2023年度 学位記授与式 学長式辞

Date:2024.03.14

 本日、農食環境学群466名、獣医学群191名、以上、大学合計657名、酪農学研究科8名、獣医学研究科4名、以上、大学院合計12名、合計669名の学位記を授与された皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 晴れて今日の日を迎えられたことに対し、酪農学園大学教職員を代表し、学長として心よりお祝い申し上げます。2019年12月に始まった新型コロナウイルス感染症により、皆さんは、これまでの人生で想像すらできなかった日常を強いられてきました。
 2020年3月の学位記授与式と、2020年4月の入学式は、執り行うことができませんでした。教職員一同、皆さんの安全を確保しながら、講義、実習、そして課外活動が皆さんの思いに叶ったものとなるよう大学運営に配慮して来ました。こうした特殊な環境の中で、皆さんは、人と人が繋がることの重要性も学ぶことができたのではないかと思います。
 さて、これから皆さんは社会人としての一歩を歩み出すわけですが、これからの日本は、急激な人口減少による激変の時代となるであろうことは、皆さんもお分かりのことと思います。これまでの社会構造、労働環境も大きく様変わりすることと思います。皆さんは、その世の中の大きな変化の中で生き抜いていかなければなりません。
 これから皆さんが生きていく上で大事であると思う3点について、お話ししたいと思います。
 一つ目は、いつも学び続けること、です。社会に出てからの実践的な学びは、教科書や参考書に記載されているような公式的なものではなく、一つ一つがとても生きた学びです。その環境、関係する人々、そして社会の変化など、全てが学びにつながります。特に実際に自身が経験した失敗による学びは、何ものにも変え難いものです。私は現在54歳ですが、多くの失敗を経験してきました。思い出すと恥ずかしくなることもいっぱいです。しかしそれら全ては、とても大切な学びとなりいろいろな難しい場面での判断や、困難が立ちはだかった際にも自分を後押ししてくれるように、今、感じることができます。
 経営の神様と称され、京セラ、KDDIの創業にはじまり、JALの経営再建を成功させた稲盛和夫さんは、多くの言葉を残しています。その一つに、多言実行が大事だと仰っています。みなさん、この意味が分かりますか?有言実行は、分かりますよね。宣言した通りに実行していくということです。では、多言実行とはどういうことでしょう。それは、例をあげて次のように言っています。10のことをやると言って5つしかできなかった。一方で3つだけをやると言って3つできた。さて、どちらに価値があるか。企業としては、言った通り3つしかできなかったでは何の自慢にもならないではない、そう仰っているのです。つまり、あくまでも失敗を恐れず挑戦すること、そして得られる結果が大事だということなのです。また、このことは、次のようにも解釈できます。つまり、真面目に挑戦して失敗するのは良いのです。先程の例でいくと、5つ失敗しても5つの成功があればいい、失敗は、そこからは多くの学びがあるのですから。
 二つ目は、本学の教育の根幹である三愛主義、その中の一つ、人を愛するということです。この場合の愛とは、恋愛感情の愛だけではなく、自分を含めた全ての人を受け入れる、そういう意味です。世界中で多くの紛争が絶え間なく続いている今日、我々は、人を愛し、そして受け入れる、そういう視点を改めて大事にしなくてはならないと思います。それは、我々の日常においても、多くの人間関係の中で悩み、疲労困憊することもあるでしょう。そう言った時に、相手を、そして自分を受け入れることができれば、状況は大きく改善できることと思います。難しいことだと思いますが、ぜひ、自他共に受け入れて、何より自分のことも大事にしてください。
 大学のロゴにある「生きるを学ぶ。学びが生きる。」を是非、社会でも実践してください。
 最後に、お手元の『出会い』に掲載されている「然りと否」というイエスの言葉を紹介します。日本社会では、忖度や同調圧力などが指摘されることが多いわけですが、この言葉は、自分が「然り」正しいと思うこと、自分が「否」間違っていると思うこと、それを大事にしなさいという意味が込められています。
 今日は、皆さんに3つのことをお話ししました、「学び続けること」、「人を愛する、これは他人、自分自身も受け入れること」そして、「然りと否」。
 皆さんそれぞれの人生で、多くの挑戦に果敢に取り組んで、成功と失敗を重ねながら、豊かな人生を歩んでいただきたいと切に願っています。
 本日、ご出席いただきました、保護者の皆様、ご家族はじめ関係の皆様におかれましては、本日のご卒業を心よりお慶び申し上げます。本学の教育活動に対し、深いご理解をお寄せいただくと共に、長きにわたり、お子様を支えてくださったことに、教職員一同、心より厚くお礼申し上げます。
 酪農学園は、昨年、創立90周年を迎えました。これまで36185人の同窓生が全国で活躍しています。酪農学園は、これから100周年に向かっての一歩を歩んで行きます。これからみなさんが働く組織、地域には必ず同窓生がいます。私は、1990年にこの大学の獣医学科に入学し、1996年に卒業しました。皆さんと同じく酪農学園大学の同窓生です。
 全国の各地域で同窓会が組織され集会などもあり、私も学長として参加します。ぜひ気軽に同窓会にも参加して、皆さんのご様子をお聞かせください。また、この酪農学園大学にいつでも帰ってきてください。教職員一同、どんな時も皆さんを心から歓迎いたします。
 最後に、皆さんの人生がそれぞれにとって充実したものとなることを願い、学長の式辞といたします。
 本日は、ご卒業、誠におめでとうございます。




 

2024年3月14日
酪農学園大学  
学長 岩野 英知