【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第3回共同研究成果発表会」を開催

Date:2024.03.23

NEWS No.100(2023年度)
【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第3回共同研究成果発表会」を開催

 本学農食環境学群と附属とわの森三愛高等学校との高大一貫教育の連携強化を目的とした共同研究成果発表会が3月8日(金)に開催され、約150名(来場約125名、オンライン視聴参加約25名)が参加しました。今年度も昨年度と同様、5件の研究発表が行われました。

今年度の会場はC1号館101教室です。

多くの高校生と教職員が集まりました。

 小糸健太郎農食環境学群長の司会進行の下、高大連携事業担当副学長である樋口豪紀副学長の挨拶が行われた後、研究成果発表が行われました。

小糸健太郎 農食環境学群長

樋口豪紀 副学長

研究概要と発表の様子は次のとおりです(発表順)。

【1】(RGU)循環農学類×(TOWA)普通科総合進学コース_RGUクラス
●  循環農学類 義平大樹教授(作物学研究室)、附属高校普通科総合進学コース 松田直也教諭
   普通科総合進学コースRGUクラス2年
   和泉誠虎・近江大馳・小川隼輝・髙橋拓希・秦秀磨・宮崎想来・百瀬光・山本駿也

発表課題:アズキに対するTwin row および狭畦栽培が生育・収量に及ぼす影響
研究目的:トウモロコシやダイズで認められているTwin row および狭畦栽培の増収効果をアズキにおいて確認し、その作物学的要因を明らかにする。
研究概要:アズキの基幹品種である「エリモ167」、「きたろまん」に対して、慣行栽培 (条間60cm、副条間10cm)、Twin row (条間60cm、副条間20cm)、狭畦栽培(条間40cm、副条間15cm)の3つの栽植様式で比較し、増収効果を確認する。また、その要因について収量構成要素から検討する。

順番に研究発表を行う生徒達

トップバッターの緊張は感じさせず、それぞれのパートを丁寧に説明していました。
しっかりと準備してきたことが伝わってきます。

【2】(RGU)循環農学類×(TOWA)アグリクリエイト科機農コース
●  循環農学類 石川志保准教授(農業施設学研究室)、土井和也講師(家畜飼料学研究室)、
   附属高校農場長 西川謙教諭
   アグリクリエイト科機農コース1年 吉永悠真・砂倉彩夏

発表課題:乳牛呼気由来のメタン産生削減に対する取組
~分離給与での飼料給与量の違いによる影響~
研究目的:酪農学園FEDRECつなぎ飼い牛舎における盗食などの飼養管理上の問題を解決する。さらに、乳牛のメタン産生は採食量にも起因するため、飼料の種類(構成)や給与量を正確に把握し、飼料・飼育環境等が乳牛のメタン産生量に与える影響を明らかにする。
研究概要:附属とわの森三愛高等学校生の畜産環境に対する認識を高めるため、乳牛のメタン産生の仕組みと影響要因を解説する勉強会を実施。勉強会で学んだことをつなぎ飼い牛舎の飼料給与管理で実践し,その前後での乳量,採食量,残餌量などの個体情報を明らかにする。これらのデータを活用して,メタン産生量削減のためのアクション(飼養管理)を学生はもちろん、酪農家に向けても広く提案する。

自信に満ち溢れた発表がとても印象的でした!

2023.12.9 北海道畜産草地学会(ポスター発表)の様子

本研究に関する高校生の感想を一部紹介します。
・畜産に関する環境問題について
 牛からの環境問題について、ショックが大きかった。
(農業は環境と関連しているので、環境に良いと思っていた。)
・学会発表を体験して
 色々な研究発表が見れてとても楽しかった。
(学会発表で酪農学園大学のヒツジの研究を見て楽しかった。)

【3】(RGU)食と健康学類×(TOWA)普通科フードクリエイトコース
●食と健康学類 阿部茂教授(農産資源科学研究室)、小泉次郎助教(農産資源科学研究室)、
    由良ももか(食品開発学コース農産資源科学研究室4年)
    附属高校普通科フードクリエイトコース長 家山麻希教諭
    普通科フードクリエイトコース2年 石川翔太・梅津望未・黄志道・今雪馨・柳澤佳司

発表課題:コーヒー豆の焙煎条件による香気成分の変化
     ~空気・過熱水蒸気のハイブリッド加熱技術の開発~
研究目的:コーヒー豆は焙煎条件によって香りが変化することが知られている。本研究では通常焙煎と過熱水蒸気焙煎およびそのハイブリッド焙煎おいて、香り成分の違いについて調査する。
研究概要:以下の①ないしは複数を調査する。
①過熱水蒸気加熱や通常加熱を用いてコーヒー豆を焙煎した際の処理条件が香り成分や色調等に与える影響について、ガスクロマトグラフィー質量分析計や色差計等の機器分析を行う。
②各加熱処理を行ったコーヒー豆を実際に挽いて、コーヒーの官能評価を行い、嗜好調査を行う。
③豆の種類による香り成分の変化について調査する。

官能試験の様子
(時間差による変化が起きない様に、タイミングを合わせてドリップしています。同じ行動をすることが重要です。)

焙煎方法(温度や時間等の変化)により、コーヒーの風味や味の変化を実感できたことがとても印象的だったと感想を述べる生徒(コーヒー好きのようです。)

会場に集まった参加者からは、
・ドリップするときに出る二酸化炭素の量に違いはあったか?
・官能試験では、大学生と高校生で好みの違いはあったか?などの質問もありました。

この研究課題に限らず、全ての課題で参加者から様々な質問や研究に対するアドバイスがありました。

【4】(RGU)食と健康学類×(TOWA)普通科フードクリエイトコース
●  食と健康学類 岩﨑智仁教授(食肉科学研究室)、前田尚之准教授(食肉科学研究室)、
   長谷川靖洋講師(食肉科学研究室)、濵田健人(食品流通学コース食肉科学研究室4年)
 附属高校普通科フードクリエイトコース長 家山麻希教諭、同コース 澤辺真人教諭
 普通科フードクリエイトコース2年 石間都衣・伊藤友里菜・小倉孝旺・永井真穂・諸橋里穂

発表課題: アカエゾマツチップで燻煙したベーコン中の多環芳香族炭化水素(PaH)の調査
研究目的: 燻煙には、発がん性物質である多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon, 以下PAH) が極微量含まれる。そこで、本研究ではPAH 成分の分析法を確立
し、これまで食肉科学研究室で開発したアカエゾマツチップ及び市販品でよく使用されているサクラチップ、ヒッコリーチップで燻煙したベーコン中のPAH を調査することを目的とした。
研究概要:厚生労働省の「食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」の評価方法に準じて添加回収試験を実施する。豚バラ肉を塩せきし、アカエゾマツ、サクラチップ及びヒッコリーチップで燻煙して作成したベーコン中のPAH を高速液体クロマトグラフで測定する。ヨーロッパ(EU)基準であるベンゾ[a]ピレンが2μg/kg 以下及びベンゾ[a]アントラセン、クリセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレンの合計が12μg/kg 以下を満たしているかを調査する。

真剣な眼差しで、パスツールピペットを使って測定試料を回収している様子。

参加者からの質問に答える濵田健人さん
(大学4年生/頼もしいです!)

研究に参加した生徒が感想を述べている様子

(澤辺先生からも一言)アカエゾマツチップで燻煙したベーコンを試食した感想
噛むと森の香りが鼻からふわっと抜けて、味もマイルドで優しく仕上がっていました!!

発表を聞いた会場の高校生からは、「食べてみたい!」という声もあがりました。

【5】(RGU)環境共生学類×(TOWA)普通科総合進学コース_RGUクラス
●  環境共生学類 遠井朗子教授(環境法研究室)、松林 圭助教(昆虫生態学研究室)、
 附属高校普通科総合進学コース 吉川明花教諭
 普通科総合進学コースRGUクラス2年
 石原李彩・岩村理乃・間瀬結哉・森田真由・白木陸斗・加々谷颯真・西海晴人

発表課題:未来の動物園は?~生物多様性の危機(Biodiversity crisis)の伝え方
研究目的:ネイチャーポジティブな社会への変革に必要となる市民の関心を高めるために、その重要性を伝えるためにはどうすれば良いかという問題意識に基づき、動物園の制度と機能および昆虫標本の製作・展示という二つの観点から検討を行う。
研究概要:以下の調査・実習から生物多様性の危機や重要性を考える。
A. 動物園の役割や展示方法についてのヒアリングと展示施設の視察
 ①ハビタットデザインとランドスケープ・エマージョン
  飼育下の動物にとって望ましい生息環境をできる限り再現すること、観覧者に環境保全のメッセージを伝えるための取組み
 ②環境エンリッチメント
  飼育されている動物の良好な福祉を実現するための様々な工夫
B. 動物園の役割や展示方法についての高校生へのアンケート調査(附属高校全学年を対象)
 高校生は野生動物の種の保存や展示にどのような意見を持っているのか?
C. 実際に多様性を展示する方法についての実習
 扱いやすい昆虫を例に、生息環境を再現した標本を作製するための技術を開発する。

生息環境を再現した昆虫標本① (環境:ハルニレの幹 地域:北海道石狩地方)

生息環境を再現した昆虫標本②(環境:海浜 地域:福岡県北部)

生徒達は最後まで堂々と発表を続けていました。
(しっかり研究に取組んだ成果が発揮されました!)

 生物多様性の危機を伝える方法として、エンタメではなく、多くの見えない工夫が施された展示手法から分かる動物園が担う生物多様性保全という本来の役割”を、学校教育(授業等)に積極的に取り入れることが重要であるという指摘は、強く印象に残りました。

 各グループからの発表終了後は、伊藤有輝副校長および岩野英知学長より、本日の感想を含めた挨拶があり、2023年度_第3回共同研究成果発表会は閉会となりました。

伊藤有輝 副校長

 この研究発表会は年々バージョンアップされているとともに、大学と高校の繋がりがより強くなっていることを感じることができる場になっています。今日は多くの高校生が参加していますが、本日発表された研究内容の中には、正直、分からないことがあったかもしれません。しかしそれが学びの第一歩です。今日見たこと、聞いたことから興味・関心を高め、今後こういう研究をしてみたいと思ってほしいです。附属とわの森三愛高等学校から「農・食・環境・生命を学ぶ」酪農学園大学へ進学し、7年間(9年間)の学びを深めてほしいと思っています。本日は、このような機会を設けていただきましたことに感謝申し上げます。

岩野英知 学長

 今日は皆さんの発表を興味深く聞かせていただきました。大学に入学すると必ず研究に携わりますが、研究をする意義は”社会を変えていくこと”です。社会の課題に対して、大学の教員は様々な角度から研究をしています。皆さんも大学に進学した際は、この研究を通して社会に貢献していくことを学び、色々な経験を通して、社会に出て行くための準備を行うことになります。皆さんが酪農学園大学に進学して、長い人生を切り開く準備をしてくれれば嬉しく思います。大学の教員は、高校生がより良い研究発表ができるよう手助けしてほしいと思います。本日は良い発表を聞かせていただきありがとうございました。

 最後に集合写真を掲載します。研究発表を終えてリラックスした素敵な表情をご覧ください!

 

 

 

以上