本学獣医学類OBの中村暢宏さんが日本獣医学会学術集会優秀発表賞を受賞

Date:2022.12.28

NEWS NO.58(2022年度)
本学獣医学類OBの中村暢宏さんが日本獣医学会学術集会優秀発表賞を受賞

本学獣医学類OBの中村暢宏さん(獣医生化学ユニット)が、日本獣医学会学術集会において優秀発表賞を受賞されました。
中村さんは、今年3月に本学大学院を卒業され、その後は日本学術振興会特別研究員として本学に勤務されておりました。今回の受賞は研究員として本学勤務中に発表されたものとなります。

<受賞演題>
「MRSAのファージ耐性獲得に伴う病原性低下のトレードオフ」
◯中村暢宏、西田啓汰、竹中匡貴、村田亮、岩崎智仁、氣駕恒太朗、Azam Haeruman、崔 龍洙、藤木純平、岩野英知

<研究概要>
抗菌薬の効かない“薬剤耐性菌”による感染症が拡大しており、2019年には世界で実に約127万人が薬剤耐性菌の感染によって命を落としたと推定されています。このような状況において、細菌にのみ感染するウイルスであるバクテリオファージを利用した「ファージセラピー」が抗菌薬に代わる切り札として近年注目され始めています。本学では獣医生化学ユニット、獣医細菌学ユニット、及び伴侶動物外科学ユニットなどが協力し、2021年から日本唯一のファージセラピー臨床試験を附属動物医療センターにて実施しております。
しかし、細菌は抗菌薬に対する耐性を獲得するのと同様に、ファージに対しても耐性を獲得することが知られています。ただし、細菌はファージ耐性を獲得するために自身の性質を変える必要があり、その結果不利な性質を取らざるを得なくなる場合があることもわかってきました。そこで、今回の研究では特にヒト医療領域で問題となっている薬剤耐性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus; MRSA)がファージ耐性を獲得した際の細菌の性質について解析しました。実際に、ファージ耐性を獲得したMRSAは遺伝子変異により病原性が低下し、さらに本来効くはずのないβ-ラクタム系抗菌薬の感受性が大幅に回復していたことがわかりました。

中村 暢宏さんの受賞コメント

今回はこのような名誉ある賞をいただくことができ、大変嬉しく思っております。また、日頃よりご指導いただいている岩野教授、藤木講師、さらには本研究に携わっていただいた後輩の学生や他研究機関の先生に深く感謝しております。今後はさらにこの現象を詳細に理解することでファージ耐性を逆手に取った次世代型の細菌感染症治療法を確立できるよう努力していきたいと思っております。

 

岩野 英知 教授からのコメント

中村君は獣医生化学の卒業生で、小動物臨床を経験した後、博士課程にて獣医生化学ユニットに戻り、4年課程のところを3年での短縮卒業となり、本年度の春に卒業しました。今回の受賞は、ファージの細菌感染における深いメカニズムを解明した研究結果であり、ファージセラピーの実用化において世界中で注目される研究となるものです。そのほか、日本初の伴侶動物臨床へのファージセラピーの臨床試験でも成功も納めており、現在は、国立感染症研究所で最先端の研究に邁進しています。将来がとても楽しみであり、同窓生も誇れる研究者となることが期待されます!受賞、おめでとう!!


【参考】教員・研究室・関連記事
◆岩野 英知 教授(獣医生化学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9417.html
◆2022.07.01 [プレスリリース]獣医学類 獣医生化学ユニットがクラウドファンディングに挑戦!
https://www.rakuno.ac.jp/archives/22245.html