環境共生学類4年の井藤 千聖さんが「日本湿地学会第15回(2023年度)東京大会」で ポスター発表部門の奨励賞を受賞

Date:2023.12.14

NEWS No.65
環境共生学類4年の井藤 千聖さんが「日本湿地学会第15回(2023年度)東京大会」で
ポスター発表部門の奨励賞を受賞

 9月2日に法政大学市ヶ谷キャンパスで開催された「日本湿地学会第15回(2023年度)東京大会」において、環境共生学類4年の井藤千聖さん(指導:環境共生学類環境地球化学研究室 吉田 磨教授)が発表した「シラルトロ湖のヒシ拡大要因」がポスター発表部門(一般対象)の奨励賞を受賞しました。

 

<受賞演題>

「シラルトロ湖のヒシ拡大要因」 (ポスター発表)
 井藤 千聖、横山 愛莉、尾山 洋一、吉田 磨

<研究概要>

 釧路湿原に位置するシラルトロ湖では、近年浮葉植物であるヒシの急拡大が確認されており、生物多様性の低下が懸念されている。しかし、湖に影響を与えるシラルトロ湖集水域の土地利用変化の解析は行われていない。そこで本研究では、1984年, 2013年, 2022年の衛星画像から土地利用変化の解析を行った。また、ヒシの分布解析は2010年までしか行われていないため、2011年以降のシラルトロ湖におけるヒシ分布の把握も行った。
 2000年以降急激なヒシの増加が確認され、特に2017年以降は湖の約半分をヒシが覆いつくしていることが確認された。ヒシ拡大要因として、シラルトロ湖の集水域で農地や荒れ地が増え栄養塩流出の増加につながったと考えられていたが、1984年から2022年にかけて農地は拡大しておらず、ハンノキ林の面積拡大が顕著であった。このため、湖内におけるヒシの枯死が浅底化や底質からの栄養塩流出を引き起こし、ヒシ拡大の正のフィードバックとなっている可能性がある。今後は、底層からの溶出を含めた湖内の栄養塩動態を明らかにするとともに、生物多様性の保全のためにヒシの刈り取りも検討する必要があることが示唆された。

井藤 千聖さんのコメント

 初めての学会発表で、このような賞を頂けたことを嬉しく思います。また、湿地に関する研究を学ぶ良い機会になりました。
 シラルトロ湖における研究は昨年度から始まり、今年度も継続して行っています。実際にボートを湖に浮かべ水試料のサンプリングを行い、シラルトロ湖の水環境を観測しています。来年度以降の研究では実際にヒシの刈り取りを行う段階に入ります。私も大学院に進学して研究を続ける予定です。大学院の研究の中で、ヒシ拡大の要因解明だけでなく拡大抑制や対策の方法を検討し、湖の生態系を守っていきたいです。

吉田 磨 教授のコメント

 北海道の湿地の環境が変わりつつある中、衛星写真データや現場でのフィールド観測データから環境変化の状態を科学的に評価した成果が評価され、大変うれしく思います。北海道の広大な湿地環境の変化は、生物多様性や流域生態系、景観だけでなく気候変化にも大きな影響を与えます。これからも持続可能な環境の形成に役立つ教育研究ができればと考えています。

 

井藤さんと環境地球化学研究室の益々の活躍に期待です。


日本湿地学会
https://j-wetlands.jp/meeting14/