世界中で発生しているブロイラーの異常胸肉研究プロジェクトの紹介 ― 循環農学類・食と健康学類・獣医学類の協働による安定的な鶏肉の生産に向けた取り組み ―

Date:2021.02.15

NEWS NO.37(2020年度)

世界中で発生しているブロイラーの異常胸肉研究プロジェクトの紹介 ― 循環農学類・食と健康学類・獣医学類の協働による安定的な鶏肉の生産に向けた取り組み ―

 2015年頃から、世界中の養鶏場で胸肉に異常を認めるブロイラーの報告が増えており、日本の養鶏場でも発現が報告されています。本学の循環農学類、食と健康学類、獣医学類の3つの学類教員は現場の獣医師とプロジェクトチームを作り、本学のフィールド教育研究センター(FEDREC)肉畜生産ステーションの鶏舎を活用した胸肉異常の再現実験と、大学の研究施設を利用した科学的解析ならびに解決方法の開発に取り組んでいます。このたび、研究成果の一つとして、異常胸肉にリポフスチンが蓄積していることを発見しました。  本学 食と健康学類 応用生化学研究室の長谷川靖洋助教のブロイラー(肉用鶏)の異常硬化胸に関する研究報告「Accumulation of lipofuscin in broiler chicken with wooden breast」が、この度、国際学術雑誌であるAnimal Science Journal に掲載されました(10.1111/asj.13517)。この論文では、異常硬化胸肉中に加齢マーカーとして有名なリポフスチンが蓄積していること、さらにその蓄積量が胸肉の異常な硬さと高い相関を示すことを世界で初めて報告しました。  ブロイラーの異常硬化胸肉とは、全世界的に発現している肉用鶏の胸肉異常のことです。発現した胸肉は廃棄、または品質低下による価格の下落といった経済損失が生じるため、全世界的に問題になっています。今回の基礎研究により、ブロイラーの異常硬化胸肉の原因が明らかになりつつあり、原因が明確になれば飼料や飼育方法等で対処することが可能となります。

長谷川靖洋助教のコメント

 ニワトリは数ある畜産動物のなかでも世界的に群を抜いて飼養数が多い家畜です。さまざまな気候に順応して、世界中で飼育されています。また、ウシやブタに比べて食のタブーが少なく、様々な国の貴重なタンパク質資源です。このために産業的に積極的な育種改良が進められ胸肉歩留まりの高い個体を生み出してきました。ブロイラーの異常硬化胸肉は、このような背景のもとで進められた育種改良の結果です。我々は2015年から現場の獣医師、獣医学者ならびに畜産・食肉の研究者で研究チームを組織して、日本国内でのブロイラー異常硬化胸肉に関する研究を積極的に展開してきました。研究報告は本論文で7報目となります。

異常硬化胸肉の外観:表面に出血があり(矢じり)、全体的に膨らんでいる

   本学は、畜産現場と獣医・畜産・食肉といった研究者が、垣根なく畜産の課題(問題)に取り組むことが可能な研究機関です。2018-2020年の3年間は本学の学内共同研究課題に採択され、研究費を獲得して研究を展開することができました。  共同研究チームは、本学の山田未知准教授(循環農学類,中小家畜飼養学)、岩﨑智仁教授(食と健康学類,応用生化学)、長谷川靖洋助教(食と健康学類,応用生化学)、細谷実里奈助教(獣医学類,獣医解剖学)、渡邉敬文准教授(獣医学類,獣医解剖学)の学群・学類を横断する5名が参加しています。ブロイラー生産現場の問題を本学で研究し、その成果を、学術論文を介して日本国内だけではなく世界中の生産現場に還元しています。世界中の鶏肉の安定供給への貢献を目指す本プロジェクトはこれまでにも複数の国際論文を以下のとおりを発表しています。

共同研究チームのメンバー 左から山田未知准教授、岩﨑智仁教授、長谷川靖洋助教、細谷実里奈助教、渡邉敬文准教授

 
関連論文の概要
【参考】関連記事 ◆2021.02.15 【プレスリリース】世界中で発生しているブロイラーの異常胸肉研究プロジェクトの紹介  https://www.rakuno.ac.jp/archives/13508.html ◆2020.10.27 学内共同研究成果報告会を開催しました  https://www.rakuno.ac.jp/archives/11898.html