岩﨑 智仁

食と健康学類

岩﨑 智仁 いわさき ともひと

教授

研究室番号
C8-104
取得学位 博士(農学)
研究室・ユニット名 応用生化学
研究キーワード 食肉 骨格筋生理 鶏異常硬化胸肉

鶏異常硬化胸肉の発現機序の解明とその低減化に向けた取り組み

研究の概要・特徴

 ブロイラーとは、食肉生産のために飼育された若鳥(孵化後50-55日齢)の呼称であり、産肉性向上のために長期にわたり育種改良を重ねられてきた品種が使用されている。育種改良の結果、ブロイラーの産肉性は著しく向上しており、同日齢(48日齢)の採卵鶏(以下、レイヤー)の生体重(1.79 kg)に対して、ブロイラーの生体重(3.37 kg)は同じ飼育期間で2倍近くの体重となる。その主たる要因は胸肉歩留まりの向上にある。このような育種改良を続け、ブロイラーの胸肉歩留まりは現在も向上している(図1)。その一方で、過度な産肉性の向上は、生体のホメオスタシスにおいて明らかなストレスを生み、と殺時に筋肉の異常が観察されることが、近年多くなってきた。その1つにゴムのように著しく高い弾性を持つようになった異常硬化胸肉(wooden breast,WB)の発現がある。WBは2014年に初めて報告され、現在世界中の国々でWBの研究報告が続いている。WBの外観ならびに組織学的特徴については、炎症性ゲル状滲出液の筋表面への被覆、点状の出血、ならびにゴム状の硬化(図2)、さらに筋線維の異常変性と筋組織の基質化が報告されている(図3)。また、その硬化が浅胸筋の頭部側で著しいことも合わせて報告されている。このような特徴をもった胸肉が消費者に好まれるわけもなく、見た目の外観異常により忌避される。したがって、わが国では食鳥処理工場で廃棄されて、テーブルミートとして店舗に陳列されない。その廃棄量についての明確なデータを持ち合わせていないが、日本国内の一部の養鶏場では、2016年の段階で飼育数全体のおおよそ3-10%が廃棄されていると見積もられている。
 WBの特徴の詳細については、多くのことがよく理解されていない。我々の研究グループは、WBの大量廃棄はその肉質への食肉科学的な知見が少なく、外観の異常だけで判断されていることが、原因の一つであると考えている。我々は、WBの異常な肉質(固さ)について、顕微解析による組織学的ならびに食肉生化学的なアプローチを行い、その死後変化について経時的に調査することをすでに終えている。現在はWBの発現機構解明に加え、その発現の低減化の取り組みを進めている。

産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

今後20年程度で全世界的に食肉の供給量が不足すると予想されています。その対策の一つとして、現在生産されている食肉資源を最大限活用する責任が我々にはあります。そのための技術開発に興味があります。
また、電子顕微鏡を含む各種顕微鏡観察技術を有していますので、様々な食品素材、生体組織ならびに生体高分子の観察についてもご相談ください。