根研究学会で亀岡笑 講師が学術奨励賞を受賞

Date:2023.11.15

NEWS No.51(2023年度)
根研究学会で亀岡笑 講師が学術奨励賞を受賞

 このたび、植物の根およびこれを取り巻く環境に関する学術の発展に寄与したとして、2023年11月4日(土)に兵庫県立大学環境人間学部(兵庫県姫路市)で開催された第58回根研究集会において、農食環境学群 循環農学類 栽培学研究室の亀岡笑講師が、根研究学会学術奨励賞を受賞しました。

<研究業績名>

「土壌水分条件に対してイネ根系が発揮する発育的可塑性及び水通導性応答の機能解析」

<研究概要>

国内外で水資源不足は深刻化しており、水資源の投入量を低減しつつ、環境変動下で収量安定性を担保できる栽培方法の確立、品種の育成は急務の課題となっている。 これまでに、土壌乾燥条件下において効率的に水吸収するために根系があるべき姿を明らかにすることを目指し、国際イネ研究所など国内外の圃場を拠点に、イネ根系の土壌水分吸収に関する研究を以下のように進めてきた。

1.軽度の土壌乾燥ストレスに対して発揮されるイネ根の発育的可塑性に関する研究
根系発育の可塑性に異なる特徴を示すイネ品種群を供試し、模擬水田にて土壌水分を段階指摘に制御し、軽度の土壌水分ストレスに対して各異形根が発揮する根系発育の可塑性を評価した。 その結果、「節根と側根とでは土壌乾燥による生育の抑制程度が明確に異なること」(Kameoka et al. Plant Prod. Sci. 19: 411-419)、「乾燥耐性品種は水分量のより多い土壌層で根の発育的可塑性を発揮すること」を明らかにした (Kameoka et al. Plant Prod. Sci. 18: 267-276)。

2.軽度の土壌乾燥ストレスに対するイネ根の水通導性変化に関する解析
国際稲研究所のHenry博士と共に取り組んだイネ根の水通導性に関する一連の研究では、イネの形態変化とともに、根水通導性評価の重要性を定量的に示した(Kameoka et al. Plant Root 17: 45-58)。 さらに水通導性に関する研究を進めるにあたり、プレッシャーチャンバー法における圧力漏れリスク低減に有効な方法を具体化し、分げつを有するイネ根の水通導性について、従来法に比べて測定の成功率を顕著に向上させた (Kameoka et al. Plant Root 17: 59-70)。

3.間断灌水に対して発揮されるイネ根の発育的可塑性に関する研究
一定の土壌水分変動に対してイネ根系発育の可塑性が顕著に示されることを踏まえ、2016年度からは節水栽培と収量安定性の両立を図ることを目指し、間断灌水における再灌水の目安となる土壌水ポテンシャルを根の可塑性発揮程度から評価し、その有効性の検証を進めてきた。 これらの研究を進める中で、野菜水切り器を用いた脱水法を応用し、イネ根の新鮮重の測定方法を提案した (亀岡ら 根の研究 30: 33-40)。

 

亀岡笑 講師のコメント

 

根の研究に取り組むほどに、国内外の作物学的課題と根の研究との繋がりの強さや面白さを実感しています。本学(北海道)に赴任してからは、作物種に限らず、農業生産現場からの根の研究への注目度や期待度が高いことも実感するようになり、やりがいと面白さもまた一段と大きくなりました。今回の受賞を励みに、今後も根の研究に対して真摯に向き合っていきたいです。

 

研究業績3には本学での研究成果(2017~19年)が含まれます。また、今回の根研究集会では現4年生2名がポスター発表し、堆肥活用型の水稲農家である善生農園(岩見沢市栗沢町)との共同研究成果(2020~23年)を報告しました。

イネ根の新鮮重測定の様子(研究概要3)(吉野ひなきさん、船越太貴さん※2019年度卒)

第58回根研究集会での学生ポスター発表(亀田悠介さん、白倉誠也さん※共に4年生)

 

今後の栽培学研究室の活躍に期待です。


栽培学研究室 https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9337.html