岩野 英知

獣医学類

岩野 英知 いわの ひでとも

教授

研究室番号
B2-402
取得学位 獣医学博士
研究室・ユニット名 獣医生化学
研究キーワード ファージセラピー 薬剤耐性菌 バクテリオファージ

獣医療、人医療における細菌感染症へのファージセラピーの応用

研究の概要・特徴

細菌感染症治療において20世紀最大の発見である抗生物質は、多くのヒトの命を救うと共に家畜などにおける成長促進、病気予防的な使用など我々の生活に欠かせないものとなっている。ペニシリンの発見者のフレミングが当初より懸念していた薬剤耐性菌の出現は、抗生物質の人工的な改変により対応してきた。しかしこの細菌との“いたちごっこ”の対応にも限界を迎え、今や多剤耐性菌は世界中に広がり、このまま新しい対策を行わないとガンの死亡者を超える年間1000万人の死者が生じることが見積もられている。このようにこれまでの抗生物質だけでは対応が困難な状況にある。バクテリオファージを使用したファージセラピーは、抗生物質の応用より早く、特に東欧諸国ではおよそ100年にわたり実際に人の細菌感染症治療に応用されてきが、世界基準の製剤として認可されたファージ製剤はない。
近年、多剤耐性Acinetobacter baumanniiによる危篤状態からファージセラピーにより復帰したパターソン症例(Antimicrob Agents Chemother. 2017 61(10):e00954-17)が報告され、世界中でファージ製剤の開発や実用化の動きが活発に行われている。
これまでの研究において我々は、臨床応用できる溶菌効果の高いファージ(宿主として黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌など)を分離取得し、各種感染モデルにて検証し、実際に大学付属動物医療センターでの日本初の臨床試験を始めている(ネコ膀胱炎、犬外耳炎)。また、科学研究費助成事業も基盤A、Bを取得し、基礎研究を推進するとともに特許取得(1)、出願(4)も行い、様々な企業との共同開発も進めている。ファージセラピーは治療薬としてだけではなく、農業、食品など幅広い分野での応用が可能であり、早期の社会実装が期待されている。

薬剤耐性菌により年間死者1000万人となる試算 薬剤耐性菌により年間死者1000万人となる試算
ファージの感染、溶菌機序 ファージの感染、溶菌機序
ファージ耐性化がもたらす正の効果 ファージ耐性化がもたらす正の効果
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

・薬剤耐性菌に対してもファージは効果が高いものがある。
・東欧諸国ではおよそ100年にわたり、抗菌剤として人の感染症に応用している。
・ファージをカクテル化することでファージに対する耐性化を防ぐことができる。
・ファージに耐性化することにより、細菌は、病原性を失ったり、抗菌剤が効くようになったりという正の効果も期待できる。
・人医療のみならず、獣医療、農業、水産業、食品業などあらゆる領域で応用できる。
・日本におけるファージセラピー研究会を立ち上げており、今後、ますます発展、応用が期待されている。