本学 獣医学研究科1年中村暢宏さんが第13回細菌学若手コロッセウムで微生態特別賞を受賞

Date:2019.08.30

NEWS NO.41(2019年度)
獣医学研究科1年中村暢宏さんが第13回細菌学若手コロッセウムで微生態特別賞を受賞
8月18日(日)から8月20日(火)まで、宮城県で開催されていた「第13回細菌学若手コロッセウム in みやぎ蔵王」において、獣医学研究科獣医学専攻博士課程1年の中村暢宏さん(獣医生化学ユニット 岩野英知教授・藤木純平助教)が口頭発表した「黄色ブドウ球菌ファージ由来溶菌酵素(LysΦSA012)の機能解析」が微生態特別賞を受賞しました。 「細菌学若手コロッセウム」は、日本細菌学会が若手研究者育成のために支援するプログラムであり、微生態特別賞は優秀口頭発表賞に該当します。

口頭発表の様子

演題内容 現代医療において抗生物質を抜きに細菌感染症と戦うすべはほとんどないと言っても過言ではありません。しかし、抗生物質に頼り切った治療を行ってきた結果として、薬が効かない薬剤耐性菌が世界中で報告され、将来的には抗生物質が役に立たない時代が来ると危惧されています。獣医生化学ユニットではこの問題点を打開する1つの解決策としてバクテリオファージを用いた“ファージセラピー”に着目し、研究を行っています。バクテリオファージは我々人間を含む動物には感染せず、細菌のみに感染し、菌を倒す(溶菌する)ウイルスです。私はバクテリオファージが細菌を溶菌するときに使用する酵素、“エンドライシン”に注目し、機能解析を行ってきました。本研究で用いたエンドライシン「LysΦSA012」は牛において乳房炎を引き起こすStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)や犬の皮膚感染症である膿皮症を引き起こすブドウ球菌に対して、薬剤耐性の有無にかかわらず、試験管内での急速な溶菌活性を確認できました。また、このエンドライシンがどのように機能しているのか、また酵素活性を最大に引き出すイオン条件などについても検証し、報告しました。今後は実際に生体を用いた実験において有効性を示し、細菌感染症に対する新たな薬として将来使われるようになることを期待しています。   中村暢宏さんの感想 今回、このような賞を頂くことができ、大変嬉しく思っております。また、細菌学若手コロッセウムは名前の通り、同年代の若い研究者が多く参加しており、各参加者からとても良い刺激をもらうことができました。私は2017年に本学獣医学類を卒業し、今年の春までの約2年間、東京の小動物病院で獣医師として勤務してきました。そこでは犬・猫においても薬剤耐性菌の出現が深刻であることを身をもって実感し、薬剤耐性菌問題に対して取り組むために春から本学に大学院生として戻り、バクテリオファージの研究を再開しています。今後の最大の目標としては、バクテリオファージ及びエンドライシンを用いたファージセラピーを動物で実施することであり、これが実現すると人を含め日本では初めての例となります。そして抗生物質同様、ファージセラピーが細菌感染症に対するツールとしてごく一般的に選択できる社会の実現に尽力していきたいと思っています。

授賞式

 

授賞式後の集合写真授賞式後の集合写真