黒千石大豆は少量の水で吸水させることで、その黒さや食感などの特徴が活かされることが判明 ― 黒豆ごはんを美味しく食べるための新しい提案! ―(循環農学類 植松大壱さん、小八重善裕准教授、宮崎早花講師)

Date:2021.03.06

NEWS NO.38(2020年度)

黒千石大豆は少量の水で吸水させることで、その黒さや食感などの特徴が活かされることが判明 ― 黒豆ごはんを美味しく食べるための新しい提案! ― (循環農学類 植松大壱さん、小八重善裕准教授、宮崎早花講師)

 酪農学園大学 循環農学類 作物栄養学研究室 4 年の植松大壱さんは、小八重善裕准教授と宮崎早花講師の指導のもと、黒千石大豆の種子を少量の水で限定吸水させることで、アントシアニンの溶出を抑制できるか、また、黒さ・噛み応え等の黒千石大豆の特徴を活かした豆ごはんが調理できるかを検討しました。  その結果、少量の水で「限定吸水」させることが、黒千石大豆の黒さや食感などの特徴が、従来の「浸漬吸水」よりも保持されることが判明しました。これまで、浸漬水量と調理後の大豆の黒さなどの品質との関係については、ほとんど検討されていませんでした。当該研究は、一般社団法人日本調理学会が発行する「日本調理科学会誌 Vol.54」に掲載されました。

(左から)小八重善裕准教授、植松大壱さん

 植松さんの卒業論文のテーマは「ダンゴムシの糞による土壌ATP量の変化」で、ダンゴムシの糞が土壌と作物に与える影響を調べるために、土壌中のアデノシン三リン酸(ATP)量を微小スケールで測定する方法を確立し、土壌中の生物活性の変化とダンゴムシの糞が作物バイオマスへどのような影響を与えるかとということを調査する内容です。研究室として設定された卒業論文のテーマのほかに、様々な研究テーマに取り組み、論文までまとめることは、植松さんの興味関心が多岐に渡ることに加えて、それを受け止めて指導ができる教員の懐の深さがなければ実現することはできないでしょう。  

植松大壱さん(循環農学類4年)のコメント

農食環境学群 循環農学類4年 作物栄養学研究室
植松大壱さん
 (東京都調布北高校出身)   1.今回の研究のきっかけや着想は?  小八重先生に言われたからです(笑)。小八重先生との話の中で、大学でもっと農産物を加工したり食べたり販売したりする機会があればいいと言っていたのですが、それなら研究室で植物生理学的に大豆を調理して食べる(官能評価)?という話の流れだったと思います。着想としては、論文にも書きましたが、大豆を水で戻すときに水没させるのでは、生理的にストレスですし、種子の成分変化も調理上好ましくない状態にあるのではないか?という疑問が発端です。 2.苦労した点  限定吸水させることで、黒千石大豆の色の抜けを抑えられるのは確実で、味もはるかに良くなることは何度かあったのですが、味については、再現性が取れないことが何度かあって、その原因究明がものすごく大変でした。仮説を立てて実験計画通りにやっても、なかなかうまくいかないんです。計画を何度も練り直して、10回以上仮説を検証したと思います。今になって考えると、実験の手順、正確さ、分単位での測定など、結局は自分の計画の甘さが原因だったと思います。  また、論文執筆は非常に大変でした。新しいことを見つける、形にするということは、これまで何が分かっているのかを全部知るということなので、過去の知見をひたすら調べていったのですが、これが本当に大変でした。すべての論文を読まないといけませんでした。束にしたら枕にして寝れるくらいの論文を読みました。 3.今後、自分自身に活かせる点は?  精度の高い仕事をするには、正確性はもちろんですが、計画性や忍耐力がとても重要だと学びました。妥協できない、もういいんじゃないかなぁということが全く通用しないと知りました。そして、計画通りにいかない時の打開力、諦めないこと、そのためには頭の柔軟性が重要であると分かりました。一つのことに囚われず、新しい着眼点で、解決策を導き出すこと、これも重要でした。論文は記録としてずっと残るものなので、自信をもって出せないものは出せない、というプレッシャーもありました。これらすべての経験は、今後の自分自身に活かせると思います。

研究室での実験風景

黒千石大豆とダンゴムシ。実験では間違わないように細心の注意を払っている

黒千石大豆とダンゴムシ。観察力を養い、決して間違えることはない


指導教員の小八重善裕准教授のコメント

 植松君は小さいころから色々な昆虫を飼育していたと聞いていたので、実験の条件検討は得意だし好きな方だと思って、今回の研究を提案してみました。期待通り粘り強く、興味を持って取り組んでくれたので、途中大変なところもありましたが、短期間で成果にすることができました。  私自身、専門としているのは作物の栄養や生理ですので、調理に興味はありましたが、学術的にまとめられるのか、すこし不安はありました。しかし、彼を含めて多くの学生の要望に、せっかく作ったものを食べたり加工したりすることろまで勉強したいということがありましたので、思い切って食物利用学研究室の宮崎早花先生にも相談して、ご協力を得ながら、ちょっとユニークな連携で論文にしたという次第です。  今後は、食と健康学類の先生や、環境共生学類の先生たちとも連携しながら、本学にしかできない面白い研究を展開したいと考えています。  
関連論文の概要
【参考】関連記事 ◆2021.02.09 【プレスリリース】黒千石大豆は少量の水で吸水させることで、その黒さや食感などの特徴が活かされることが判明(循環農学類 植松大壱さん、小八重善裕准教授、宮崎早花講師)  https://www.rakuno.ac.jp/archives/13446.html