人工知能技術(AI)を活用した食肉検査の実証研究がスタート(獣医学類 村松康和教授)
Date:2025.04.22
NEWS No.7(2025年度)
人工知能技術(AI)を活用した食肉検査の実証研究がスタート
本学獣医学類の村松康和教授(人獣共通感染症学ユニット)が研究チームを組織し、人工知能技術(AI)を活用した実証研究がスタートします。AIを活用した画像診断技術により獣医師の食品検査支援を行う研究であり、獣医師の食肉検査の負担軽減や検査の平準化が期待されます。
研究チームの代表者である村松康和教授にお話しを伺いました。
――どのような研究なのか教えてください。
食肉は自治体や民間の食肉処理施設などで獣医師による安全検査を経て出荷されます。この検査を担う獣医師の多くは公務員獣医師として勤務していますが、どの自治体も獣医師の確保に苦労しています。今回の研究により、コンピューター視認システム(Computer Vision System : CVS)と人工知能(Artificial Intelligence : AI)技術による画像診断技術(CVS/AI技術)の導入に必要な技術基盤の構築を目指します。食肉検査は獣医師による目視や触診が中心ですが、AI画像診断による異常検知が可能となれば、食肉検査の生体検査、解体後検査等の補助システムとして、獣医師の負担軽減に役立つと考えています。
――研究チームの体制を教えてください。
当該研究は、「人工知能技術を用いた画像診断による食肉検査補助モデルの構築に関する研究」として、厚生労働省「食品の安全確保推進研究事業」として実施します。研究チームは本学獣医学類の人獣共通感染症学ユニット(村松康和教授、内田玲麻准教授)が中心となり、麻布大学、宮崎大学、日本大学、北海道大学の研究者により研究組織を構築し、研究内容によって役割分担をして3か年に渡たって研究を進めていきます。
――どのように研究は進んでいくのでしょうか。
研究項目などを年度ごとにまとめたフロー図を示します。地方自治体の食肉衛生検査所と連携しながら、国内外の動向やニーズを調査して課題を精査します。食肉検査へのCVS/AI技術導入は、食鳥検査がほとんどです。国内外の実態調査を進めつつ、食品検査現場へCVS/AI技術導入に必要な技術基盤を構築し、最終年度となる2027(令和9)年度には、複数の食肉衛生検査所で実証試験を行う予定です。
――期待と抱負をお聞かせください。
今回の研究が基盤となって近い将来、画像診断による食肉検査システムの導入が実現すれば、明らかに食肉衛生検査そのもののあり様が変わります。
画像診断システムにより現状の検査で求められる獣医師の負担が軽減される結果、新たに創出される時間は病原微生物や化学物質などの高度な衛生検査に活用されることになるでしょう。また、検査データを活用した生産現場の衛生管理支援など、より高い水準で・より統括的な食肉衛生を担保する取り組みに充当することで、その中心的役割を担う公務員獣医師による獣医事の社会価値向上につながることも期待しています。
こうした、公務員獣医師による獣医事の変革とそれに伴う社会的価値向上が、獣医師を目指す未来の学生の皆さんにとって、より魅力あるものとなることを願って止みません。
【参考】
村松康和教授(人獣共通感染症学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9432.html