秋庭 正人

獣医学類

秋庭 正人 あきば まさと

教授

研究室番号
A4-401
取得学位 獣医学博士
研究室・ユニット名 獣医細菌学
研究キーワード 乳房炎 細菌学 対策資材

牛乳房炎に関する細菌学的研究と対策資材の開発

研究の概要・特徴

 畜産の生産性を高めるためには家畜の損耗要因となる家畜疾病の発生を防止する必要がある。牛の乳房炎は主に細菌などの微生物が乳房内に侵入、増殖して乳腺組織に炎症を引き起こすもので、乳質と泌乳量の低下を招く。国内の乳牛において乳房炎は傷病事故の約30%、死廃事故の約7%を占め、牛乳の廃棄、治療、淘汰等による損失は年間500億円以上といわれており、酪農産業に甚大な経済被害をもたらしている。
 主要な病原体である細菌の中で分離頻度が高いのは黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、マイコプラズマ、大腸菌群等である。我が国でも乳房炎研究の歴史は古く、診断、治療、予防に関する多くの研究が精力的に行われてきたが、細菌学的観点から体系的に行われた研究は少ない。特に臨床現場でコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Coagulase-negative Staphylococci、CNS)や無乳性レンサ球菌以外のレンサ球菌(Other Streptococci、OS)と表現される菌群の病原性については菌種ごとに検討されておらず、実態は十分明らかにされていない。また、予防を目的とした対策資材の開発には検討の余地が多く残されている。さらに、抗菌薬による乳房炎治療については、薬剤耐性菌の蔓延を防止する観点から慎重に行う必要があり、抗菌薬に代わる予防・治療法の開発が強く求められている。
【研究課題】
・質量分析計による乳汁由来細菌の迅速同定技術の開発
・乳房内細菌叢の解析
・主要な乳房炎起因菌の分離・収集とゲノム解析に基づく特性解明
・主要な乳房炎起因菌の環境抵抗性(莢膜・バイオフィルム形成能、薬剤耐性等)の解析
・乳房炎の予防・治療技術の開発

本学酪農生産ステーションにおける搾乳風景 (樋口豪紀教授 原図) 本学酪農生産ステーションにおける搾乳風景 (樋口豪紀教授 原図)
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 北海道は国内の乳用牛の6割が飼育されている一大酪農生産地域である。当ユニットは、その立地を生かして数多くの乳汁検体を道内各地から収集している。これらの検体から細菌の分離、同定、保存を体系的に実施しており、今後の研究に活用する予定である。また、本学酪農生産ステーションは繋ぎ飼いおよびフリーストール形式で常時150頭以上の乳牛を飼育しており、研究に活用している。