日本解剖学会第69回東北・北海道連合支部学術集会で植田弘美准教授が学会賞を受賞

Date:2023.09.11

NEWS No.31(2023年度)
日本解剖学会第69回東北・北海道連合支部学術集会で植田弘美准教授が学会賞を受賞

 2023年9月2日(土)から3日(日)に東北医科薬科大学医学部(仙台市)で開催された「日本解剖学会第69回東北・北海道連合支部学術集会」において、獣医学群獣医学類獣医解剖学ユニットの植田弘美准教授が発表した「系統樹から見る魚の脊椎骨の組織学的解析と分類」が学会賞を受賞しました。

 

<受賞演題>
「系統樹から見る魚の脊椎骨の組織学的解析と分類」
祖父江尚哉1、古田智絵2、吉川修司2、山田加一朗2、渡邉敬文1、細谷実里奈1、髙橋直紀1、〇植田弘美1
酪農学園大・獣医・解剖学1、(地独)道立総合研究機構食品加工研究センター2

<研究概要>
 道立総合研究機構食品加工研究センターと共同で“骨まで食べられる水産加工品”の開発に取り組んでおり、その一環として魚の脊柱を構成する脊椎骨を組織学的に検索している。本研究では脊柱の腹椎骨に着目し、得られた結果を魚種間で比較検討すると共に、魚の系統樹と照らし合わせ魚の進化における脊椎骨の構造変化を解析した。
 研究材料としてサバやイワシ、サンマ、サケ、カレイなどスーパーマーケットで店頭に並びよく知られている魚種から、軟骨魚類のサメやシャチブリ、ホウライエソ、イトヒキイタチウオなど深海に生息し馴染みのないものまで、市販の魚種17目34種を使用した。
 全ての魚種で脊椎骨の椎体の中心部に砂時計型を呈した孔が認められ、その孔には脊索がみられた。椎体はその中心部から背側と腹側に伸び出した突起ないし骨梁により形成され、サメは太い軟骨組織性の突起より構成されていた。サケやイワシなどでは背腹に伸びた突起はそれぞれ二分し、その二分した突起の間に軟骨組織を有していた。骨梁は枝を出しながら放射状に伸ばし格子構造を形成するものや、隣接する細い骨梁同士が互いに結合し網目構造を形成するものも認められた。使用した魚を系統樹に当てはめそれぞれの組織構造を見てみると、系統的に近い種同士は類似の組織構造を持ち、また、軟骨魚類であるサメや硬骨魚類でもサケやイワシなど系統的に古い魚種では、椎体に軟骨組織が残存していることが分かった。椎体を形成する骨梁は、系統的に新しい魚種ほど隣接するもの同士が結合し椎体全体に網目構造を形成しており、脊椎骨内部の組織構造も魚の進化の過程で一連の変化を伴いながら順次形成されていくことが推察された。

 

植田弘美准教授のコメント

 4年振りに現地開催された日本解剖学会第69回東北・北海道連合支部学術集会にて、栄誉ある学会賞を受賞できたことを大変光栄に思います。この研究は道立総合研究機構食品加工研究センターの研究員の方々と共同で取り組んでいるもので、当ユニットに所属する学部学生の卒業論文の一環としても進めています。私どもの強みである形態学的な手法を駆使し、現在まで50種類ほどの魚種の脊椎骨を組織学的に解析しています。それらの組織構造を比較検討し、また、魚の系統樹と照らし合わせながら多くの魚種の組織構造を観察していると、魚の進化に伴い脊椎骨の組織構造が順次変化しながら形成されていくことが見て取れ、大変興味深い結果が得られました。しかし、多種多様な魚類では、“系統樹”と“進化”と言った2つのキーワードでは説明が付かない魚種も幾つか認められ、今後は魚の生育環境など他の要因との因果関係も含め解析していきたいと考えています。