金井 彩香

食と健康学類

金井 彩香 かない さいか

准教授

研究室番号
中央館 914

教員・研究室

取得学位 博士(文学)
研究室・ユニット名 英文学
研究テーマ 19世紀から20世紀の英米小説を読む
学びのキーワード 文学文化歴史英語
教育・研究への取り組み 英米作家による文学作品をさまざまなテーマから読み解いていきます。それにより、文学作品のもつ多面性と奥深さを見いだす力を身に着けます。作品についてのみずからの解釈をまとめ、表現するとともに、論理的に文章を組み立てられるようになることを目指します。
受験生へのメッセージ 外国語による文学作品を読むことは、ことなる世界を知ることでもあります。そこに描かれる作家自身、文化、社会、歴史は、わたしたちに無限のあらたな世界を見せてくれます。たくさんの文学作品を楽しく読んで、深い思考力やゆたかな想像力を身につけましょう。

研究シーズ

研究キーワード イギリス文学 女性 20世紀
ヘンリー・ジェイムズの『檻の中』にみる女性たちの軌跡
研究の概要・特徴

 イギリス社会における抑圧された女性たちのありようは、文学作品にもたどることができる。同時に、それは、女性を開放しようという試みを伴うものであった。ヘンリー・ジェイムズ(Henry James)の小説『檻の中』(In the Cage, 1898)は、自己実現を目論む女性の意識ともがきを鮮明に描き、その後に続く、意思を持ち行動する女性たちに先行する女性像を提示する。
 『檻の中』の主人公は、その内面に現実と夢の2つの世界を持ち、自らの不遇に声を持つ点において、あきらかにヴィクトリア朝の父権性社会のイデオロギーの内に生きるシャーロット・ブロンテ(Charlotte Brontë)やサッカレー(William Makepeace Thackeray)、ディケンズ(Charles Dickens)などの小説において描かれる女性たちとは一線を画す。しかし、一方で、『檻の中』の主人公もまた「自己」を得て自らの夢を実現することはできない。
 ジェイムズの描く女性像は「檻の中」で意思を持つ時代の女性たちを反映し、それは同時に、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)のような後世の作家が描く、より自立した女性像の足がかりとなった。『檻の中』において、ヘンリー・ジェイムズはヴィクトリア朝社会において自身がみる女性の一側面を映しだすとともに、後世へつづく優れた創作によってあきらかになる女性たちの物語の流れをしめしたのだ。

(参考: 金井彩香. 「『檻の中』の抜け出せない女―ジェイムズとウルフの性格創造の系譜―.」『北海道アメリカ文学』, 2021.)

産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 昨今たかまりをみせる性的マイノリティの理解をめぐる議論は、これまで歴史上に繰り広げられてきた多くの女性たちの名もなき戦いに重なる。文学作品に反映される女性たちの生きざまを読みとくことはまた、現代の我々の生き方を見直すための視点をももたらすものである。