酪農学園大学ワイン2023完成報告会を開催

Date:2023.11.29

NEWS No.55(2023年度)
酪農学園大学ワイン2023完成報告会を開催

2023年11月24日(金)、ホテルエミシア札幌にて、今年の酪農学園大学オリジナルワイン完成報告会2023が開催されました。
試飲を行いながらの開催は2019年以来4年ぶりとなりました。

 

司会の津川裕一教育センター学生支援課長から「今年は卒業生も多く参加いただいております。ワインに関わる多くの関係者との交流の場となれば幸いです」とご案内があり、完成報告会が始まりました。

司会:津川裕一学生支援課長

 

開会挨拶(食と健康学類長 阿部 茂 教授)

 

開会挨拶:食と健康学類長 阿部 茂 教授

「今年で酪農学園大学ワインは8年目となりました。卒業生や北海道ワイン様をはじめ来賓の方々も来ているので、学生と皆様でワインを試飲しながら楽しい交流の場としていただきたい。」

 

来賓挨拶(北海道ワイン株式会社営農部次長 小林 千洋 様)

来賓挨拶:北海道ワイン株式会社営農部次長 小林千洋 様

「酪農学園大学構内に植栽してあるブドウの栽培方法を教えています。今週11月21日には構内ブドウの剪定作業を行いました(来年の収穫量が決まる大事な作業)これで今年の作業は終了です。学生は一生懸命頑張りました。今年は好天に恵まれ、生育も良く、枝の管理や草刈り・ラベル作成も大変頑張りました。今年の天候を思い出しながらワインを味わいましょう。8号酒の完成おめでとうございます。」

 

挨拶・乾杯(学校法人酪農学園 髙島英也理事長)

挨拶・乾杯:学校法人酪農学園 髙島英也理事長

「大学の敷地内に『ブドウがあるな』とは思っていましたが、これがワインに変わるとは思っていませんでした。
北海道ワインの小林様より本学学生へたくさんのご指導をいただきました。本当に生物を相手に行うモノづくりって大変です。ワインの質は9割がたブドウで決まると言われています。そのブドウを作るために土をどう作るか、葉の枚数をどうするかなど、色々と経験されたのだろうなと思います。最終的には発酵というプロセスを含めてサークルを通じて色々なことを学生が学んでいる。それが今年で8回目になるという、まさに『継続は力なり』だと思います。本日は皆さんとの楽しいひとときにしたいと思います。」

 

乾杯後は関係者の皆様や教職員、卒業生がワインサークル“ROWP”の学生たちと懇談しました。

 

 

懇談の合間に、ワインサークル“ROWP”の学生による活動報告、ラベルデザイン、ワインの試験醸造、ブドウ枝のスモークチップ利用など様々な発表が行われました。

 

2023ヴィンテージボトルのラベルデザインについて(食と健康学類2年 佐々木海麟さん)

食と健康学類3年 佐々木 海麟 さん

酪農学園大学らしさとして、「草、十字架、牛」を表現

「ラベル製作にあたり、3点意識したことがあります。①酪農学園らしさ②北海道らしさ③親しみを持ってもらう。です。酪農学園らしさは『草・十字架・牛』をいれておりますが、これは本学の校章に入っている要素です。そして2つ目の酪農学園らしさは真ん中の女性ですが、聖母マリア(赤の衣服を着て青いパンツを身に着けている)をチョイスしています。北海道らしさについては『アイヌ文様』を入れました。北海道といえば、クマとかカニとか色々あると思いますが、札幌の地下歩行空間(チカホ)を歩いた際、アイヌ文様の手芸品が飾っているのを見かけてそこから着想を得ました。使用したアイヌ文様はモレウとシクの2種類です。枠にはアクセントを入れるため、一部分を水が滴る様なデザインとすることで、ブドウの瑞々しさを表現しました。
最後の要素である親しみやすさについては、アルフォンスミュシャという西洋画家を意識しました。なぜミュシャ風にしたかというと、私は最初の頃ワインは高級感があるな、手を出しずらいなと思っていて、ミュシャの様な親しみを持って手に取ってもらえたら良いなと思っ選びました。
背景色について、初めはシンプルに白でしたが、味気がないということで、次に出たピンクはロゼの赤色を被るため、最後に青緑色。最終的には紺色と青緑色が候補になりましたが、紺色と赤色の組み合わせが良いだろうということで、紺色になりました。
そして、マリア様のラベルデザイン以外にも、酪農学園大学といえばということで、牛にブドウの分かりやすいデザインで、色も金・銀・銅のパターンも考えておりました。最終的には阿部先生のお気に入りということでマリア様のデザインになりました。
最後に、ラベルの楽しみ方のご提案です。このワインは贈り物として買って下さると聞き、枠に下部にアイヌ文様を入れていない箇所をつくってメッセージを入れることが出来るようにしました。
北海道らしさ、酪農学園大学らしさを盛り込んだラベルを形に出来たことは多くの皆様のご協力のおかげだと思っております。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。
ワインがお手元に届きましたら、是非ラベルもお楽しみください。」

 

ワインサークル“ROWP”の活動紹介(循環農学類3年 宮嶋 真太郎さん)※ROWP代表、農業経済学コースのエース

ROWP代表 循環農学類3年 宮嶋 真太郎 さん

「初めにワインサークルROWPの紹介をさせていただきます。
2019年に公式サークル化しましたが、元々3つのゼミからなる大学オリジナルワインプロジェクトの活動がで、その活動の延長としてブドウの栽培を始め、現在学外には2つの圃場があり、1つは中小家畜研究会横の圃場、もう一つが牛舎(酪農生産ステーション)横の圃場となっております。ワインは2016年から作り始め、今年で8年目になります。栽培しているブドウの品種はキャンベルアーリ、そしてロンドの2品種です。コロナ禍は思うようにサークル活動が出来ず、サークル皆で集まってワイワイ楽しく活動すると感染が広まる可能性がありますので、自由参加として行った結果、今までの先輩方の栽培方法であったり指導方法が途切れてしまったこともあり、今年は一からやろうということになりました。
今年は顧問の入れ替わりもあり、サークルの活動方針が大きく変わりました。栽培についての転換は無農薬栽培で、循環農学類の小八重善裕准教授のご協力の下、試験的に無農薬栽培にチャレンジしました。結果的には無農薬栽培の方は私たちの努力不足もあり良い結果につながりませんでしたが、こうしてワインとして完成することが出来ました。
今年は1年生が9名入っていただきまして、合計31名で活動しております。
私の今年の活動目標「当サークルの新たな基盤構築」のため、まずは活動マニュアルの作成を行いました。作業のやり方も色々変えまして、一人一人班長副班長と分けて、週あたり月・水・金と3日間で作業を行うことにしました。また、東豊沼の高橋農場さんで枝拾いや番線などのお手伝いを通じてご指導いただき、その技術を大学に持ち帰り栽培に役立てる形をとっておりました。
4月は北海道ワインの小林様に来学いただき、ブドウや杭などを細かく確認いただきました。昨年と一昨年は江別で大雪となり、圃場の老朽化した杭が折れてしまい、一部取り換える試みもおこないました。中小家畜研究会側の圃場では、ベト病が発生した状態で放置してしまった結果、葉がすべて落ちてしまう事態となりました。来年は皆さんの協力も得ながら改善していきたいと思います。
牛舎側の圃場でも、ネット掛けが不十分でスズメバチやカラスなどにより房が取られてしまったこともあり、今年の収穫量も6㎏と少なかった状況です。
今年の活動を振り返ると、サークルの様々な活動内容を変化させて試行錯誤しながら進めてきました。ブドウ栽培としてみると良い結果にはつながりませんでしたが、サークル活動として一番大切な友達を作って楽しく協力しあいながら同じ目標に取り組むっていうことが出来たので、私が今年掲げた活動目標は出来たと思っています。後輩たちには今年の経験を踏まえて、来年は私の作った活動マニュアルを見ながら改善してブドウ栽培に取り組んでいただきたいと思います。
私はこのサークル活動を通して非常に有意義な1年を過ごすことが出来ました。多くの方と関わりが出来ましてワインやブドウ栽培について学んだだけでなく、様々な経験を通して自己成長にもつながったと思っています。
皆様のご支援により今年も酪農学園大学ワインを完成させることが出来ました。ご協力いただきました皆様にお礼申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。」

 

ジーガレーベを用いた自然発酵ワインの試験醸造(食と健康学類1年 成田有寿 さん、循環農学類1年 尾崎杏奈 さん)

 

尾崎杏奈さん(左)と成田有寿さん(右)

「東豊沼高橋農場ROWPヴィンヤード(砂川市)様より、早生品種であるジーガレーベを提供いただき、通常発酵(スターター)と自然発酵の2種類のワイン醸造法で試験をおこないました。試験醸造作業としては、「仕込み(クリーニング、除梗)・発酵過程・ビン詰め」です。発酵状況はOenoFossを用いましたが測定結果が得られなかったため、酵素法でエタノールを、GC法で酢酸を測定しました。通常発酵(スターター発酵ワイン)は酢酸臭が強く、実際の酢酸濃度も高い結果となりました。原因としては、大学内での計画停電が影響していると考えています。
ワインサークルらしい試験醸造の経験が出来てよかったと思います。この経験を今後のサークル活動に活かしていきたいです。」

 

ブドウ枝を用いたスモークチップの開発と官能評価について(食と健康学類4年 小林 れもん さん)

食と健康学類4年 小林れもん さん

「昨今の北海道では、地球温暖化の気温上昇により、これまでと違う作物が育つ環境が整い始めています。例えば、鹿児島県で採れるサツマイモが栗山町で採れるようになったり、富山県の有名な栗が北海道でも採れるようになっており、温暖化による作物への影響が大きくなっております。
ブドウの栽培も同様で、ブドウ圃場の面積増加に伴い剪定した枝の量も急激に増加しております。廃棄の枝出るタイミングは3回/年(6~7月、8月、11月)。1本の木から1kgの枝を採取することが出来るため、1haの面積からは2.5tの枝を廃棄することになります。廃棄には人でも労力もかかるので、この2.5tの有効利用としてスモークチップ化を研究しています。」

 

小林れもんさんが比較に用いたチップは6種類(サクラ、クルミ、リンゴ、ブドウ)で、ブドウスモークの製法を説明するとともに、スモークチップ特性説明や香り分析結果などの報告がありました。また、完成報告会参加者へスモークチーズ官能試験に協力いただくための説明を行いスモークチーズの試食も行われました。

 

 

ワインの試飲とスモークチーズの試食(官能試験協力)で会場の皆様の懇談も大変盛り上がり、あっという間に閉会となりました。

 

閉会挨拶(農食環境学群長 小糸健太郎 教授)

農食環境学群長 小糸健太郎 教授

「ワイン製造にかかわった皆様、本当に素敵なワインをいただきました。北海道ワインの小林様、高橋農場様には本当にご尽力いただきありがとうございます。
私は農業経済を主に研究しており、皆さんにどのような学びの内容を提供できるだろうかと考えることがありますが、本日学生皆さんの発表を聞き、私が想像している以上に素晴らしく勉強されていると感じました。様々な検査・試験に取り組まれているのもそうですが、とりわけラベルデザインについて非常によく調べてご自分で工夫をしていることに驚きました。
こういった機会を作っているワインサークルや顧問の教職員が本当に良い教育を提供されていると思います。
我々酪農学園の教育は、生産から加工・消費と思っていましたが、それ以上のことを皆さんが勉強していることに感激いたしました。
酪農学園の強みは、生産から加工・流通・消費というだけではなく、地域との連携・企業との連携を通じて学生の皆さんが成長してくれること、それから企業の皆さん地域の皆さんと私たちで研究をしながら共に成長出来ることだと思います。
これからも共に成長し、来年もこの会で美味しいワインを飲めることを期待しております。」

 

閉会後にラベルデザインを担当した佐々木海麟さんとROWP代表の宮嶋真太郎さんがマスコミからの取材を受けました。

取材を受ける佐々木海麟さん

取材を受ける宮嶋真太郎さん

 

最後にROWPの皆さんで集合写真を撮影してワイン完成報告会2023は終了となりました。
来年のワインも楽しみにしております。

 


【参考】関連記事

◆2023.11.17 酪農学園大学ワイン2023の販売開始について
https://www.rakuno.ac.jp/archives/30133.html

◆2022.12.05 酪農学園大学ワイン2022完成報告会を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/25339.html
◆2021.12.07 酪農学園大学ワイン2021完成報告会を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/18745.html
◆2021.02.26 【全私学新聞】サークルで育てたブドウのワイン/原料に赤ビートやホエイ 大学内で進む独自の酒造り(食と健康学類 山口昭弘教授、阿部茂教授、ワインサークルROWP)
https://www.rakuno.ac.jp/archives/13666.html
◆2020.11.27 酪農学園大学ワイン2020完成報告会を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/12408.html
◆2019.12.02 酪農学園大学ワイン2019完成報告会を開催
https://www.rakuno.ac.jp/archives/7046.html
◆2017.10.04 北海道ワイン株式会社と包括連携協定を締結
http://exc-old.rakuno-ac.jp/article-8365.html
【参考】関連ページ
◇ワインサークル“ROWP”
https://www.rakuno.ac.jp/archives/club/1876.html