【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第4回共同研究成果発表会」を開催
Date:2025.04.15
NEWS No.5(2025年度)
【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第4回共同研究成果発表会」を開催
本学農食環境学群と附属とわの森三愛高等学校との高大一貫教育の連携強化を目的とした共同研究成果発表会が3月18日(火)に開催され、約100名(来場約80名、オンライン視聴参加約20名)が参加しました。今年度は4件の研究発表が行われました。
今年度も司会進行は小糸健太郎農食環境学群長です。
本来であれば、開会の挨拶は、この発表会を楽しみにしていた高大連携事業担当副学長である樋口豪紀副学長が行う予定でしたが、ご都合によりやむを得ず欠席となってしまったため、小糸学群長より挨拶を行いました。
「今年度は、事業採択までに時間を要してしまい、本発表会までの時間が十分確保できなかったことから、高校生の皆さんはとても苦労されたと思います。そのような中で一生懸命に取り組んでいただいたことを嬉しく思います。今日はその成果をおもいきって!楽しく!発表していただきたいと思います。」
研究概要と発表の様子は次のとおりです(発表順)。
【1】(RGU)循環農学類×(TOWA)アグリクリエイト科機農コース
●循環農学類 義平大樹教授(作物学研究室)、工藤怜(農学コース作物学研究室3年)
協力:循環農学類 宮崎早花講師(食物利用学研究室)、
梶田路津子(酪農学研究科修士課程作物学研究室研究生)
附属高校農場長 西川謙教諭
アグリクリエイト科機農コース1年 川島徠刀・菰田泰彰・重成渉・松本頼杏・水口鼓士郎
発表課題:インゲンマメ在来種「ビルマ豆」の食味評価ならびに鉄施用による収量および機能性成分向上の試み
研究目的:インゲンマメ在来種である「ビルマ豆」の特性を生かす栽培方法(試験1)および調理方法(試験2)を見つけ、消費量や生産量が少ないとしても「希少価値として遺伝資源が維持される可能性を検証する。
研究概要:試験1として、栽培試験を実施し、「ビルマ豆」にキレート鉄の葉面施用を実施し、子実収量の増収効果、機能性成分の富化を前提とした子実の鉄含有率の上昇、過剰障害からみた適正な鉄施用量を検討する。
試験2として、「ビルマ豆」の豆ごはんの嗜好性の特徴を確認するため、現在の普及品種である「大正金時」と「うずら豆」を材料に作製した豆ごはんと比較し、インゲンマメの種類が豆ごはんの食味に与える影響を検証する
研究結果:(試験1)30g/10aのEDTA鉄の葉面散布を3回以上に分けてやるとビルマ豆は20~30%増収するが、子実の鉄含有率はほとんど上昇しなかった。
(試験2)「ビルマ豆」の豆ごはんが高評価を得るための調理方法や材料については、なお検討が必要であること、米の種類は「ななつぼし」などの粘りが強くない品種の使用が望ましいと推察することができた。
今回、実際に研究に携わる時間が短かった中で、よくまとめられた発表でした。
会場で発表を聞いた大学教員からは、ビルマ豆に合うお米の調査に関して、少し硬めの「きらら397」までを対象にするなど、さらに調査を進めてみてはどうかという助言もありました。
【2】(RGU)食と健康学類×(TOWA)普通科フードクリエイトコース
●食と健康学類 山口太一教授、柴田啓介講師(食・健康スポーツ科学研究室)
附属高校普通科フードクリエイトコース 澤辺真人教諭
普通科フードクリエイトコース2年 今野幸一郎・笹森日和・巽麻央・土屋菜桜・藤原歌音
発表課題:健康増進およびスポーツ競技力向上を目的とした栄養およびトレーニングについて
~栄養および運動が身体組成に及ぼす影響~
研究目的:健康増進やスポーツ競技力の向上には、身体組成を良好に保つ必要がある。本研究では、1)附属とわの森三愛高等学校の生徒の3食および1日のたんぱく質摂取量が筋肉率に及ぼす影響を明らかにすること、2)同校生徒を対象に運動部の所属の有無およびカルシウム摂取量が骨量に及ぼす影響を明らかにすることとした。
研究概要:附属とわの森三愛高等学校のフードクリエイトコースとトップアスリート健康コースの生徒を対象に ①「たんぱく質摂取量が筋肉率に及ぼす影響調査」と ②「運動部所属の有無およびカルシウム摂取量が骨量に及ぼす影響調査」を実施した。①では、Googleフォームに典型的な1日の朝食、昼食、夕食および間食時に摂取している食品とその摂取量に関する質問を設定して対象者に選択回答させ、各食事におけるたんぱく質量を算出した。また、体組成測定装置を使用して体重および体脂肪率を測定し、先行研究 (Yasuda et al., 2019) に倣って筋肉率を算出した。②では、骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会,2015)のカルシウム自己チェック表の質問をGoogleフォームに転載して対象者に選択回答させ、ガイドラインの採点法をもとに得点を算出した。また、超音波踵骨測定装置A-1000 EXP Ⅱ[GEヘルスケアジャパン(株)]を用い、踵骨の超音波骨密度指数スティフネス値を測定した。

朝食におけるたんぱく質摂取が筋肉量に及ぼす影響や、運動が骨に与える効果を伝える生徒たち
研究結果:附属高校の生徒は、先行研究 (Yasuda et al., 2019) と同様に1食あたりのたんぱく質摂取必要量(体重1 kgあたり0.24 g)を3食とも満たした生徒が、3食のいずれかに不足のあった生徒と比較して筋肉率が有意に (p<0.05) 高値であった。殊に朝食のたんぱく質摂取量が多いことで1日のたんぱく質摂取量が多くなり、かつ筋肉率が高かった。また、骨量は運動部に所属している生徒が運動部に所属していない生徒と比較して有意に (p<0.01) 高いことが明らかとなった。
「今回の調査・研究結果を大切な仲間である附属高校生徒のみんなに伝え、身体組成をより良くするティップスとして活用してほしい」という言葉で発表を締めくくりました。勉学に加えて、スポーツも盛んな附属高校に合ったすばらしい発表となりました!
【3】(RGU)食と健康学類×(TOWA)アグリクリエイト科機農コース
●食と健康学類 大谷克城教授(臨床栄養学研究室)
附属高校アグリクリエイト科機農コース長 尾﨑仁教諭
アグリクリエイト科機農コース2年 柳生椎摩・竹村柊我・坂本晴・佐藤拓郎
発表課題:農作物内の抗酸化物質に関する研究
研究目的:食の機能性のひとつとして抗酸化力が注目されている。作物は栽培条件により機能性に様々な影響を与えることが知られている。今回、栽培に使用する「水」に着目し、水の性質により抗酸化力にどのように影響するか検討し、抗酸化力を高める栽培条件を明らかにする。
研究概要:検討方法としては、様々な水を使用して種子からの水耕栽培を行い、発芽後の新芽(スプラウト)を材料として、抗酸化力を測定し、評価した。水については多くの候補を挙げ、その中から5種類に絞った。不純物や電解質を含まない超純水を基準とし、水道水、硬水(硬度1468mg/L)、炭酸水(pH4~5)、液肥(ハイポネックス)を添加した超純水を用いた。播種する種子は、世界で最も食されているスプラウトのひとつであるレッドキャベツ、日本では以前から一般的なスプラウトであるアルファルファ、地元江別市名産、国内トップシェアであるブロッコリーの3品種を用いた。5種類の水と3種類の種子の組み合わせの15試験区で比較を行った。7~10日栽培した各種スプラウトは、収穫後、フリーズドライし粉末化した後、高速溶媒抽出装置にて成分を抽出し、総ポリフェノール濃度を指標として抗酸化力の評価を行った。

七大栄養素として注目される「抗酸化物質」について説明する生徒たち
研究結果:抗酸化力については、アルファルファは育てやすいが、緑黄色野菜の王様、ブロッコリーには適わないこと、一番色が濃いレッドキャベツの抗酸化力が最も高いことがわかった。また、水の種類では炭酸水を使用した場合に高い抗酸化力が得られたことから、二酸化炭素に秘密があるのではないかと考えた。
今回の共同研究を通して、生徒たちは「抗酸化物質について、入門編を理解できた」「減農薬野菜と無添加食品は、抗酸化作用が高いことを理解できた」「スプラウトを用いての抗酸化物質の抽出に成功した」と評価し、今後さらに検討を進め、地元江別市名産の「ブロッコリー」について、学習を深め、抗酸化力の高いスプラウト栽培と販売を成功させたいと、さらに意欲を高めました!
【4】(RGU)環境共生学類×(TOWA)普通科総合進学コース RGUクラス
●環境共生学類 吉村暢彦講師(実践GIS研究室)
附属高校普通科総合進学コース RGUクラス 吉川明花教諭
普通科総合進学コース RGUクラス2年
有坂美咲・松浦煌季、三浦向陽、紺野哲平、浦野雄太、萱場優壮
研究協力:酪農学園事務局施設課 竹下善史課長
発表課題: エネルギーを無駄にしないために我々ができること
~酪農学園におけるエネルギー使用に伴うCO2排出量の現状と改善策~
研究目的: 気候変動対策は急務であり、酪農学園もそれに取り組む必要がある。本研究では、酪農学園全体のエネルギー使用に伴うCO2排出量および現状の問題点を把握し、解決策を提案する。
研究概要:酪農学園事務局施設課から、酪農学園のエネルギー使用量やその傾向をヒアリングするとともに、同課より建物毎のエネルギー使用量を入手し、CO2排出係数を用いて、CO2排出量を推定した。この推計値を、ArcGIS Online(ESRI社)を用いて地図化し、作成した地図を基に、特に電気の消費量が多い建物(健民館・健音館・附属高校)について、サーモグラフィ等を用いて、暖房器具の使用状況および熱効率を調査した。なお、地図化は、建物と排出量の対応関係が明確なもののみとし、その使用量は適宜面積案分等で詳細化した。
研究結果:CO2排出量を地図として可視化し、全体像を把握するとともに、詳細を調査することで、酪農学園全体のエネルギー使用のムダの一部を発見することができた。気候変動対策は、一人一人が意識・行動を変える必要がある。今回示したムダを共有することで、学園のメンバーがそれぞれで行動を変えるきっかけになると考える。
生徒たちは実際に施設を回り、暖房効率が悪くなっている原因やカーテンの有効活用、建物内で熱がこもっている場所を特定し、その熱の分散方法を考えるなど、酪農学園が掲げる「実学」を体現しました!
酪農学園への提案
みんなで探そう!ムダ遣い
各グループからの発表終了後に、附属とわの森三愛高等学校 石川和哉校長より、本日の感想を含めたご挨拶をいただきました。
この共同研究については、高校の教育課程の枠内では、なかなか体験しえない学問そのものの奥行や広さ、また、深さを体験できることに大きな意義を感じている。同じ年代の生徒同士だけではなく、大学教職員や学生など、幅広い年代から様々な考えを聞き、時には議論できることも貴重な経験となっている。研究は、真理や正解そのものを追求することが一つの側面ではあるが、そのプロセスの中で新しい問いかけがある。本日も会場に集まった皆様から様々な問いかけがあった。そのことに対してどのように答えるか、研究を進めるプロセスの中で、時間の関係で取り組めなかったことがあっても、それが新しい問いかけになって、高校生の皆さんの知的好奇心や探求心をかりたてる一つのきっかけになると思っている。
高校生の皆さんは、本日の発表をもって終わりではなく、一つのゴールはしたが、また新しいスタートと考え、今回の共同研究で学んだことを違った形の中で活かしてほしい。知的好奇心・知的探求心の火を消さないように、常に灯し続け、どんどん成長してほしい。新しい自らの可能性を広げていくことを期待しています。
本日は、このような機会を設けていただきましたことに感謝申し上げます。
最後に、酪農学園大学 岩野英知学長より、閉会のご挨拶をいただき、2024年度 第4回共同研究成果発表会は閉会となりました。
今日は皆さんの発表をしっかり聞かせていただきました。ありがとうございました。どの発表もよくまとめられたものでした。その中で、先行研究を調査した上で、その内容を整理して発表につなげたグループがありましたが、しっかりとした裏付けをもつことは、今後も重要な視点になってきます。また、情報を地図上に落とし込んで可視化したグループもありました。この手法は、現在、様々な場面で取り組まれておりますが、新しい切り口で、そこから見えてくるものを大事にして考えを深めていくことも、とても重要な視点になります。この共同研究における経験は、通常の勉学とは違い、社会に出た際に必ず求められる「新しいものを切り開く力」につながっていきます。
高校生の皆さんは、これから進学に向けた準備を本格化させていくことと思いますが、今日のような経験を通して、人間力を養って社会に出ていくことが大切になります。そういった意味では、ぜひ大学に進学してほしいと思っています。目標をもって挑戦することが大切です。
本日は大変お疲れ様でした。ありがとうございました。
以下に集合写真を掲載します。発表を終えた生徒たちの素敵な表情をご覧ください!
以上
【参考】
◇2024.03.23【RGU×TOWA】酪農学園大学農食環境学群×附属とわの森三愛高等学校「第3回共同研究成果発表会」を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/32265.html
◇2023.03.16農食環境学群×附属とわの森三愛高校 「第2回高大共同研究成果発表会」を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/26601.html
◇2022.03.23本学農食環境学群と附属とわの森三愛高校との共同研究成果発表会を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/20825.html