2021年度 学位記授与式 学長式辞

Date:2022.03.17

 農食環境学群496名、獣医学群192名、大学合計688名、酪農学研究科9名、獣医学研究科6名、大学院合計15名、合計703名の学位記を授与される皆さん、おめでとうございます。  晴れて今日の日を迎えられたことに、酪農学園大学教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。今日まで4年あるいは6年の長い間、皆さんの学業と研究を支えてこられたご家族、関係者の皆様のご苦労に対し、敬意と感謝の意を表します。  昨年と同様に本年も、新型コロナウイルス感染防止のため、座席の間を空けて着席していただきました。また、ご家族、関係者のご臨席を控えていただきました。卒業生の皆様、ご家族、関係者の皆様のご理解とご協力に、心より感謝申し上げます。今日が特別な良き日として、皆様の想い出として、長く記憶に残ることを願っております。  さて、皆さんが本学で過ごした4年あるいは6年の間には、いろいろな出来事がありました。2018年9月には胆振東部地震が発生し、また、各地で集中豪雨が発生し、多くの方が甚大な被害を受けました。未だに完全に復興していない所もあり、ご苦労されている方が多くおられます。一日も早い復興を心より願っております。  2020年2月から新型コロナウイルス感染症が急拡大し、世界中がパンデミック状態になりました。昨年末には完全に終息するのではないかと、期待が高まりましたが、再拡大し、今でも感染者数は多く、安心できる状況になっておりません。  本学は、昨年度の経験を活かして、皆さんの学生生活が実りあるものになるように、対面授業と遠隔授業を組み合わせたハイブリッド授業を行い、教職員の皆さんの献身的な努力もあり、この1年を終えることができました。  この2年間、皆さんは不自由を強いられることの多い学生生活であった事と思います。しかしながら、制限された中で、卒業論文、修士・博士論文の研究やサークル活動に力を尽くして頂きました。研究会や学会において表彰された方、優秀な成績を収めたサークルも多くありました。皆さんのこの2年間の努力に心より敬意を表します。  さらに、卒業生や多くの方々からも、さまざまなご支援を頂きました。同窓会、卒業生、道央農業協同組合様に多くのご協力を頂き、3回の食糧支援を実施しました。また、ネッツトヨタ道都株式会社様から消毒器、ツルハドラッグ様から消毒薬をそれぞれ寄贈頂きました。このような支援は、酪農学園大学、とりわけ皆さんの日頃の取り組みに対する高い評価の結果であると思います。ここに改めて心から感謝申し上げます。  昨年度の卒業式において、私は「グローバル化した現在、食料の世界的流通は、私たちの生活にとって必要不可欠な経済活動となっています。しかし、自国優先や食料の囲い込みなど、世界平和に不協和音が響き、その心配な状況に警鐘が鳴らされていることを、私たちは知らなければならない。」という話をしました。  このわずかひと月の間にロシアのウクライナ侵攻により、世界は急変しました。連日、砲撃に逃げ惑う市民の姿に、大きな不安と恐怖を覚える人も少なくないと思います。この戦争に対して、本学と附属とわの森三愛高校は、キリスト教に基づく三愛主義の建学の精神から「新型コロナウイルスのパンデミックに苦しむ世界において、今ほど対立ではなく協力が必要な時はない」というメッセージを3月2日に出しました。このメッセージは、酪農学園大学の平和への意志を、直ちに表明すべきであるという声を学内から頂き、宗教主任の小林昭博先生のご協力を頂いて出したメッセージでした。酪農学園はこれからも平和を永遠に求め続けていかなければなりません。そのことが、三愛主義と健土健民の建学の精神の具現化につながることを、私たちは改めて確認し、共有したいと思います。  私が昨年度の卒業式で紹介したフランスの経済学者で思想家のジャック・アタリ氏の言葉を、もう一度、ここで紹介したいと思います。彼は「パンデミックの中で、連帯のルールが破られ、利己主義が横行し、経済的な孤立に陥る危険性が高くなっている。バランスの取れた国際的な秩序が必要である。パンデミックという深刻な危機に直面している今こそ“他者のために生きる”という人間の本質に立ち返らなければならない。協力は競争より価値があり、人類は一つであることを理解しなければならない。利他主義という理想への転換こそが、人類が生存するカギである。」と述べています。  本学の創設者 黒澤酉蔵先生はデンマークに様々な事を学びました。黒澤酉蔵先生は、わが国の酪農発展に大きな足跡を残した宇都宮仙太郎翁からデンマークについて学んだそうです。農業の発展により戦後の復興に取り組んだデンマークの姿に、大きな感動と衝撃を受けました。そして、宗教家で教育者でもあるニコライ・グルンドヴィの「神を愛し、人を愛し、祖国を愛す」という三愛主義に出会います。  冷害に疲弊する農民救済に奔走した黒澤酉蔵先生を始めとする先達たちが残した、デンマークをルーツとする「三愛主義」の考えは、今まさに世界が必要としています。そして、「誰一人取り残さない」持続可能な世界をめざす開発目標、SDGsにも通じています。  新型コロナウイルスに翻弄され、各地で争いが起こっている今、私たち酪農学園大学は「三愛主義」「健土健民」の建学の精神・理念を大切にしていかなければならないと、あらためて思います。卒業生の皆さんも、ぜひ、これからもこのことを覚えておいて頂きたいと思います。  また、酪農学園大学は「単に知識を身に付けるだけではなく、知識と実践は一体である」という「知行合一」の有能な農業人ならびに社会の人材の養成も目的としています。私は、さまざまな課題を抱える現在の社会にあっては、酪農学園大学で学んだ皆さんを必要としていると確信しています。今日、卒業される皆さんに、社会の持続的な発展を託したいと思います。  結びに、皆さんが心身ともに健康で、それぞれの目標に向かって飛躍し、そして、このキャンパスに機会ある度に帰ってきてくれる日を楽しみにしております。  ご卒業おめでとうございます。

2022年3月17日 酪農学園大学 学長 堂地 修