森  志郎

循環農学類

森  志郎 もり しろう

教授

研究室番号
D1-105
取得学位 博士(学術)
研究室・ユニット名 園芸学
研究キーワード 育種 環境制御

花きの新品種育成および安定生産技術の確立

研究の概要・特徴

 花きでは常に新規性の高い新品種の作出が期待されています。交雑育種は強力な育種技術ですが、生殖隔離が問題となります。植物組織培養を基礎とするバイオテクノロジーはこれらの問題を克服する有力な手段です。
 遠縁種間における交雑親和性を評価し、必要に応じて花柱切断受粉や胚救出培養(胚珠培養等)を講じます。胚救出培養においては適切な培養条件を検討する必要があります。雑種胚の正常な発達には育種親の倍数性が関わっていることがあり、倍数性操作により雑種胚を獲得できる場合があります。
 私たちはユリとスターチスの新品種の育成とそれらの安定生産技術の確立に取り組んでいます。
 これまでに、未利用の遺伝資源であった絶滅危惧種ミチノクヒメユリを育種親にして、既存品種などとの交雑から後代を獲得し、12品種を英国王立園芸協会に登録しました。従来のユリ品種は1つの球根から1本の花茎を生じますが、新品種は分球性を有し、1つの球根(母球)内に複数の子球をもつため、1球から複数の花茎が伸長します(図1)。一方、ユリの分球性に影響を及ぼす環境要因についても研究を進め、効率的、かつ、安定的な球根生産技術の確立に取り組んでいます。
 主要切り花であるスターチス類の中で、最も重要な種はスターチス・シヌアータです。本種と交雑できる種はわずかであり、遺伝的変異の拡大が望まれています。そこで、種間雑種を獲得するための前段階として、育種親の倍数性操作に取り組み、これまでにスターチス類の2種において四倍体を作出しました(図2)。今後、これらを用いた種間交雑に取り組みます。また、環境制御による効率的な花き生産についても検討を進めています(図3)。

 

図1 ユリの育種 図1 ユリの育種
図2 スターチスの染色体倍加 図2 スターチスの染色体倍加
図3 スターチスの環境制御 図3 スターチスの環境制御
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 気候変動や資材の高騰、人手不足など園芸生産を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。私たちは花き産地・産業における課題を共有し、その解決を目指します。
 遠縁種間における雑種胚の獲得やそれらの増殖に関わる技術は、ユリやスターチス以外の園芸作物にも応用可能です。また、作物の安定生産には、対象作物の生理・生態的特性の把握と、それに基づく環境制御が基本となります。この考え方は幅広い品目で共通すると考えています。
 園芸産業の振興に資する技術開発、情報提供および人材育成に尽力します。お声掛けください。