
取得学位 | 博士(水産学) |
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研究室・ユニット名① | 発酵科学 |
研究室・ユニット名② | 食品学 |
研究キーワード | 乳清(ホエイ) 鶏肉 肉醤(ししびしお) |
環境負荷の軽減を目指した再利用発酵調味料の開発
研究の概要・特徴
一般に乳清 (ホエイ) とは、生乳及び生乳を原料とする製品を乳酸菌で発酵させるか、または、生乳に酵素を加えてできた凝乳の上澄みとして採取されるものである。ホエイはチーズを作る際に固形物と分離された副産物として大量に排出されるが、近年、栄養価が高いことや機能性も認められることから粉末状に加工したサプリメントや家畜の飼料などに利用されている。しかし、食品素材への利用は依然として少ない。
本研究では食品加工現場で副産物として発生するチーズホエイ (Fig.1) の有効活用を目的として醤油醸造技術を改良した新たな発酵法により再利用発酵調味料を製造した。まず、成鶏より調製した発酵調味料の物理化学的および呈味特性に及ぼすホエイ添加の影響を検討した。その結果発酵中に各種もろみの色調や風味に変化がみられた (Fig.2と3)。最終製品の品質をみると、鶏肉添加区とホエイのみ添加区では色調や化学成分などが大きく異なることが分かった。また、味覚分析データの主成分分析から呈味の可視化図が得られ、鶏肉添加区とホエイのみ添加区ではうま味などが著しく異なり、鶏肉とホエイの混合添加区では呈味も両者の中間となることが分かった。
以上の結果より、食品加工時に生じる副産物は発酵法の選択で多様な発酵調味料に変換され、環境負荷の軽減に対応した新たな製品の製造の可能性が示唆された。
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)
チーズホエイには乳糖が約4.5%含まれることから発酵調味料の色調に影響すると考えられる。また、Zygosaccharomyces rouxii は乳糖を資化しないが,Lc.lactis,Str.mutans,Lb.curvatusおよび一部の Lb. casei は乳糖を資化することから チーズホエイの回収直後の利用は乳糖の消費によるメイラード反応による色調の濃色化の抑制に役立つ可能性がある。色調が薄いエキスであれば幅広い食品への再利用が期待される。