2024年度 学位記授与式 学長式辞

Date:2025.03.19

 本日、農食環境学群370名、獣医学群187名、以上、大学合計557名、酪農学研究科21名、獣医学研究科2名、以上、大学院合計23名、合計580名の学位記を授与された皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 晴れて今日の日を迎えられたことに対し、酪農学園大学の教職員を代表し、学長として心よりお祝い申し上げます。
 2019年12月に始まった新型コロナウイルス感染症の影響で、皆さんの大学生活は大きく制限されました。講義のオンライン化、実習や課外活動の制約、友人と自由に交流できない日々…。思い描いていた大学生活とは異なる環境の中で、皆さんは試行錯誤を重ねながら、学び、成長してこられたことと思います。そして、社会全体がコロナを乗り越え、少しずつ日常を取り戻す中で、人と人とのつながりの大切さを、改めて実感されたのではないでしょうか。
 さて、改めまして 卒業、おめでとうございます。
 私も皆さんと同じ酪農学園大学の卒業生です。一九九六年に卒業しましたので、約三十年が経とうとしています。時の流れはあっという間ですね。皆さんはこれから社会人としての一歩を踏み出しますが、今後の日本は、急激な人口減少による激変の時代を迎えます。これまでの社会構造、労働環境も大きく変わっていくでしょう。皆さんは、そんな大きな変化の中で生き抜いていかなければなりません。
 では、この変革の時代において、私たちは何を指針として生きていくべきでしょうか?
 まずは、「学び続けること」です。
 社会に出てからの学びは、大学の授業で得た知識とは異なり、より実践的で、生きた学びとなります。日々の仕事、周囲の人々との関わり、社会の変化…。すべてが学びの機会となります。そして、特に「失敗からの学び」は、何ものにも代えがたい貴重な経験となります。私自身も数えきれないほどの失敗をしてきました。しかし、それらの経験があったからこそ、困難な場面でも適切な判断を下し、前に進むことができました。皆さんも、失敗を恐れず、むしろそれを成長の糧として学び続けてください。
 次に、「社会の変革を見据えること」です。
 人口減少の影響はすでに各地で顕在化しており、北海道でも函館や小樽などの都市が「消滅可能性都市」として指摘されています。労働力不足も深刻化する中、それを補うものの一つが デジタルトランスフォーメーション(DX) です。DXとは、単に情報や業務をデジタル化するだけでなく、それを活用し、自動化し、より効率的な社会を作り出す取り組みです。今後、DXがどのように社会を変革し、支えていくのか、私たちは大いに注目する必要があります。
 さて、最後に私がお伝えしたいのは、「コミュニケーション」の大切さです。
 皆さんも、コミュニケーションが重要だということは、十分ご存知でしょう。しかし、仕事でも、友人関係でも、「なかなかうまくいかない」と感じたことはありませんか?
 ここで、皆さんに「ダイアローグ(Dialogue)」という言葉をご紹介したいと思います。英語では「対話」と訳されますが、単なる会話ではありません。
 私たちは、意見が対立したとき、つい「議論」によって相手を説得しようとしがちです。議論は、双方が自分の正しさを主張し、相手を論理的に説き伏せる要素が強い。しかし、「ダイアローグ」は違います。相手の考えを尊重し、互いに理解を深めながら、一致点を見つけ出すプロセスなのです。この対話の力を活用することで、議論だけでは解決できない問題にも、新たな解決策が生まれると言われています。
 現代は効率が求められる時代です。しかし、組織やチームの運営は、効率化だけではうまくいきません。だからこそ、「ダイアローグ」、つまり対話の力が今、ますます必要とされているのではないでしょうか。
 皆さんも、ぜひ身近な場面で「ダイアローグ」を意識し、実践してみてください。そこから、新しい気づきや可能性が広がるはずです。
 さて、皆さんのお手元にある『出会い』をご覧ください。そこには、四名の方からの心に響く言葉が記されています。その中でも、最後のページにある 「狭き門」 に注目していただきたいと思います。
 この「狭き門」という言葉は、聖書に由来しています。「命に通じる門は狭く細い。その狭い門から入りなさい」と説かれています。この言葉を体現するかのように、酪農学園大学の入り口の門、ちょうど牛舎のそばにあるあの門こそが、「狭き門」なのです。皆さんが日々通っていたその門は、単なる通り道ではなく、学びの場へと続く象徴的な門だったのです。
 この門をくぐり、酪農学園大学で「命に通じる」教育を学んだ皆さん。振り返れば、かけがえのない時間だったことでしょう。時には 「1日が千日のように長く」 感じられた日もあれば、「千年が1日のように短く」 過ぎ去ったと感じることもあったかもしれません。
 そして今日、皆さんはその門を後にし、新たな人生の扉を開こうとしています。これからは、それぞれの道で多くの挑戦に果敢に挑み、成功と失敗を重ねながら、豊かな人生を歩んでいってください。
 最後に、ご出席いただきました保護者の皆様、ご家族の皆様、そして関係者の皆様へ。
本日は、誠におめでとうございます。皆様の温かい支えがあったからこそ、今日のこの日を迎えることができました。本学の教育活動に深いご理解を賜り、長きにわたりお子様を支えてこられたことに、教職員一同、心より感謝申し上げます。
 卒業生の皆さん、どうか 誇りを胸に、未来へ羽ばたいてください。
 ここで学んだこと、培った経験、そして出会った仲間たち――それらは、皆さんの人生を支える大切な財産となるでしょう。また、これまで36,854人の同窓生が全国で活躍しています。皆さんも本学を誇りに思って頑張ってください。
 そして、いつでも この酪農学園大学に帰ってきてください。
 この学び舎は、皆さんの母校です。どんな時も、教職員一同、心から皆さんを歓迎いたします。

 最後に、皆さんの人生が、それぞれにとって 充実したものとなることを心より願い、学長の式辞といたします。
 本日は、誠におめでとうございます。

 

2025年3月19日
酪農学園大学  
学長 岩野 英知