獣医学類6年の中村圭佑さんが 第164回日本獣医学会学術集会/微生物分科会奨励賞を受賞

Date:2021.11.08

NEWS NO.41(2021年度)

獣医学類6年の中村圭佑さんが 第164回日本獣医学会学術集会/微生物分科会奨励賞を受賞

9月7日(火)から9日(木)にかけて本学を会場にWeb開催された「第164回日本獣医学会学術集会/微生物分科会」において、獣医学類獣医生化学ユニット6年の中村圭佑さんが奨励賞を受賞しました。

左から藤木純平講師、中村圭佑さん、岩野英知教授

<受賞演題> 「O抗原の糖鎖長に基づくP. aeruginosaのPB1-likeファージ耐性機構の解明」 〇中村圭佑, 藤木純平, 中村暢宏, 古澤貴章, 権平智, 臼井優, 樋口豪紀, 田村豊, 岩野英知. <研究概要> 近年、薬剤耐性菌の蔓延が世界的な問題となっており、代替的な抗菌戦略として “ファージセラピー”が注目を集めています。一方で細菌はファージに対しても耐性化するため、効果的なファージセラピーの実現にはファージ耐性化の制御が必須と言えます。本研究では緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のファージ耐性化機構を解析し、O抗原の糖鎖長がファージの感染性を規定することを見出しました。また、ファージのlong tail fiber(受容体との接着に関与する分子)を構成するたった一つの1アミノ酸が、糖鎖長の厳密な識別に寄与する可能性を示しました。これらの成果により、ファージ耐性化をより効果的に制御できる戦略的なファージカクテルの設計が可能になることが期待されます。

中村圭佑さんのコメント

(北嶺高等学校出身) 今回このような栄誉ある賞を頂くことができ大変光栄に思います。“緑膿菌のファージ耐性化”をテーマにこれまで実験を積み重ねてきた結果が評価され、大きな自信に繋がりました。本研究を進めるにあたり親身にご指導くださった藤木先生や岩野先生、研究室の皆さんに心から感謝しております。 緑膿菌は日和見感染菌として知られ、獣医療においても犬の外耳炎や尿路感染などの原因菌として、その多剤耐性の獲得が問題視されています。細菌に特異的に感染するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を用いた“ファージセラピー”は、多剤耐性緑膿菌をはじめとした薬剤耐性菌への“切り札”としての大きな可能性を秘めています。一方で、効果的なファージセラピーの運用にはファージ耐性化の分子メカニズムの深い理解が重要です。 獣医生化学ユニットではファージの臨床応用のみならず、このような基礎的な研究も盛んに行われており、日々の先生方やゼミの仲間との活発な議論が研究の着想を得るきっかけの場となっています。来年度からは博士課程に進学する予定ですが、ファージによる緑膿菌感染症の制御基盤の構築を目指し、ファージセラピーが臨床現場で細菌感染症に対する治療法として確立される未来の実現に少しでも貢献できるよう、研究活動に邁進していきたいと思っています。
【参考】 教員・研究室一覧 ◆岩野 英知教授(獣医生化学ユニット) https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9417.html ◆藤木 純平講師(獣医生化学ユニット) https://www.rakuno.ac.jp/archives/teacher/9461.html