卒業生の早川史織さんがJICAとの協定締結後、初のマレーシア派遣へ 学長らを表敬訪問
Date:2024.11.25
NEWS NO.42(2024年度)
卒業生の早川史織さんがJICAとの協定締結後、初のマレーシア派遣へ学長らを表敬訪問
円山動物園勤務やGISの知識生かし環境保全支援の任務に
本学と独立行政法人国際協力機構(JICA)との連携協定締結後、初のJICA青年海外協力隊・マレーシア派遣隊員となる本学卒業生の早川史織さん(大学院 酪農学研究科修士課程 環境GIS 2023年卒)が11月20日、髙島英也理事長と岩野英知学長を表敬訪問しました。早川さんの派遣先は、マレーシアサバ州森林開発公社(SAFODA)で、主な任務は現地住民への環境教育など。任期は今年11月から2年間となります。また、在学中に学んだGIS地理情報システム等の専門知識を生かし、森林資源の把握や野生動物保護管理への技術支援なども行っていく予定です。
この日、本学名誉教授で北海道青年海外協力隊を育てる会の金子正美会長(株インターリージョン代表取締役CEO)引率のもと、今月セネガルに立つJICA隊員で本学卒業生の篠森圭介さん(循環農学類 農村計画論 2023年卒)と来年のJICA隊員として研修中の竹村風力さん(環境共生学類 環境GIS 2023年卒)が同席し、それぞれ抱負を述べました。
髙島理事長と岩野学長は一人ひとり丁寧にこれまでの経緯を聞き取り、激励しました。
本学ではこれまでに学生・教員・卒業生など300名以上がJICA海外協力隊員として、世界各国での国際協力に貢献しています。その実績のもと、4月と10月にJICAとの覚書や協定書を交わし、さらに連携を強め協力隊員を送り出していく予定です。
大学院生のときに札幌市円山動物園での欠員募集に応募し、二足の草鞋を履きながら卒論と動物園での仕事に励みました。卒業後は夢だったJICA青年海外協力隊で海外へ。
「動物園で働きたい」、「海外で野生動物を間近にみたい」
夢をかなえた、早川さんが今に至った経緯を尋ねました。
■酪農学園大学を選んだ理由を教えてください。
親戚のおじさんがアフリカによく行っていて、野生動物の写真をたくさん撮って日本に帰ってきて私たち子どもに見せてくれていました。そこから野生動物というものに興味を持ち始め、高校時代は野生動物の獣医になりたいと思うようになりました。酪農学園大学にも獣医学部があるのですが、とても狭き門で、一浪をしたけど受かりませんでした。それなら野生動物のことを学びたいと思って、野生動物なら北海道だ!という単純な考えから酪農学園大学を選びました。
■環境保全に興味を持ったきっかけは?
環境保全に興味を持ったきっかけは、はっきりとは覚えていませんが、中学生の時に読んだ「ハチドリのひとしずく いま、私にできること」という本だったと思います。ちょうど中学生の時ぐらいから、地球温暖化という言葉をよく耳にするようになりました。その時にちょうどテレビでこの本が紹介されていて、親に頼んで買ってもらいました。あまり本を読むタイプではなかったのですが、この本は読みやすく、中学生の頃の私にも地球温暖化をどうにかしなければと思わせてくれました。そこから自然環境保全や地球温暖化から起こる絶滅危惧種について興味を持ち始めました。
■環境GIS研究室に所属され、大学院ではどんな研究をしていましたか
GIS(geographic information system )という技術は、地図上に色々な情報を重ねることで、どの場所が生物多様性保全のために重要な場所かなどを提示することができたり、過去の情報と現在の情報を地図に入れてあげることで、どう変わったのかが把握できたりします。この技術を使って、酪農学園大学がある江別市において、生物多様性の観点から重要な場所の選定を行いました。
研究に取り組み、うれしかったことは2つあります。1つは、GISが扱えるようになってきたことです。このGISはデジタルの地図の上でさまざまな事を可視化してくれます。数字で言われても分かりづらい事でもGISを使えば誰にでもわかりやすく見やすくしてくれます。例えば、ハザードマップ等でこのGISの技術が使われています。学部の2年時でもGISの授業があったのですが、元々パソコンが得意な方ではなかったので、パソコンが得意な友だちの真似をして、どうせ使わないからいいやと思っていました。しかし、修士となるとやっぱり使わざるを得ません。研究を通してこのGISを段々と使えるようになってきたのはとてもうれしかったです。やっと使えるようになってきた程度ですが、この研究を通して便利さと分かりやすさ、分かってもらいやすさを実感したので、今後も一つの技術としてGISを使った研究を続けていきたいと思っています。
2つ目は、人とのつながりです。研究をするにあたってたくさんの先生から助言をいただきました。学部の時はあまり関わることができなかった先生や、他の大学の先生、外国の大学の先生ともお話する機会があり、自分の視野が一気に広がりました。この研究を通して、さまざまな方とつながることができたことで、自分の人生が大きく変わったと思います。
■大学院で学びながら円山動物園で働くことを選んだ理由を教えてください。
決め手は、札幌市の動物園条例だと思います。生物多様性保全に関わる仕事をしたいと漠然と考えていましたが、自分がやりたいと思った仕事は専門性や実務経験が重要視されていました。挑戦はしましたが、新卒の私にはやっぱり高い壁でした。そんなことで落ち込んでいる時に耳に入ってきたのが、札幌市の動物園条例でした。ここでは札幌市の動物園や水族館がやることや役割が定められていました。元々、世界動物園水族館協会では動物園の役割として種の保全、調査研究、教育、レクリエーションの4つが掲げられているのですが、日本ではレクリエーションの部分がフォーカスされていて他の3つが弱いです。私自身、動物園は楽しむ場所というイメージで他にも3つの役割があるなんて知りませんでした。動物園条例が定められたことで、動物園の役割が明確になり、自分自身の動物園のイメージも180度変わりました。そこで働くことで、自分の次の目標に向けてプラスになると考え、円山動物園で働いてみたいと選びました。
■円山動物園ではどんな仕事をしていましたか?
小中学生を中心に動物の生態や地球環境問題について分かりやすく解説する活動です。
動物園条例によって、動物園の4つの役割が明確化されました。私は主にその中の教育の部分を担当していました。
具体的には、札幌市内の小学校、中学校、高校に出向き、ホッキョクグマやアジアゾウに起きていることを通して、地球温暖化や地球環境の事を考えてもらったり、円山動物園に来てくれた全国の学校の生徒たちや一般のお客さんに向けて、通常は立ち入り禁止のエリアである動物園の冷蔵庫を案内したり、日本のゾウの施設で最大級の円山動物園のゾウ舎を解説しながら一緒に回ったりしました。この活動を通して、動物園にもっと興味を持ってもらったり、地球温暖化や地球環境の事を考えてもらったりするきっかけになればいいと思っていました。
その他にも、環境教育イベントを企画、実施することも業務内容の一つです。親子でのイベントは好評だったので定期的に行うよう企画していました。
■動物園で働いてみて感じたことは
円山動物園で働いていて感じることは、動物が持つ力がとても大きいということです。仕事で、解説しながら動物園のゾウ舎を生徒たちと回ることがあります。基本的には、最初にゾウをみて、最後に野生のゾウに起きている問題、実は私たちもかかわっている問題をお話しする流れです。最初はゾウをいっしょにみて、ゾウかわいい、大きいという声が上がるのですか、最後に人間とゾウとのあつれきの問題、実は遠く離れた日本に住む私たちにもかかわりがある問題を話すと、自分たちには何ができるんだろうと考えてくれます。動物を目の前にすることで親しみを持ち、この動物についてもっと知りたい!という感情にさせてくれるのだと思います。
■最後にJICA協力隊員の道を選んだ理由を教えてください
学部生のときに、青年海外協力隊OB・OGの方々の話を聞いて、皆さん楽しそうに海外での経験をお話しされていて、私も協力隊に行ってみたいと思うようになりました。 大学院を卒業したあとも円山動物園で環境教育の仕事をしトータルで2年間勤めましたが、やっぱり協力隊に行ってみたいという思いがありました。そんな時に金子先生からJICA隊員募集のお話を伺い、試験にトライしてみようと思いました。 円山動物園での仕事も楽しかったのですが、実際に海外で野生動物を見て、現地での状況を知って仕事をしてみたいという思いも強かったと思います。 8月20日から始まった研修が10月31日に終わって、今は楽しみが8割、不安が2割という感じです。 酪農学園大学で学んできたことを生かして貢献できるように頑張りたいと思っています。
【関連記事】参考
◇2024.09.27 酪農学園大学と独立行政法人国際協力機構(JICA)は 連携協定を締結いたします
https://www.rakuno.ac.jp/archives/34352.html
◇2024.04.17 酪農学園大学-JICA 海外協力隊に関する連携覚書を締結
https://www.rakuno.ac.jp/archives/32588.html
◇2023.04.18 NHKラジオ「A.B.C-Z 今夜はJ'S倶楽部」が本学で公開収録
https://www.rakuno.ac.jp/archives/27307.html
◇2024.05.16 マレーシア海外自然環境実習報告書(長澤さん)
https://exc.rakuno.ac.jp/archives/14038.html
◆JICA海外協力隊向け実践ガイド「クロスロード」に掲載された本学教員・卒業生
◇2024.05.10 環境共生学類の森さやか准教授が、JICA海外協力隊向け実践ガイド「クロスロード」に、青年海外協力隊時代(マダガスカル)と現在の活動について紹介されました。
https://www.rakuno.ac.jp/archives/32752.html
◆【今月の先輩の就職先】先輩隊員のシューカツ記~帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。
◇2024年6月号 酪農学園大学卒 橋本道太郎さん(2019年度1次隊環境教育 ペルー派遣)
JICAサイト:https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/publication/pamphlet/crossroad/202406/pickup_06_28/
クロスロード2024年6月号(P28-29)
◇2024年7月号 酪農学園大学卒 松橋杏子さん(2016年度4次隊環境教育 ケニア派遣)
JICAサイト:https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/publication/pamphlet/crossroad/202407/pickup_07_28/
クロスロード2024年7月号(P28-29)
◇2024年8月号 酪農学園大学卒 茂北斗さん(2016年度2次隊理科教育 ガーナ派遣)
JICAサイト:https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/publication/pamphlet/crossroad/202408/pickup_08_28/
クロスロード2024年8月号(P28-29)
【関連リンク】
■独立行政法人国際協力機構(JICA):www.jica.go.jp
■一般社団法人協力隊を育てる会:https://www.sojocv.or.jp/index.html
北海道青年海外協力隊を育てる会:https://www.facebook.com/HokkaiJOCV/