました。本学で学び、「三愛主義」、「健土健民」の建学の精神・理念を理解した人を、今の社会は必要としていることを伝えました。あらためて皆さんに、自信をもって言いたいと思います。これからの社会は酪農学園大学で学んだ人を、すなわち、必ず皆さんを必要とします。  皆さん、これからの4年あるいは6年で、必要とされる人材になれることを期待します。  さて、皆さん、ならびにご家族の方々は、新型コロナウイルス感染症のことをご心配されていると思います。本学には学校医やウイルス学を専門とする獣医師の先生が複数おり、医務室は常に健康に関する相談に丁寧に対応しています。行政機関の指導を遵守して、専門知識に基づいた感染対策を実行しています。今年は、対面授業と遠隔授業を併用したハイブリッド型授業を行います。講義棟の入り口には体温測定を自動で行うサーモカメラ、様々な所にアルコール等の消毒薬を設置しています。また、教室には飛沫防止板を設置していますので、安心して大学生活を送って頂きたいと思います。  皆さんは、大学から発信される注意事項を良く確認して、皆さん自身も感染防止のために、感染の危険性のある行動を慎み、健康管理に努めていただくようお願いいたします。  最後になりましたが、ご家族、関係者の皆様、私たちは建学の精神・理念にしたがって、新入生の皆さんが4年あるいは6年後に、必ず社会に必要とされる有為な人材になるように、教職員一丸となって努力してまいります。どうか、ご支援いただきますようお願い申し上げます。  ご入学おめでとうございます。  

2021年4月5日 酪農学園大学 学長 堂地 修