猫本 健司

循環農学類

猫本 健司 ねこもと けんじ

准教授

研究室番号
C7-102

教員・研究室

取得学位 博士(農学)
研究室・ユニット名 実践農学
研究テーマ 畜産環境や循環利用ならびに営農や就農に関する現況や課題の整理
学びのキーワード 畜産環境家畜管理糞尿処理排水処理経営評価新規就農
教育・研究への取り組み 実践農学研究室では、専門分野にはこだわらずに、学生のニーズにあわせた様々なテーマで研究活動を行っております。近年では、汚水処理やふん尿の循環利用など畜産環境にかかる分野をはじめ、家畜管理や農場経営、新規就農にかかる課題などにも取り組んでいます。
受験生へのメッセージ 本学ではいろんな学び方を用意していますが、その中の一例として、座学と実習のサンドイッチ方式を採用した「実践酪農学コース」では、4ヵ月×2回の長期実習を大学から離れた現地の優れた農家で行い、必要な単位を取得できる、他大学にはない本学だけの実践的な学び方です。
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研究シーズ

研究キーワード 搾乳関連排水 酪農場 パーラー
酪農の搾乳施設から生じる排水(搾乳関連排水)の低コスト管理
研究の概要・特徴

【目的】酪農場における搾乳施設から生じる排水(搾乳関連排水)の環境への流出を防ぐために、浄化施設の設置が望まれるが、高価であるため普及が進んでいない。本研究では排水処理をどうしたら良いかを検討する上で、実際に酪農場を訪問して同排水の性状などを調査し、低コストに浄化・管理するための対策を検討する方法を提供するものである。
【方法】対象酪農場において、パイプライン循環洗浄排水の量や前すすぎ排水(搾乳終了後に最初に行う循環洗浄で生じる白濁した排水)の採取・分析を実施する。必要に応じて、最後の牛の搾乳が終了してから真空ポンプをオフにしてミルクレシーバーへパイプラインからの生乳回収を終了するまでの時間(傾斜回収時間)や牛舎内パイプラインの傾斜角度の測定、排水路や沈殿槽などにおける水質分析(現況評価)、尿ためなどの容量計測なども実施する。
【結果】前すすぎ排水の窒素などを分析し、同酪農場の生乳成分と比較すると、洗浄開始前のミルクラインに残っていた生乳の量を算出することができる。一般的な事例では0.3%程度だが、例えば同排水に1.2%の生乳が混入していた場合には、同ラインに6L以上の生乳を残したまま循環洗浄をしていると判断できる。このケースでは搾乳関連排水の汚濁度合を著しく高めるだけでなく、年間40万円以上に相当する生乳を出荷せずに捨てていることになる。同排水への生乳混入が高いことが判明した場合、改善方法として①牛舎内のミルクラインの角度(推奨角度は0.5°以上)、②ミルクライン内の残乳回収の可能性、③汚濁度合が高い前すすぎ排水の尿ためへの投入、をそれぞれ検討する。例えば、傾斜回収時間を10分程度確保して残乳を積極的に回収したり、尿ための貯留容量が大丈夫であれば、前すすぎ排水自体を自動バルブなどを利用して尿ために投入すると、搾乳関連排水の汚濁度合は著しく改善、低コストに管理・浄化することが可能となる。

搾乳関連排水とは 搾乳関連排水とは
本研究の概要・特徴 本研究の概要・特徴
パイプラインの残乳の回収 パイプラインの残乳の回収
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 搾乳関連排水の最終処理は圃場還元が基本だが、適切に還元できない場合は浄化して放流する必要がある。近年では経営規模が大きいパーラー搾乳を中心に、生物膜などを利用した高度な活性汚泥法による浄化処理が普及し、高価ながらも運用上の手間がかからないなどユーザーの評価が比較的高い傾向がある。しかし、中小規模の経営において、数千万円かけて高度な処理施設を導入するのは現実的でないため、低コストな排水処理方法の検討が必要である。
同排水の汚濁度合を高める原因は、①前すすぎ排水(搾乳終了後に最初に行う循環洗浄で生じる白濁した排水)と、②廃棄乳ならびに③プラットフォーム(搾乳時に牛が立つ一段高い所)洗浄排水の3つである。これら①~③が排水に混じらない場合、同排水は沈殿槽などの簡易な処理を施すだけで放流することが可能となる。本研究の成果は、過去の研究結果を組み合わせて、低コストな排水処理方法を提案できたことである。